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TSしたら異能組織のボス(身長136cm)  作者: えとう えと
二章

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「無異が討たれた?」


 電話口の言葉を復唱するように少女は言った。

 金の髪からのぞく瞳に驚愕の色が濃く表れる。

 少女、篠塚舞からしてみれば、いきなりのことである。それも仕方がないと言えた。


『ああ、笹嶺がそれを見たと報告してる』

「は?笹嶺?」


 その名前に、篠塚は再度声を洩らす。

 先日、余計な真似をしてリオに危害を与えようとした人物の名前だ。

 反応しない方が無理と言うものだろう。


『そうだ。奴の独断での行動はしかるべき処罰が課されたが、証言自体は有用だ。どうやら、奴は御野間リオを関する過程で、無異の姿を発見したのちに撃たれたのを見たらしい』

「討たれたって誰に……」

『異能独立特査』

「つ!?」


 その単語に息をのんだ。

 篠塚であっても知っている。

 治安維持組織の最高戦力とも揶揄されるほどの実力を持つ者に与えられる役職だ。

 そして、それ故に単独行動が許され、正体は秘匿されている。


『少なくとも上は認めていないがな。実際どうかなど俺たちには分からない』


 同じ組織内ですら情報を洩らしたくないのか。

 それだけの存在であるのだろう。

 何をしているのか分からない。

 どこにいるのかわからない。

 誰の仕業かわからない。

 そう言った見えない脅威で、害意を縛るのだろう。


 篠塚では、御野間リオの無事を喜ぶ以外に何かを出来る余地は存在しなかった。







 

「イグナイト。すでに消滅したと思ってたんだがなぁ」


 大録はその名前に心当たりがあるのかそう呟いた。

 彼がいるのは大録會の事務所であり、ことに際して動く様子はなかった。


「活動していたころは異能組織にも満たない小規模グループだったようですね」


 大録の言葉にホウボはそう返す。

 大録とは違い彼は今回集められた資料から情報を読み取っての発言であることは、彼が手元のタブレットで確認してることから分かった。

 そして、ホウボは呟くと同時に、何故そんな小規模組織を大録が記憶に止めているのだろうかと疑問を浮かべる。

 ただ、ホウボが何かを聞く前に彼が口を動かした。


「以前は、ウチにも話が流れてくるような集団だった」

「話し、ですか?」

「ああ。と言っても、噂程度だけどな。よく聞いたのは異能を持たない二人組の話。異能なしで異能者を倒すんだと」


 大録は思い返すように呟いた。


「別に、こっちに被害があったわけでもねえし、シマの外だったからなぁ。特に気にも留めてなかったんだが、ある時、ポツリと話を聞かなくなった」


 イグナイトと言う名前は只の不良のグループ程度にしかとらえていなかった大録としては特に気にした事でもなかった。


「ただ、今思い返してみると、それからしばらくしてザンマは桐坂のもとに入り、そして、奴が無異との戦闘で見せたと言う十字の斬撃を出す異能もその時所有者を殺して獲得したんだろうな。丁度、行方不明になったのがそのころだ」


 時系列を照らし合わせれば、つじつまが合う。

 

「まさか、ザンマがそこの構成員であるとは知らなかったがな」


 自身の組織に入るわけではないために、そこまでの詳細な情報は元々持っていなかった。

 大録會に入れるなら調査くらいしたが、傘下と言えど別組織の話だ。


「まあ、なんにしても、あとはルカ殿に任せるしかないか」


 大録はそう言う。


「シロサヤから態々釘を刺されたからな」

「先ほどの連絡ですか」


 それは要約すれば「手を出すな」と言うものだった。

 どうにもルカは一人でことを成すらしい。

 彼女一人で対応可能であるというのには反論の余地はないが、しかし、態々シロサヤに言伝してこちらに連絡をよこしたのだから何か考えがあるのだろうか。

 

「とは言え、こっちも噛んでるからいくらルカ殿が単独で出るって言っても、志渡澤だけは何とか入れさせてもらったがな」


 ザンマを考えがあったとは言え、泳がせていたのはこちらだ。

 それなのに、全くの手出しをせずにと言うことはできない。

 故に、志渡澤だけはついて行かせてもらった。





 ◆


 決戦の地は明白だった。

 ルカが姿を現すのは昨日、ザンマと鉢合わせた路地。

 その場から逃げおうせたザンマを見逃したのだ。

 昨日の続きをするならそこだろう。

 その証拠に、ルカの足取りは路地へと向かっていた。


「だが、志渡澤君。君は呼んでないよ」


 つい昨日まで協力関係を組んでいた相手に対して掛けるには冷たい声色だった。

 現在、ルカは単独で動いている。

 だが、隠れ潜んでいる者もいた。


 異能倶楽部の人員が潜んでいるのは知っている。

 だが、それは、今回の決戦に際しての事ではない。

 普段から彼ら彼女らは日常に溶け込んでいる。

 それは異能倶楽部の特性としての形であるが故のものだ。

 それに戦闘を主とした人間ではない。


 しかし、志渡澤と言う男は違った。

 彼は、戦力としてこの場にいた。


「ザンマ、優しく行こうぜ。彼はまだ奪われる側なんだから」

「キガ」


 後ろからの声にザンマは返す。


「俺が行こうか?」

「良いのか」

「ああ。こっちはザンマを含めて九人。今回の作戦を考えれば、半数でもおつりがくるだろ。逆に、志渡澤君とやるなら俺しかないだろ」


 気賀澤はそう言った。

 そんな言葉にザンマは頷く。


「頼むわ」

「ああ、任せとけ」


 気賀澤はそう言って背を向ける。

 そしてその場に残るのは他の八人。

 ザンマを除けば、七人だ。


「相変わらず、イチャつきやがって。ケッ」

「まあまあ。二年ぶりだし」

「私的には眼福」


 そして残された面々も気の置けない仲なのか、好き勝手にザンマに声をかけた。

 ただ、その中に一人ポツンと隅で座るものがいた。

 少女とも少年ともにつかない人物にザンマを声をかける。


「中牧君。君が作戦の中核だ。頼むよ」

「ええ」


 中牧と呼ばれた人物は小さく言って薄く笑った。

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