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TSしたら異能組織のボス(身長136cm)  作者: えとう えと
二章

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送信取り消し


 御野間リオが治安維持組織に目をつけられた理由はひとえに4月30日に現れた「無異」に遭遇したのにも関わらず奇妙な行動をとっていることに端を発している。

 あの日、付近の異能探知器に反応があった。

 単に異能を使った程度で反応するような代物ではないが、それ相応の異能が発せられたのだろう。履歴がついた。

 そして、その時に治安維持組織に通報があった。

 その通報した人物が、御野間リオと考えられているが、彼女は通報したあとその場から逃走している。

 それが、無異をその当時敵対していた異能犯罪組織の構成員から逃がすためであるとすれば、協力者である可能性があった。

 そして、本人にその意思がなくても異能や脅迫などによって、従わせられている可能性も十分に考えらえた。

 故に、情報源としての価値もあると考えられていた。


 であればこそ神出鬼没の「無異」につながる可能性のある貴重な情報源をむやみやたらに刺激しない方が良い。

 そう言った考えがあったからこそ、彼女と交友関係のある篠塚舞に白羽の矢がたったのだった。


 しかし、それを笹嶺は無視し単独行動を開始していた。


「報酬の半分は前払いにしてやる」


 そんなことを言った笹嶺は目の前にいた五人の男たちに封筒を渡した。

 いわゆる「報酬」であり、その中身は現金だろうと予想が付いた。

 男たちがそれを手にして中を確認する。

 体格がよく体の大きい男たちが封筒を取れば封筒が小さく見えた。

 男たちは中身を確認した後頷いた。


「にしても、顔くらい見せてくれてもいいんじゃねぇか?」


 一人の男がそう言ったのは、笹嶺が顔を隠しているからだった。

 笹嶺からしてみれば、治安維持組織に所属しているのに顔を隠すのは当然であるが、男たちはそんなことを知る由もなかった。


「お前ら程度に高すぎる報酬を払ってるんだ。黙って俺の言う事を聞いとけ」


 なれなれしく話しかけた男に対して笹嶺は突き放すようにそう言った。

 笹嶺にすれば、男たちは単なるチンピラだ。

 異能組織にも所属していないような程度の低い者たちに気安く話しかけられるいわれはなかった。


「まあ、いいわ。取りあえず、言われた通りにやるからよ。報酬だけはちゃんとしてくれよ」


 舌打ちをしながらも、男たちにとっては破格な額だけあってそう言った。

 そして、笹嶺は「そろそろだ」と言って、男たちに指示をだした。







 ◆


 ユキナと同行していた白腕が位置情報通りの裏路地に到着した時には大柄な男たちが待ち構えていた。

 そんな様子を雑居ビルの上から覗き見ていれば、すでに到着していた別の白腕が報告を開始した。


「奴ら、恐らくこちらの時間を計算していましたね」


 そう言うのは、ずっとここで監視をしていた一人だった。

 足元にいる男たちが出て来たのは、ここにユキナたちが到着する少し前。

 御野間リオの移動速度を計算に入れての行動だろう。


 この行動から分かることは、彼女に対して今回呼び出した人物は異能倶楽部のボスであると言う認識を持っていないと言うこと。

 そして、その情報を知らないでいながら家の位置、そして移動手段が徒歩だけであると特定している人物であると言うことだろう。


「さて、どうするか」


 状況の把握は出来た。

 しかし、どう動くべきか。

 そんな考えをしたとき、またもスマホが震えた。

 画面を開けば通知が来ており、「気にしないで、消しちゃっていいよ」とメッセージが来ていた。


 これが意味するのは、こちらのことを気にせずに眼下の男たちを排除してもいいと言うことだろう。

 まさか、先ほどの送られてきた位置情報が誤送信で、それに対して「気にしないで、消しちゃっていいよ」なんてメッセージではないだろうから。

 もしそうであるのであれば、時間差が過ぎる。

 まるでメッセージを送り慣れていない男の子が試行錯誤した結果の産物のようではないか。

 だが、それは万一にもない。送って来た相手は異能倶楽部ボスのルカその人だから。


「じゃあ、やっちゃおうかな」


 久しぶりに派手に暴れられるなんて思いながら肩を回す。

 しかし、そんな彼女を制止するように一人の白腕が口を開いた。


「雪花さんの異能を使うと足が付く可能性があるので、我々で対処します。幸いにも、どの組織にも属していない素人の集団のようなので」


 そう言われれば、言い返すことも出来ないユキナはそれに頷いた。

 それを確認した白腕たちは自身の腕についた白の紐を触った。

 「白腕」の由来になった彼女らのシンボルである白い紐、それに触れれば黒一色に染まった。

 彼女らにとってその紐はいわば「顔」。

 それを隠すことで、白腕としての身分を隠して行動することの意だった。

 ユキナに異能組織の存在を匂わせないように言っておいて自分たちがすれば意味のない事だった。


「では、行きます」


 ユキナにそう言ったあと、代表した一人が各員に目線を配ると一瞬で下におりて、掃討を開始した。





 ◆


「クソが」


 路地の奥で様子を伺っていた笹嶺は一人、拳を打ち付けた。

 御野間リオをおびき出して吐かせる。

 そんな簡単な作戦であったのに失敗した。

 人より優れた自分が失敗する。それを断じて認められなかった。


 いや、彼からしてみれば自分の失敗ではない。

 “無能な奴ら”が自身の計画を失敗させたのだ。


 男たちを雇ったのは失敗だった。

 本当は自分がやれば早いことだった。

 しかし、笹嶺には身分がある異能特査と言う位があって、下手に動くことは出来なかった。

 だからこそ、人を使ったのだが、異能組織の人間は使えない。

 そうとなれば、組織に所属していないものを使うしかない。


「本来なら成功してたんだ」


 そう、本来なら成功していた。

 それは事実である。

 すべては、この事態に乱入した異能組織の存在である。


 実際、こういう出来事は少なくないのだ。

 犯罪者でありながら、治安維持の真似事をする中小組織は少なくない。

 変に目立てばそこらのチンピラが潰されることくらいあるのだ。


 それが運悪く……


「いや、待て」


 状況を整理していたとき、違和感を感じる。

 曲がりなりにも治安維持組織に所属する彼はある程度の資料の閲覧が可能だ。


 その情報では、ここをシマにしている中小組織に先ほどの男たちを掃討したレベルのものが所属するものはなかったはずだ。

 一般人、あるいは実力がそうないモノであれば気付かないだろう。

 だが、自身で実力派を歌う笹嶺はその違いを見逃さなかった。

 あの練度を保つのは、難しい。

 しかも、複数人であると考えるのであれば恐らくあの部隊に限定しても標準的な強さだろう。


 しかし、それが事実であったとして、何処の組織が……

 そこまで考えた時、笹嶺は一つの結論にたどり着く。


「異能倶楽部」


 この辺りは確かに中小組織が根をはっている。

 しかし、もっとマクロな視点で見れば、ここは異能倶楽部の領域だ。

 異能倶楽部の特徴故に既存の組織のようには量ることはできない。

 学生が主であると言われ、日常に溶け込むなんて言われる組織であるが、組織の実態がそれだけであるわけがなかった。


「だが、奴らが出張ってくる理由があるのか」


 彼らは過度な干渉はしない。

 いや、正確にはここまでわかりやすい動きを取ることは少ない。

 不利益な人物の排除などをすることはある。

 だが、人知れず、なんて言葉が似あうほどに日常に紛れてそれは行われる。

 ここまであからさまな行動はしないのだ。

 

「何か急遽対処しなければならない理由があった」


 いくつかの可能性。

 それらに対して彼は口を開く。


「少し、探ってみるか」

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