第九話
何とか踏ん張って落下を免れた俺は、屋根の上を移動してエリカに近づいたが……その短い間に、更に驚きの情報が目に飛び込んで来た。
「何で片腕相手に苦労……いや、苦戦しているんだ?」
エリカに振り当てた相手はかなり大柄で、体格だけで言えばガウェインよりも大きい相手ではあるものの、俺の見立てではエリカよりもかなり格下だと判断したから担当させたのだが……もしかすると、俺の見立てが的外れなものだったのかと焦ってしまったが、俺が見た時の男は片腕ではなかったし、かなりの血が出ているのであれはエリカにやられたのだろう。
だとすれば、エリカが断然有利は状況なはずなのにどうしてそうなったのか? もしかすると、実力以外で何かエリカに問題があったのではないか? と思い、即座に介入せずに、まずは様子を窺ってみることにした。
そして、エリカが戦っているすぐ近くの家の上から観察した結果、エリカが苦戦している理由が分かった。
「エリカの奴、人を殺したことが無いな」
エリカの苦戦は、人を殺すことにためらいを覚えていることによるものだと判断した俺は、このままでは万が一のことが現実になりそうだと判断し、エリカの代わりに盗賊を切り伏せようとして剣を構えた……が、もう少し待ってみることにした。
(今回の件はエリカが言い出したことが原因だしな)
そして何よりも、たった一人の盗賊の対処すら出来ないのなら、今代の赤はエリカの夢のままで終わるはずだ。
まあ、奪った命の数でレベル10になれるわけではないが、今の状態をどうにか克服しないことには、これから先エリカは伸び悩むことになるだろう。
そう考えて静観を決め込むことにしたのだが……エリカはそれでも決心がつかないようで、様子を見始めてからしばらく経つのに防戦一方のままだった。
いい加減じれったくなり、手を出しそうになりかけることが何度かあったが、まだ我慢できている……と自分に言い聞かせている時、
「ちょっとまずいかもしれないな」
エリカが止めを刺す前に、盗賊の方が失血多量で死にそうだった。
今はまだ盗賊は自分が優勢だからか、自分の死が近づいていることに気が付いていないのかもしれないが、明らかに動きが鈍っているし顔色も悪い。
今の状態だと、盗賊は次の瞬間に倒れて動かなくなってしまってもおかしくはない。もしそうなれば、エリカにとっては俺が介入するよりも悪い方向に進みかねない。
「一か八か、少し手を出すか……」
それがエリカにとっていい方に転ぶかどうかは分からないが、どの道このままだとよくないので、俺なりに手助けをしてみることにした。
ただ、時間が無いので一回きりのぶっつけ本番になるのが一番の難点だが、俺はタイミングを見計らい、盗賊が武器を振り上げたようとした瞬間を狙って、
「うっ!?」
盗賊とエリカに向かって、『テラー』を放った。
俺の魔法のせいで盗賊は武器を中途半端に振り上げた状態で動きを止め、エリカは、
「あっ……」
俺の魔法と盗賊の晒した大きな隙をみて、反射的に愛用のハルバードを振るった。
その一撃は盗賊の腕を切り飛ばし、切り飛ばした勢いのままに胴体に食い込み、刃は胸の真ん中を少し過ぎたところで止まった。
盗賊は即死のようだが、まだ生きているかのように肉体が痙攣していた。それを見たエリカは、
「う……ぐぼぇ……げぇ……」
地面に膝をついて胃の中のものを吐き出していた。
そんな様子をまじまじと見て喜ぶような変な性癖を俺は持っていないし、流石にエリカが可哀そうなので目を逸らし、落ち着くまでの間に盗賊が浸かっていた家の中を調べることにした。まあ、最初の調査である程度の目星を付けていたので、その場所と他に怪しいと感じたところを軽く調べただけなので十分もかからずにある程度の証拠を得ることが出来た。
「後で、俺が担当した家も調べないとな……っと、丁度いいのがあるな」
そろそろエリカも落ち着き始めているだろうと思い、盗賊の家で見つけた証拠となりそうなものと水瓶を持って外に出ると、エリカは立ち上がって家の壁にもたれかかっていた。
ただ、まだ完全に回復したわけではないようで、吐き気を我慢するので精一杯らしく、自分の顔や服の汚れまで気を回す余裕はないようだ。
「エリカ、綺麗な水があったから、これで顔と服を綺麗にしておけ。落ち着いてから向こうに来い」
エリカの近くに水瓶を置いて、返事は聞かずに自分の担当の家に向かった。もし来るのに時間がかかるようなら、ディンドランさんに様子を見に行ってもらえばいいだろう。
「それにしても、親玉だけあって結構ため込んでいるな……これだけあれば、王都でも家族でニ年か三年は楽に暮らせそうだな」
親玉の家の中を漁ると、床板の下から金貨と銀貨が詰まった小箱がいくつか出て来た。自衛の為に隠していたということも考えられるが、あいつの職業を考えればないに等しい可能性だろう。
「確か、この辺りも気にしていたな……よっと」
金貨が見つかった部屋とは違う部屋の床板をはがすと……そこから見つかったのは、血で汚れた武器や防具だった。
それらはここの家主には不釣り合いなサイズで、特に防具に関しては明らかに女性用と思われるものだった。
「仲間のものかもしれないが……違うだろうな」
それに、取り出した防具の中には、剣や槍のようなもので付けられた傷や穴があった。
「こんな傷があれば、売る時に怪しまれるだろうし、そのまま捨てていくと何か事件があったと知らせるようなものだから、とりあえずここに隠していたというところかな?」
もしかすると、何か犯罪に繋がると分かるようなものでも買い取るような奴にまとめて売るつもりだったのかもしれないし、とにかくこれも証拠の一つとして回収した方がいいだろう。
「エリカのところを探った時には気が付かなかったが、もしかすると同じように隠されているものがあるかもしれないな」
合流した後で改めて調べてみてもいいが、面倒臭そうだし時間もかかると思うので警備隊に全て丸投げするのがいいだろう。そうすれば、向こうも自分たちだけの手柄を手に入れることが出来るだろうから、喜んで引き受けるはずだ。
警備隊に押し付けることを決めた俺は、家の調査を切り上げてガウェインたちを探すと、すでにガウェインとディンドランさんは合流していて何かを話し合っていた。その近くでは騎士たちと警備隊の数人がいるので、もしかすると俺とエリカ待ちなのかもしれない。
「団長、戻りました」
俺たちのことをよく知らない他国の警備隊がいるので、使いたくもない言葉遣いでガウェインに話しかけたところ、
「ふんっ!」
ガウェインは嫌そうな顔をしながら殴りかかって来た。
「いきなり何しやがる!」
いきなりのことで焦りはしたが、ガウェイン自体本気ではなかったので避けるのは容易かったが……それでも何故殴られそうになったのかが分からず、頭にきて詰め寄った。すると、
「よし! 本物のジークだな! いつもとは違う言葉遣いだったから、てっきり盗賊が化けているのかと思ったぞ!」
などと言って大笑いしていた。
しかもよく見てみると笑っているのはガウェインだけではなく、ディンドランさんや騎士団の連中まで笑っている。
絶対盗賊が化けたなどはただの言い訳で、明らかに俺をからかう為に殴りかかって来たのだと理解した。まあ、理解しなくても、
「ぬぁおっ! うお……おま……」
報復はするつもりだったので、遠慮なくガウェインのケツに蹴りを入れた。まあ、その蹴りのつま先がガウェインのケツの穴に突き刺さったのは、たまたまだったということにしておこう。
うずくまって苦しむガウェインを確認した俺は、その流れでディンドランさんたちを見ると、皆揃って俺に背後を見せないようにしている。ディンドランさんに至っては、腰に下げた剣の柄に手がかかっていた。
「ディンドランさん?」
「何かしら?」
俺が声をかけるとディンドランさんの手に力が入り、いつでも剣が抜ける状態になったのが分かった。
「向こうでエリカがバテて動けないみたいだから、様子を見に行ってもらえる? 男が行くよりいいだろうから」
「……そうね。肩を貸す必要もあるかもしれないから、同じ女性が言った方がいいわね」
そう返事したディンドランさんは、ようやく剣の柄から手を放したが……移動する間、何度も俺の方を気にしていたし、あと少しで姿が見えなくなるというところでガウェインが出した呻き声を聞いて、急に反転して剣を抜いたりしていた。まあ、その原因がガウェインだと知ると、咳ばらいを一つして何事もなかったかのように剣を収め、恥ずかしそうにエリカのところへ向かっていたけど。
「……もしかすると、ガウェインはもう一度ケツに蹴りを食らうことになるかもな」
「冗談でも言うな……マジで痛いんだからな。尻の骨が砕けたかと思ったくらいだぞ……本当にやられないよな?」
「知らん」
ケツをさすりながら立ち上がったガウェインがそんな心配をしていたので、それだけ言って警備隊に証拠となりそうなものを見つけたことと、もしかするとまだ隠されているかもしれないこと、そしてそれらの調査は全て任せたいということを伝えた。すると、警備隊は案の定二つ返事で引き受けた。本人たちは隠しているつもりだろうけれど、心の中では喜んでいるのが見て分かった。
「上手くやったな、ジーク。貴族の名前を出した手前、向こうが手柄を欲しがっても主導権と権利はこちらにあったからな……面倒事も含めて。それを自然な形で共有させたのは、なかなかの手際だったぞ」
こちらとしては今回の件で出るかもしれない利益など必要ないし、下手に時間を取られるのは避けたいところだ。
向こうとしても他国の貴族に助けられただけでなく、利益にまで口を出されると大損になるかもしれないので、適当なところで手を引いてもらいたいというのが本音だろう。
もしかすると、最初にあまり兵を送ってこなかったのは、俺たちが少しでも失敗する可能性をあげる為だったのかもしれない。そうして得た情報を元に、再度自分たちだけで乗り込み、不利益は俺たちに押し付けて手柄だけを持っていくのが目的だった……と言うのは、考え過ぎではないと思う。
「それで、この後はどういった流れにするのがいいと思う?」
ガウェインは続けて、この後の行動について俺に聞いてきた。
「どうするも何も、警備隊に押し付けた後は、なるべく早くこの場を去るのがいいんじゃないか?」
恐らく警備隊は自分たちだけでは手が足りないと判断して仲間を呼ぶだろうから、その前かそれと入れ替わりでこの場を去るのがいいだろう。まあ、流石に夜中の移動ともなれば危険が増えはするものの、俺が先頭に立てば危険はある程度回避することも出来るだろうし、少数とは言えこちらの戦力を上回る敵がこの辺りにいるとは思えない。
なので、そう提案したのだが、
「それはよくないな。最悪とは言わないが、余計なトラブルに巻き込まれる可能性が高い」
と却下された。
考えがあるのなら初めから聞くなと思いはしたものの、話の流れで一応聞いただけだろうと思うことにして、ガウェインの思う正解を聞くことにした。
「まず、今回の件は街に要請を出した以上、俺たちの存在を無かったものとすることは出来ず、ここで何も報告せずにいなくなれば、何か後ろめたいことがあるのではないかと勘繰られてしまう可能性が高い。そうなれば、怪しい人物たちが貴族の名を騙ったのではないかと、ヴァレンシュタイン家やフランベルジュ家に確かめるだろう。それだけならまだいいが、王家にまで報告が行けば、もしかするとカラード様たちの評価を下げることになるかもしれない。それを回避する為にも俺たちは街に同行し、向こうの責任者と話し合う必要がある。そこで手柄は譲るが代わりに何かしらの交換条件を出す必要がある。ただで手柄を譲るとなると、それはそれで怪しまれることになるからな。こういった場合は、何かしらの対価を求めた方が話が早く進むこともある」
「かなり面倒だな」
「ああ、確かに面倒だ。だが、その面倒を無視すると、それ以上の面倒を背負うことにもなりかねん。貴族の名を出すということはそう言うものだ」
ガウェインの説明に俺は納得し、腐っても騎士団長なんだなとほんの少し見直したが……そのドヤ顔がムカついたので口には出さなかった。
「それにしても、ディンドランさん遅いな……余程エリカの状態が悪かったのか? なあ、ガウェイン、様子を見に行った方がいいと思うか?」
エリカの様子を見に行ったディンドランさんが戻ってこないので、何かトラブルでもあったのかと思いガウェインに聞いてみたが、
「ジーク、それだけはやめておけ! 何かあればディンドランが呼びに来るだろうし、それこそ戻って来れないくらいのことが起こったとすれば、大声を出すなりして知らせるはずだ。下手に様子を見に行って、もし変な場面に出くわしでもしたら……」
ガウェインは慌てて俺を止め、何かを怖いことでも思い出したのか顔を青くして体を震わせていた。
恐らくはガウェインの不注意から来る自業自得なのだろうけど、ここまで怯えるということは余程のことがあったに違いない。
今回はガウェインの忠告通り、ディンドランさんたちの様子を見に行くのは止めた方がいいみたいだが……その時のガウェインに何があったのか、カラードさんやランスロ―さんなら知っているかもしれないので、戻ったら後学の為に何としても聞き出してみよう。
それからしばらくして、ディンドランさんとエリカが戻ってきたが、二人共最後に見た時とは違う服を着ていて髪が濡れていたので、着替えるついでに水浴びでもしてきたのだろう。
あの時ガウェインの話を聞かずに様子を見に行っていたら、二人から酷い目に会わされていたに違いない。そう言った意味では、ガウェインに感謝しなければいけないな。
二人を確認した俺はガウェインにこの後どうするのか聞いたところ、今のところはやることがないので自由にしていてもいいと言われた。
ただ、街から追加の兵が来ればすぐに移動することになるかもしれないとのことで、この街の中限定でという制限つきではあるが、自由行動の許可を得た俺はこの時間で水でも浴びようかと思い、近くの小屋の裏へと移動しようとしたが……何故かガウェインもついてきた。それどころか、ディンドランさんも遠巻きに俺の後をつけようとしている。
「……何してるんだ?」
「ジーク一人だと、何するか分からんからな」
「退屈しのぎの腕試しとか言って、獲物を探しに行ったきり、半日近く行方不明とかも有り得るから」
そんなことを二人は言っているが……ガウェインはともかくとして、ディンドランさんのそれはどっちかと言うと、
「それ、俺のことじゃねえか⁉」
ガウェインのこと……って言うか、本当にガウェインはやったことがあるのか?
そんな俺の疑問を察したのかディンドランさんは、
「団長はジークが来る一年くらい前に、ヴァレンシュタイン家の領地に向かう道中でちょっとしたトラブルがあって一日足止めを喰らっている時に、そんなことを言って急にいなくなって次の日に合流したことがある」
「あの時は暇つぶしで散策していたら、カラード様たちを狙う輩が一人になった俺を襲ってきたから返り討ちにして、そのついでにそいつらのたまり場を潰してきたからだと説明しただろ? しかも、実際にはニ~三時間で戻って来たのに、ランスロ―が予定を繰り上げて出発させたことが原因だろうが! 俺を置いて!」
などと、ガウェインはディンドランさんに反論したが、
「いや、そもそも騎士団長が暇だからと言って持ち場を離れるのが駄目なんじゃないか? しかも、そんな輩を見つけたとしたらカラードさんに知らせる必要があるだろうし、ランスロ―さんにしてみても、どこに敵が潜んでいるか分からない状況なら、安全と思われるところまで避難する選択は普通だと思うんだけど?」
ガウェインが置いて行かれたのは、報連相を怠ったことが原因の自業自得だろうと指摘すると、ガウェインは何か言いたそうな顔をしながらも黙り込み、ディンドランさんはその通りとでも言いたげな表情で頷いていた。
「その結果、団長は一ヵ月の間、騎士団のトップでありながら一番下っ端をやらされるという罰を受けたのよ……そう言うわけで、ジークは何をするつもりだったのかしら?」
確かにその罰は色々ときついかもしれないが、一ヵ月というのは罰としては軽いような気もするし、何よりもランスロ―さんの負担が大きいような気もする。
そうは思ったがそれを聞くよりも先に、圧力をかけてくるディンドランさんに水浴びをしてくるつもりだったというと、
「それならいいわ。ついでに団長も体を洗ってきてください。臭いますから」
「ディンドラン、それはひどくないか……」
辛辣な物言いのディンドランさんに反論しようとしたガウェインだったが、その内容が気になったのか自分の服の臭いを嗅いで……黙って俺の背中を押し始めた。
「……ガウェイン、マジで臭うぞ」
背中を押せるほど近づいてきたせいで、ディンドランさんが言ったことが本当だったと知った俺がそう言うと、ガウェインは明らかにショックを受けたようで、後ろから付いて来てはいるもののその速度は遅く、すぐに俺との距離が離れてしまった。
まあ、ガウェインの名誉の為にいうことがあるとすれば、多少の加齢臭が臭いの原因に入っているとは思うが、今回の場合は一人で街まで馬を往復で走らせたことが主な原因だろう。もっとも、誰かに聞かれたらそう答えるつもりではあるが、わざわざ自分から教えるつもりはない。
「あ~……こういう時に、複数の系統の魔法を使いこなせる奴がいると便利だよな。出来ないことは無いと言う奴はそこそこいるだろうが、ジークの何倍の時間をかけて、ようやく一人分のお湯が作れるかどうかという感じだしな」
ガウェインが俺に追いつくと同時に他の騎士たちもやって来たので、どうせならまとめてやった方がいいだろうと思い、いつも愛用している風呂桶代わりのデカい木桶に魔法でお湯を出して体を拭いたのだ。
お湯を作るだけなら、水と火の魔法が使える奴かそれぞれの魔法を使える奴が二人いれば出来るが、水と火の魔法を同時に使ってお湯を作るというのはそこそこ難しい技術だし、桶に溜められた水を火で温めてお湯にすると言うのも割と難しい。何せ、火力を間違えると水が厚くなりすぎるか蒸発してしまうし、下手をすると周りに火が飛び散って火事になるかもしれない。
「慣れれば、感覚で水がどのくらいの温度になっているというのが分かるんだが、それでも室内では危険だしな。その点、水と火の魔法を同時に使ってお湯を出す方法は、難易度が跳ね上がるが危険は少ないからな。せいぜい、熱くし過ぎておけに入れる時に跳ねたお湯で火傷するくらいで済むからな」
「簡単に言うけど、それが出来たら旅がどれだけ楽になることか……少なくとも、軍関係で就職には困らないだろうし、それなりに重宝されるだろうな」
水が出せれば喉の渇きを心配する必要がないし、火が使えれば暖も取れるし野営も楽になる。その両方が使えてお湯が出せるくらいの技量があれば、清潔さを保つことが出来る……つまり、風呂に入ることも可能だ。まあ、魔力が尽きない限りという条件はあるが、水やお湯で手や顔が洗えるだけでも旅を快適にするのは間違いがない。
だからこそ、ガウェインや他の騎士たちがうらやましがるのだろう。
それはそれとして、そんなことを大きな声で言わないで欲しい。特に、先に水浴びをしたディンドランさんとエリカの近くでは……
男性陣だけ温かいお湯で身を清めたと知った二人は、俺を冷たい目で見続けてきて……その圧力に負けてしまった俺は、二人の為にお湯を作る道具と化したのだった。