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黒のジーク 《書籍版発売中》  作者: ケンイチ
第三章
49/117

第七話

「ここがラヴィアンローズ……私のお店よ!」


 今回の依頼の目的地である『ジモン』に到着した俺たちは……大歓迎を受けながらローズさんの店までやって来た。

 まあ、歓迎されているのは、俺がダイカイギュウを助けたかららしい。

 ダイカイギュウの保護活動をしている街では、ダイカイギュウはアイドルのような扱いをされているそうで、アイドルの命を助けた俺は一躍有名人と言うわけらしい。


「すごい人気だったな。まるで英雄じゃないか」


「目立ちたくないんだがな……しばらく滞在するつもりだったけど、早めにスタッツに帰った方がいいかもな」


 他の街に行く機会があまりないので、俺一人でもこの街に一か月くらいは滞在してみようかと思っていたのだが……こんな感じが続くとなると、悪意がないと分かっていても居心地が悪いので、俺の中の予定を切り上げて帰還を早めようと決めた……が、


「悪いがジーク、この街に十日は滞在するぞ。他国に行く機会なんかめったにないから、色々と見て回りたいしな。後、流石に疲労が溜まっているからな。特に、馬が」


 最低でも十日はこの街に居なければならないということを知ってしまった。


「馬か……おっさんなら気絶させてでも無理やり連れて行くけど、馬は流石に可哀そうだな……なら、俺一人でも……」


「ちなみにだが、ジーク一人で先に帰ると、多分ジークだけ依頼失敗ということになるからな。しかも依頼を失敗したとなれば、かなりのペナルティを負うことになるだろう。無論、ジークだけがな」


 何故そうなるのかと思ったら……このパーティーのリーダーはおっさんだからだろう。俺がギルドに持っていった依頼ではあるものの、俺自身が依頼人というわけではないし、勝手に戻ると依頼を放棄したという扱いにされるのだろう。


「つまり、宿屋に引きこもれという……いや、バレなければいいか……」


「おいジーク、犯罪者みたいなこと言ってないで、さっさと入るぞ!」


 俺がどうやってこの街で過ごそうかと考えていると、いつの間にか皆はローズさんのお店の中に入っていて、最後尾にいたおっさんが入り口から体半分を出しながら呆れた様子で俺を呼んでいた。


「とりあえず、これで依頼は完了となります。こちらに完了のサインをお願いします」


 おっさんの差し出した依頼書に、ローズさんがサインをした時点で俺たちの依頼は完了した。後はスタッツに戻り、ばあさんにこの依頼書を見せて完了したことを確認してもらい、ギルドに提出するだけだ。


「これで一区切りだな。後は、この街に滞在する間の宿だけだが……ここのギルドにでも行ってみるか」


 おっさんがそう言って立ち上がると、チーとフリックも同意して立ち上がったので、俺もついて行くかと思い、その前に軽く変装しようかとマジックボックスからフードを取り出して頭から被ったところで、


「ああ、宿だったら、私の方で手配できるわ。こう見えても、色々と手広く商売をやっているからね。宿の方にも自信があるわよ。ただ、流石に無料にすることは出来ないけれど、いい部屋を格安で用意するわ」


 ローズさんがそう言ったので、おっさんたちは席に座りなおした。

 その後、ローズさんの出した条件がかなり良かったので、部屋を四つ用意してもらうことになり、さらには今夜、俺たち(正確にはここまで護衛して来た女性たち)の歓迎会をしてもらえることになった。


「それまで、俺はギルドに顔を出してみようと思うが、お前たちはどうする?」

「俺はバルトロさんについて行きます。この国のギルドに興味がありますし」

「私は宿でゆっくりしようと思います。お風呂もあるみたいですし」


 と言う感じで、三人の夜までの行動は決まった。そして俺は、


「街をぶらついてみる。金に余裕があるし、何かいいものがあれば仕入れておきたい。まあ、その前に宿に一度行ってみるつもりだけどな」


 こうなったら、この街でちょっと商人らしいことをしてみようかと、()()()()()()()()()


「ほ~ん……そんじゃあ、馬車を頼んでいいか? その宿の人に引き渡したら、泊っている間は世話をしてくれるらしいしな」


 おっさんは俺を少し怪しんだみたいだが、特に悪いことをするつもりはないので突っ込まなかった。


「それじゃあジーク、また夜にね。くれぐれも、問題は起こさないようにね」

「まあ、俺から問題を起こす気は無いが……気を付けておこう。チーも、寝過ごして歓迎会に出られなかったとかにならないようにな」


 宿でチート別れた俺は、受付で鍵を預けるとフードを深くかぶって街へと向かった。

 その途中で、


「この()()久々だな」


 人気のない路地裏に入って、髪の毛と目の色を黒に戻した。ついでに魔法で髪がいつもより長く()()()()()()()()ので、俺のことをよく知らない人間、今の俺を見てもダイカイギュウを救った奴だと気が付くことは無いだろう。

 前まで薬で髪と目の色を変えていた俺だが、カロンの事件でまだ知らない魔法があるはずだと思い、ばあさんやギルド長のコネを使って古い本などを調べまくった結果、今ではほとんど使われていないような魔法をいくつか覚えたのだ。その中の一つが、今使った髪と目の色を変える魔法だ。

 なお、髪の長さが変わったように見える魔法は、髪と目の色を変えた魔法の応用……と言うか、本当の使い方なので、実は同じ魔法を三回使っただけなのだ。


 とにかく、これで俺だと気が付かれる可能性はかなり低くなったので、俺は安心してフードを取り払い、改めて街に繰り出した。



「やっぱり、港町だけあって色々なものがあるな。少なくとも、食材に関してはスタッツよりも数段上だ」


 食材は、肉や野菜などに関しては種類の違いなどもあり、スタッツよりも明確に上だとは言えないが、魚類や調味料……特に香辛料に関しては確実に上だと言える。それはもう、比べるまでもなく。


「香辛料に関してはやっぱり高いものが多いけど、出来るだけ買い集めた方がいいかもな。場所によっては仕入れ値よりもはるかに高い値段が付くだろうし、何よりも普段の料理に使いたいしな。それと魚は……港に近いところの店の方がいいかもしれないな」


 今いる辺りでは、野菜や調味料などを売っている店は多く見るが、魚を売っている店は少ない。あっても、店に置いているのは加工品ばかりだった。

 念の為野菜を買った店で確認してみたが、やはり魚を買うなら港の辺りまで行った方が安くて種類も多く、特に生魚は街の人でもこの辺りで買うことはあまりないそうだ。

 

 そう言うわけで、教えてもらった通りに魚を買いに港まで行こうかと思ったのだが、その前に冒険者ギルドに寄ることにした。理由は二つあって、一つは()()だ。

 これは、別にフランベルジュ伯爵にドラゴンの頭を売って出来た金を使い果たしたというわけではなく、単に細かな金が欲しいからだ。

 伯爵は当然と言えば当然なのだが、ドラゴンの頭の代金は全て金貨で払った為、細かな買い物をする時にはとても不便なのだ。

 金貨で払えるところもあるのだが、俺の欲しいものがそう言った店ばかりに置いてあるとは限らないし、この街では金貨だけで過ごすことが出来ても、帰りの村などでは金貨ではお釣りが用意できないという店も多いと思うので、金貨数枚分の銀貨や銅貨などを持っておきたい。

 ちなみに、どの国の硬貨も基本は金貨・銀貨・銅貨で、それぞれ頭に大や半付く硬貨(大は五倍、半は普通の半分の価値となっている)もある。それとは別に特別な硬貨(特殊な金属で作られた硬貨や、特大金貨と言った感じのほぼ観賞用のもの)や、別の国では鉄や石、宝石で出来たものなどもある。

 そして二つ目が、ドラゴンの素材がどれくらいの値段で売れるかだ。

 これはおっさんに聞くのが手っ取り早い気もするが、おっさんの持っている情報は古いものだし、質は俺の方が圧倒的にいいとのことだったので、一度自身の目で確かめてみる必要があると思ったのだ。


 そう言うわけで、この街の冒険者ギルドにやって来たのだが……港町だからなのか、それとも人の往来が多いせいか、そのまたどちらもだからなのか、ギルド内にいる冒険者や職員は、どこか気の荒そうな者が多くいた。それはもう、俺が何も知らない一般人だったなら、静かに扉を閉めて帰りそうになるくらいには。


 まあ、あまり近寄りたくない場所だったとしても、冒険者にとってギルドは重要なところだし、見た感じではおっさん以上にヤバそうなのはいないみたいなので、スタッツのギルドと同じような気持ちで素材の買取り場所を探した。

 一応、余程の馬鹿でない限りは、ギルド内で騒ぎを起こす奴はいない……だろうし、俺は荒くれ者に対しては扱いが上手い方だと思うので、気にすることなく中に入ったのだが、フードを被った見知らぬ男と言うのはやはり目立つらしく、入った瞬間にかなりの視線が向けられた。なお、変装したままだと身分査証とか言われかねないので、変装はいつもの状態に戻してある。


「珍しい素材が手に入ったので買い取って欲しいのだが、今から査定してもらえるか?」


 俺は買取り専用の受付を見つけると、そこに座っていた職員の男に声をかけたのだが、


「あ? 珍しい素材? いるんだよな、お前みたいにもったいぶった言い方をして値段を吊り上げようとする奴が……ちょっとそこに出せ。俺が見てやる。ありがたく思え」


 俺が若いと分かったからか、いきなり横柄な態度で机を脚で小突きながら命令して来た。

 あまりにひどい態度にそのまま踵を返しそうになったが、こいつはこの街一番の馬鹿なのだと思うことにして、事前に用意しておいた鱗を五枚だして、ドラゴンのものだと告げると、


「……はっ! そんなわけあるか! 馬鹿か、お前は! こいつはオオトカゲの鱗だ。間違いない。まあ状態はいいみたいだから、一つ銅貨三枚だがおまけで十六枚だ。ほらよ」


 そう言って男は、鱗を()にいれて、明らかに自前のものと思われる財布から大銅貨二枚と銅貨を六枚机の上に転がした。だが、


「そうか、なら売らない。素材を返せ」


 俺はそれを受け取らずに、鱗の返却を求めた。


「馬鹿が、新人が欲をかくな! この素材は、それでも十分すぎるくらいの値を付けてやったんだ! ありがたく受け取り、俺に感謝するのが筋だろうが!」


 しかし男は、鱗を入れた場所を少しでも俺から遠ざけるように体を捻り、怒鳴り声をあげた。

 流石にその声でギルド内にいた冒険者たちが異変に気付き、ほぼ全員が俺と男に注目したのだが、それが男には不都合なことだったらしく、


「これがこのギルドでの値段だ! さっさと受け取って、すぐにこのギルドから出て行け!」


 と、また大声を出して、今度はギルドの奥に引っ込もうとしたが……


「俺はまだ売却に同意していない。だからそれはまだ俺のものだ。つまり俺のものを不当に持っていこうとするお前は、泥棒ということだな。それ相応の扱いをさせてもらうぞ!」


 奥に逃げようと後ろを見せた男の服を机越しに掴み、そのままこちら側に引っこ抜いて床にたたきつけた。そして、


「動いたら殺すぞ」


 男の首元に、剣を突き付けた。

 流石にギルド内で武器を抜くのはご法度だが、盗まれたものがものだし、俺としては正当性のある行動だと思ってのことなのだが、傍から見ると異常な為、事情を知らない奴らが武器を抜いて俺に向けていた……が、俺はそいつらのことは無視をして、男に懐に入れた鱗を取り出すように命令した。

 男は俺の命令を聞かずに、その間に誰かが助けに入って来ることを期待していたようだが、剣先で男の喉元をついて痛みを感じさせると、観念したように懐から鱗を取り出した。

 男が鱗を取り出すと同時に、武器を向けていた内の何人か何かを察してなのか武器を下ろしたが、依然として十名近くが武器を構えていた。そんな状況の中、


「おい坊主、何があったか知らんが、とりあえず今すぐ殺すのだけは止めろ。お前らも、一度武器を下ろせ」


 大柄でスキンヘッドの男が声をかけて来た。そしてスキンヘッドの男は武器を構えていた奴らを押しのけるようにして、俺の近くまでやってきて、


「まず聞きたいのは、何故坊主がこんなことをしたかだ。こんなことをしでかしたら、坊主もただで済まないのは分かっているだろ? それと……え~っと……誰だっけ、こいつ?」


 スキンヘッドの男は、俺に剣を突き付けられて動けないままでいる男の名前が思い出せないようで、数秒考えた後で自分の背後にいる連中に助けを求めていた。そんな中、


「「動くな!」」

 

 俺とスキンヘッドの声が重なり、俺の背後に回り込もうとしていた冒険者が、驚いて転びそうになった。


「お~! 死角から音を立てずに近づこうとした奴に気が付くのか! すごいな、坊主! で、あいつ、誰だっけ?」

「ベンドスだ」


 スキンヘッドの男は、俺が背後の男に気が付いていたことに驚きながらも、再度剣を突き付けられている男の名前を訪ねていた。

 それに答えたのが誰かは分からないが、かなり呆れているような声だったので、何人かは毒気を抜かれてしまったのかもしれない。


「ああ、そんな名前だったな。で、ベントス……いや、ベンドスだったか。何でお前は、坊主の素材を懐から出したんだ? いつもなら、買い取った素材は別の職員を呼んで預けてなかったか? 俺は頭が悪いから間違えているかもしれんが、前に誰かに聞いたら、不正防止とか言われた気がするんだが……俺の思い違いか?」


 スキンヘッドの男が別の職員に確認を取ると、


「え~っと……間違っていません、グランドさん。確かに買い取った素材は、紙に日付や買取り金額などの情報を書いてから、別の職員に素材と一緒に渡します。ただ、その時の状況によってはいつもと違うやり方になることもありますが、そんな時でも別の職員に声をかける決まりとなっています。間違っても、買い取った素材を自分の懐に入れて持ち運ぶことなどありません」


 グランドと言うらしいスキンヘッドの男に聞かれた職員が、声に怒気を含ませながら説明をした。


「あっ! やっぱり間違ってなかったか! ……んで、なら何でお前の懐から、坊主の素材が出て来たんだ?」


 自分の思い違いでなかったことに喜びを見せたグランドだったが、すぐに真顔に戻って男を睨みつけていた。

 男はそんなグランドの迫力と、完全に自分の悪事がバレたことで顔面蒼白となり、振るえて声が出せなくなっていたが、


「坊主、大体のことは理解した……つもりだが、剣を引いてくれないか? このままじゃ、こいつはまともに話せそうにないし、何より、本来なら坊主の行動はギルドではご法度だからな。俺が責任を持って坊主を襲わせないから頼むよ。な?」

 

 その言葉を信じてもいいものか迷ったが、グランドの言葉に同調するように大半の冒険者と職員が頷いていたので、一度剣を収めることにした。


「よし! じゃあ……お前ら! 間違っても手を出すんじゃねぇぞ!」


 俺が剣を鞘に納めたのを確認したグランドがいきなり大声で怒鳴ると、野太い声が次々に返って来た。多分、普通に返事した冒険者や職員もいたのだろうが、かなりの数いた気の荒そうな冒険者の声にかき消されてしまったのだろう。


「さてと……坊主、何でこうなったのか、理由を話してくれないか?」


 冒険者たちの声が静まった頃合いで、グランドが理由を訪ねてきたので受付でのことを話すと、


「そのドラゴンの鱗とやら、見せて貰ってもいいか? ベンドスを庇うわけじゃないが、ちょっと信じられなくてな」


 俺が提出した鱗を見せて欲しいと言われた。確かに第三者が確認することは必要だと思ったので、ベンドスから取り戻した鱗の内の一枚を渡すと、


「……うん、見せて貰ってなんだが、これがドラゴンの鱗かどうか、俺にははっきりと判断できん!」


 と言った。だが、


「ただ、これがオオトカゲの鱗でないことは、俺でも分かる。それどころか、厚さや大きさ、硬さからいって、オオトカゲよりもはるかにデカい生き物……それこそ、ドラゴンの鱗だと言われた方がしっくりくるな。坊主、これ、別の()()()()()()職員に確認させてもいいか?」


 はっきりとオオトカゲではないと断言した上で、これを別の第三者に確認させたいとのことだった。ここまで来たら、そのちゃんとした職員にも見せた方がいいのでそれも了承すると……グランドが声をかけるよりも早く、十名近い職員が小走りに近寄って来た。

 流石にこれはグランドも想定外だったようで、驚いた表情で俺に視線を送っていたが、俺が頷くと寄ってきた職員を一度制止させて、大きめのテーブルを運んできてその真ん中に鱗を置いた。

 そして、職員達が鱗に集まって数分後、


「恐らく、ドラゴンの鱗で間違いないと思われます」


 と言う結論を出した。まあ、俺としては分かっていたことだけど、他の職員が本物だと認めたことに少しほっとした。


「それで、今回の俺の()はどれほどのものになるんだ? ()()()()()()に、貴重な貴重なドラゴンの鱗を盗まれそうになった俺の罪は? ああ、今回の事件は、そこの馬鹿が勝手にやったことだとは言わせないからな。そいつは俺から鱗を盗む時に、冒険者ギルドの名前を出したんだ。今更そいつ一人の責任だと言われたとしても、トカゲの尻尾きりにしか聞こえないし、何よりもそいつは手慣れ過ぎていた……つまり、ここのギルドではそう言った犯罪行為がまかり通っていたはずだ。さて、俺はギリギリのところで回避できたが、これまでにこのギルドを利用した何人の冒険者と、この街の住人が被害に遭ったんだろうな? あと、それはもう返してもらうな」


 俺は今回の事件で最大の問題となりえることを、冒険者たちにも聞こえるようにして職員たちに問いかけると、職員たちは何も言えずに下を向いた。その間に鱗を回収し、どういった答えを出すのか待っていたのだが……職員たちはいくら待っても答えを出さなかった。


「これ以上は時間がもったいないな」


 こんなことになるのなら、冒険者ギルドなんかに来るんじゃなかった……と後悔しながら、ギルドから出て行こうとすると、


「坊主、帰るのか?」


 グランドが声をかけて来た。そこで「逃げるのか?」と聞かない辺り、このスキンヘッドは今回の件について、完全にギルド側に問題があったと考えているのだろう。まあ、もしかすると自分も被害に遭っていたのかもしれないので、ギルド側を庇う気にはなれないのは当然のことなのかもしれない。

 実際に、俺の指摘を聞いた他の冒険者たちが一斉にギルド職員に詰め寄っているので、グランドもこの後で自分に対して不正を行っていなかったかの尋問に加わるのだろう。


「鱗を売るのは、ここでなくてもいいしな」


 よく忘れそうになるが、俺はこれでも商人の端くれ……とも言えないくらいの存在だが、使えそうな肩書きがあるのを思い出したのだ。


「そうか……まあ、仕方が無いな。今回の件は、完全に冒険者ギルドの自業自得だ。何かあれば、ここに居る多くの奴らが坊主寄りの証言をするだろうよ。俺を含めてな」


 やっぱり腹を立てていたらしいグランドに見送られ、今度こそ冒険者ギルドを出て行こうとしたのだが……


「何でこんなに騒がしいんだ? ……って、ジーク! もしかしなくても、お前が原因だな!」


 タイミングよくドアが開いたと思ったら、その向こうにいたのはおっさんとフリックだった。

 しかもおっさんに至っては、ギルドに入って来るなり異変に気が付き、さらには目の前にいた俺が原因だと決めつける有様だった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です。 この世界のギルド、不正しかしてねぇな?(レ並感) は~つっかえ!ホンマつっかえんわ~……辞めたら組織運営ィ? それでは今日はこの辺りで失礼致します。
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