第六話
「盗み聞きですか、伯爵様?」
「おい、ジーク!」
焦った様子のおっさんが俺の肩を揺さぶるが、
「確かにジークの言う通り、貴族としてはそう行動するのが正しいのかもしれないが、俺には当てはまらないな。まず、この周辺に大規模な盗賊や魔物の群れ、そしてドラゴンのような例外的な存在がいるという報告は無いこと。もしあった場合、ここは国境線が近い為、怪しいという段階で周辺の貴族に情報が回される。それがないということは、比較的安全ということだ。そして、俺に何かあったとしても、伯爵家にはすでに後継者候補が二人いる。逃げて評判を落とすより、戦い抜いた方が伯爵家の為になる。そして何よりも、お前がいる。ドラゴンよりも強い奴がいるのに逃げなければならない状況と言うのは、一体どんな地獄だ? なあ?」
伯爵は気にした様子を見せずに、むしろおっさんに同意を求めていた。
「と言うかジーク、俺が近くにいると分かっていながらそこまで言うということは、どこかで貴族にひどい目にあわされたのか? それとも……元は貴族の出か?」
それまでと違い、伯爵の目が鋭くなったが……
「まあ、そんなわけは無いか。お前ほどの実力者がいるとなれば、その家はその名を利用するだろうから、他国にまで名が知れ渡るはずだしな」
すぐに笑い顔に変わった。しかし、
「俺が貴族の出なわけあるか……生まれも育ちも、親の顔すらも知らないのに」
思わず呟いてしまった言葉を聞いて、今度は申し訳なさそうな顔になったのだった。しかも、それを聞いていたおっさんや他の皆も、同じような顔をしている。
「それは悪いことを聞いた……すまん」
俺自身は気にしていないのに、周りの方が気にして黙り込んでしまっているのは、なんだか居心地が悪い。
「それで、伯爵様は何か用があったのでは? まさか、冒険者同士の話を盗み聞きする為だけに近づいたということは無いですよね?」
場の空気を換える為に伯爵に話を振ると、伯爵はすぐにその意味に気が付き、
「おお、そうだった。実はこの先にある橋を渡ると国境線なのだが、その手前でジークたち以外の者は別れるそうでな。行き先は小さな村らしいのだが、そこまで一時間程歩く距離とのことだ。そこで、ここまで来たのだから、その村まで送ろうかと思ったのだが……ジークたちはそのまま進むか? ここからなら、国境線まで三時間程だ。ちなみにだが、その村に寄るとしたら四時間程になる」
俺の話に乗って来た……と言うか、そんなことは忘れないで先に言って欲しかった。まあ、緊急事態と言うわけではないようなのが救いだが。
「どうする、おっさん?」
「あ~……どうすっかなぁ……俺としては、このまま進んでもいいと思うが……いや、俺たちも村に寄った方がいいな。伯爵様、俺たちも一緒に行きますよ」
俺もだけど、おっさんとしては伯爵たちと別れても大丈夫だと思っていたみたいだが、別れるとかもしれないとなった瞬間に女性たちが不安そうにしたのが分かったので、少し遠回りになったとしてもこのまま行動を共にした方がいいと判断したようだ。
「分かった。それじゃあ、このままついて来てくれ」
伯爵はそう言うと馬車から離れて行った。
「フリック、聞いたな? このまま伯爵たちに合わせて移動してくれ」
「了解です」
おっさんがフリックに指示を出すと、それを聞いた女性たちには笑顔が戻った。
伯爵が言った通り小さな村には一時間程で到着し、少しの間補給を兼ねて村で休憩することになり、改めて国境線を目指した。そして、
「ジーク、ここでお別れだ。ドラゴンの件、本当に助かった。またな」
無事に国境線へと到着した俺たちは、そこで伯爵と別れることになった。
伯爵はまたなと言ったが、スタッツに戻れば顔を合わせる機会はまずないだろう。
「おっさん、ここから目的の街まではどれくらいかかるんだ?」
「さっき聞いてきたが、六日から七日と言ったところだそうだ。まあ、道の状況次第だろうが、それでも十日あれば余裕じゃないか?」
それくらいなら、途中で補給しないでも余裕だろうが……野営が続くとドラゴンの肉を食べさせろと騒ぐのが三人(双子とおっさん)もいるので、出来る限りどこかの町や村に立ち寄るようにしたい。
そう進路の話し合いをしている時に言うと、明らかにおっさんの挙動がおかしくなったので問い詰めると、
「見事に町や村を避けるところを通ろうとしているな」
「バルトロさん、流石にこれはどうかと思いますよ」
「依頼人の安全を考えると……いや、ジークがいるから、この道でも大丈夫だとは思うけどねぇ……」
改めて進路を確認したフリックとチーからも非難されていた。マジでおっさんは、食料が少なくなれば俺がドラゴンの肉を提供する可能性が高くなると考えていたっぽい……提供したとしても、おっさんに食べさせるとは限らないのに。
最後の方は心の声のつもりだったのが知らないうちに口から出ていたらしく、おっさん(と盗み聞きをしていた双子)は慌てだし、そんな様子を見ていたフリックとチー(と同じく盗み聞きをしていた女性たち)は大笑いしていた。
そういったこともあり、進路はフリックとチーの意見を重視し、最終的に一番安全と思われる道(最短ではないが、周辺の町や村の近くを通る比較的広い道)を進むことに決まった。なお、それでも初日は野営をしなければならなかったので、皆の希望通りドラゴンの肉を提供することにしたが……配膳やおかわりは俺が主導することにして、おっさんの分だけはわざと少なめに盛るという嫌がらせをしてやった。
国境を越えてから七日後、俺たちは目的の街のすぐ手前まで来たのだが……その街の手前にある橋で、人が集まっていたので足止めを食らうことになったのだ。
「チー、何かあったか分かったか?」
場の雰囲気から危ないことは無いと判断し、おっさんはチーに様子を見に行かせていたのだが、戻ってきたチーは困惑気味に、
「いや、それが……なんか橋の下に海に住む魔物がいるらしくて……」
と言ったので、
「そいつが橋でも壊そうとしているのか?」
そうおっさんが聞くと、
「いえ、そうではなくて、何故か街の住民が助けようとしているんです。その見物客なんかで、橋が通れないんです」
とさらに答えた。
「何じゃそら?」
流石に予想していなかった答えにおっさんも困惑していたが、それを聞いていたアリアとアリスが、
「それって、丸っこくて頭に一本の角がある魔物ですか?」
「ひげがあって、目が可愛いかった?」
と話に入って来た。
チーは、遠目だったから細かいところは分からなかったけど、丸っこい体をしていたと言うと、アリアとアリスは、
「カイギュウなら仕方が無いか」
「そうだね」
二人だけで納得していた。
「どういうことだ?」
「この辺りの海にはカイギュウって魔物が居るんだけど、温厚で人懐っこくて、漁の邪魔になる海藻を食べてくれるんだ。それに昔と比べて数も減っているから、この付近の人たちは絶滅しないように保護活動をやっているんだよ」
「あと、馴れると人の仕事を手伝ってくれるし、何よりかわいいし……ちょっと、見に行ってみようよ」
と言って、アリアとアリスは馬車から飛び降りた。すると他の女性たちも、退屈だから二人について行きたいと言い出したので、結局御者をしているフリックを残し、他の三人で護衛をすることになった。
まあ、街の近くと言っても少し離れているので危険が無いとは言えないが、これだけ人の目があればそう簡単に危ない目にあうことは無いだろう。あってもスリや喧嘩に巻き込まれるくらいだと思う。
俺たちはアリアとアリスを追いかける形で橋の近くに行くと、カイギュウという魔物がいるという上の当た血で、ガタイのいい男たちが集まって話をしているのが見えた。流石にそんなところに女性たちを使づけるわけにはいかないので、俺が先頭を行く二人を止めて、おっさんとチーがどこか離れたところからでも見えるところは無いかと場所を探していると、
「あっ! やっぱりお母さんだ!」
「ママ~~~!」
アリアとアリスがそんなことを言いながら、男たちの方に向かって手を振り始めた。
それに気が付いた男たちが一斉にこちらを振り向くが……二人が言うような人物は見当たらない。そう思っていると、
「ようやく戻ってきたのね!」
男たちの中心にいた派手な服装の男性が、二人に手を振り返しながら走って来た。
そんな男性の様子におっさんとチーは驚いていたが、おっさんの方は経験の差なのかすぐに我に返っていた。
そして俺はと言うと、
「お兄さんじゃなくて、オネエさんか……」
などと呟いてしまった。しかも、その呟きが男性……オネエさんの耳に届いたらしく、オネエさんはすごい勢いでこちらに顔を向けてきた。しかも、ものすごい顔で俺を睨んでいる。
「あぁん? なんか文句あるって言うのか? うん?」
オネエさんの雰囲気が背後の男たちにも伝わったのか、全員が一瞬で睨んできたが……正直言って、あまり怖く感じなかった。少し前にドラゴンを目の前で見たばかりだし。
そんな俺の様子が舐めているとでも思われたのか、オネエさん以外の男たちがじりじりと距離を詰めてきたが……それに対しておっさんとチーは、何故か俺の動きを封じていた。具体的に言うと、おっさんが俺を背後から羽交い絞めにし、チーが前に立って両肩を押さえているのだ。
そんな突然の裏切り行為に、オネエさんと男たちは何が起こったのか分からないと言った感じで驚いていたが、
「お母さん、その三人は、私たちの護衛を引き受けた冒険者で、羽交い絞めにされているのがベラドンナさんから直接依頼を頼まれたジークだよ」
「それと、その後ろのおじさんはスタッツで一番強いとか言われていたらしい冒険者で、羽交い絞めされているジークはドラゴンを倒していたよ。美味しかった」
その隙を突いた双子が、ここぞとばかりに早口で説明したのだが、その内容を理解できなかったようで、見て分かるくらい混乱していた。
「チー、俺の懐にばあさんからの依頼書が入っている。これをあの人に渡してくれ。それと……おっさん、いつまで抱き着いているつもりだ? 川に叩き落すぞ?」
チーに懐に入っている依頼書をオネエさんに持っていかせて、俺は背後のおっさんに脅しをかけた。
今の状態では、普通の方法だとおっさんの拘束から抜け出すのは難しいが、魔法を使うとなれば話は別だ。
例えば、陰に潜っておっさんの背後に回る方法や、糸でおっさんを拘束する方法、他にも……おっさんを殺してもいいのなら、さらに方法は増える。
それが分かっているのか、おっさんは俺の警告に対してすぐに両手を上げて離れた。
「あ~……確かにこれはベラドンナさんのものだわ」
「ママ、ジークはママみたいにちょっと他と違う人に会うのは慣れているから、大丈夫だよ」
「うん、ああ見えて結構優しいから……怒ると容赦ないけど」
二人の説明を聞いたオネエさんは、改めて俺に頭を下げた。それを見た男たちも、同じように頭を下げている。
多分、俺があのオネエさんを馬鹿にしたとでも思ったのだろう。
「とにかく、まだ街の外だから依頼達成と言うわけじゃないんだが、一体何があったんだ? 魔物が橋の下にいるとは聞いたが、それほど珍しいのか?」
おっさんがオネエさんたちに話しかけると、オネエさんは少し困ったような顔をして、
「そうなのよ。ちょっと前に大雨が続いたでしょ? その関係でこの川もかなり水量が増したんだけど、その時に大潮の満潮が重なってね。いつもとは違う場所に行けるかもって感じで、一頭のダイカイギュウがここまで来たのよ。そして運の悪いことに、川の水量が減って戻る途中で、橋の下にある深みに入り込んでね。そのまま戻れなくなったのよ」
何とも間抜けな話だが、このままだとそのダイカイギュウは衰弱死してしまう可能性があるそうだ。
「私たちの街はカイギュウを保護しているし、助けられてもいるから何とかしたいのだけれども、いい方法が思いつかなくてね。いっそのこと、ダイカイギュウの周辺を掘り下げて、次の大潮の満潮までダイカイギュウの体力が持つかどうかに賭けるしかないかって話していたところよ」
確かにダイカイギュウとやらの全身が浸かるくらいまでの深さを確保できたとしたら、少しは生き残る可能性が上がるとは思うが……次の大潮が十日後くらいらしいので、生きていたとしても海に戻るだけの体力が残っているかや、戻った後で体力が回復するかまでは分からないだろう。むしろそのことも含めたら、死ぬ可能性はかなり高いと思う。
「何か力になれるといいんだが……そもそも、俺たちはカイギュウと言う魔物を見たことがないしな」
「それじゃあ、ちょっと見てみる? それで何か考えが浮かんだら、私たちとしても儲けものだわ」
おっさんがそう言うと、オネエさんはダイカイギュウがいるという橋の真上に案内してくれた。
そして、そこで見たダイカイギュウの姿はと言うと……
「丸い……と言うよりも、デカいな」
「流石にジークが倒したドラゴン程ではないですけど、それでもなかなかお目にかかることの出来ないくらい大きな魔物ですね」
俺たちが思っていた以上に大きかった。
(なんか、まんまマナティーを大きくしたみたいな生き物だな……と言うか、ダイカイギュウとかいうマナティーの仲間がいたような気がするけど、それが魔物になった感じか?)
俺たちの真下にいたのは体長が十mくらいで、額に数十cm程の長さの角を持つ魔物だった。パッと見は大きなアザラシの姿にも見えるが、顔の形が違うし、後ろ脚ではなくうちわのような形の尾びれが付いているので、記憶にある中ではダイカイギュウはマナティーに近い形をしている。
そんなダイカイギュウは、橋の上からまた人が覗き込んでいるのに気が付いたのか、顔を俺たちの方へと向けて……何故か胸びれでお腹を叩き始めた。
「宿で寝っ転がっている時のおっさんみたいだな」
「そうだな……って、俺、あんなことしていたのか⁉ マジで? 気が付かなかったんだけど?」
「やってましたよ……ていうか、自覚なかったんですね」
そんなことを三人で話していると、
「えっ? 何で?」
何故かオネエさんたちが驚いていた。
「何を驚いているんだ? あの行動に、何か意味があるのか?」
おっさんと違って、何かしらの意味はあるんだろうよ……と言いかけたが、オネエさんが何か言いそうだったので黙っていると、
「ダイカイギュウのあの行動は、仲間を呼ぶ時にするものなのよ。ただ、同じダイカイギュウ同士でが仲間と認めた相手にしか使わないし、さっきまで見ていた私たちには使わなかったわ」
などと言い出した。そして、
「なあ、おっさん……何でそこで俺を見ているんだ? それに、チーにアリアとアリスも」
一斉に四人の視線が俺に向けられ、それに釣られるようにしてオネエさんたちの視線も向けられてきた。
「いや、今の話だと、さっきまでここに居なかった奴らの中の誰かに向けられたものだろうし、そうなると一番可能性が高いのはジークかな……って思ってな」
代表するようにおっさんが答えると、残りの三人も同意するように頷いていた。
「いや、俺と決まったわけじゃ……」
そう言いながら下を覗くと、またしてもダイカイギュウは俺を見つめながら腹を叩いた。それにしても、よく響く音だ……音が聞こえるたびに魔力を感じるので、あれは何かしらの魔法のようなもので音を出しているのかもしれない。
「おめでとう、ジーク。お前は、晴れてダイカイギュウの仲間と認められたわけだ」
何がおめでとうなのか分からないが、おっさんの言う通りあのダイカイギュウは、俺に助けを求めているみたいだった。
「なあ……えっと……」
「ローズよ」
「ローズさん、あのダイカイギュウが泳ぐことが出来そうな場所まで、どれくらいの距離がありますか?」
ローズと名乗ったオネエさんに質問すると、ローズさんは驚いた顔をしながらも、百mくらい先ならギリギリ泳ぐことが出来そうだと教えてくれた。
(上から見ただけでも、大人が数人手を広げたくらいの胴回りがあるが……行けるか?)
重さは分からないが、長さは大型トラック並にある。
そんな生き物を百mも移動させようとしたら、どれほどの魔力が必要になるか分からないが……それはまあ、やり方次第だろう。
「とにかく、近くで見ないことには始まらないか」
そう思って、俺はアラクネの糸を橋の欄干に引っかけて、ダイカイギュウの上に降りた。
(細かい傷は多いが、ほとんどが皮を少し切ったくらいの深さみたいだな。血が滲んでいる傷も、皮の下の脂肪で止まっているな)
これなら傷に関してはさほど心配する必要はなさそうだ。それよりも、自ら出ている部分の乾燥の方が気になる。
どれくらいの効果があるか分からないが、とりあえず水魔法でダイカイギュウの体を濡らすと、ダイカイギュウは気持ちよさそうな顔をし始めた。
「これで定期的に体を濡らせば、乾燥によるダメージは防げそうだな。後は……」
どうやって百m先まで運ぶかだが、一応考えていることはある。ただ、場合によっては犯罪行為になりかねないので、その辺りのことを確かめなければならない。
俺は一度橋の上に戻ってローズさんに考えていることを話すと、
「川の地形を変えたとしても困るのはこの辺りで釣りをする人くらいだから、元に近い状態に戻すというのなら大丈夫だと思うけど……出来るの?」
「多分ですけど、技術的には難しいことではないですし、問題があるとすればどれくらいの魔力が必要になるか分からないと言ったところですが……これでも、魔力量に関してはそれなりに自信がありますので」
そう言うと、ローズさんや他の男性たちは半信半疑と言う顔で俺を見ていたが、俺の正体を知っているおっさんと、それなりに付き合いの長いチーは呆れたような顔をしていた。
おっさんたちは気にしないことにして、俺はまたダイカイギュウの上に戻った。そして、
「まずは足場だな」
土魔法でダイカイギュウの横に足場を作った。足場は水面から一m程の高さで、長さが十m幅は五十cm程のものだ。
この足場が出来ると同時に、ダイカイギュウは水に沈んだ。つまり、足場に使った材料は、ダイカイギュウの真下にあった土や岩なのだ。
ただ、これでもダイカイギュウの体がギリギリ水面の下にあるくらいなので、泳がせるにはもっと深くしないといけないようだ。
(でも、これなら魔力は持ちそうだな)
今作った足場の幅を倍くらいにすれば、ダイカイギュウが泳げるくらいの深さを確保できるだろう。それに、幅が広くなれば歩きやすくもなる。
そんな感じで、ダイカイギュウの体長分を一回として、同じような作業を十五回繰り返した。
予定よりも六回分多かったが、それでも魔力にはまだまだ余裕があるので誤差の範囲内だ。
最後の足場を作ると、ダイカイギュウは水底を深くしなくても泳げるようになったようで、元気に……泳ぎ去るのかと思ったら、何故かラッコのように仰向けになって水面に浮かび、両方の胸鰭を使ってお腹を叩きながら流れて行った。もしかすると、ダイカイギュウにとって感謝を示す行動なのかもしれない。
俺はしばらくの間、お腹を叩きながら流れていくダイカイギュウを見送った後で、百m以上ある足場を壊しながら橋のところまで戻った……のだが、おっさんたちやローズさんたちはダイカイギュウに合わせて移動していたので、俺は橋の上に戻ってからまた移動しなければならなかった。