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黒のジーク 《書籍版発売中》  作者: ケンイチ
第二章
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第十七話

「これで終わりだな……『ダインスレイヴ』!」


 ゴーレムはダインスレイヴの気配を察知したのか、その場から逃げ出そうとした。だが、腕は肩と肘から先を無くし、脚は片方が大破、もう片方が中破と言える程のダメージをゴーレムは受けているので、正確には逃げ出そうとしたのではないか? と感じたくらいのわずかな動きだったが……もし仮に足が十分に動く状態だったとしても、懐に入られた時点でゴーレムは、


「喰らえ、ダインスレイヴ」


 俺とダインスレイヴの()()になるしかないのだ。

 剣状態のダインスレイヴは、ゴーレムの胴体部に露出していた金属のような塊……魔核を簡単に貫いた。その瞬間、


(ヤバっ……これ、()()()()()()!)


 これまでとは段違い……それこそ、俺に流れ込んできているのは、あのソウルイーターと戦った後で学園の地下にあった以上の魔力だ。まあ、あの時は全てを吸い取る時間が惜しかったの途中で切り上げたが、今は強制的に流れ込んできている。

 

(くそ……が!)


 あと少しでゴーレムの魔力を全て喰うことが出来そうだが、これ以上は俺の体が持ちそうにない。

 そこで、


「ふっ!」


 突き刺していたダインスレイヴに力を込めて、魔核を真っ二つにした。すると、流れ込んできた魔力は途絶え、ゴーレムは二つに分かれた魔核のようなもの残して砂に変わった。


(これは間違いなく、ダンジョン核だよな……期せずして、目標達成と言うわけか)


 砂の中に埋もれたダンジョン核と思われるものを拾い眺めていると、


「ジーク、大丈夫か?」


 おっさんが少し慌てた様子で走って来た。


「ああ、怪我一つないぞ。それより、これを見てくれ」


「いや、怪我よりもあんな魔法二つも使って……って、本当に大丈夫そうだな、とっ!」


 おっさんに向かってダンジョン核を両方投げ渡すと、慌てながらもおっさんは別方向に飛んだダンジョン核をどちらも落とすことなく掴んだ。そして、


「おいおいおい! マジか! あのゴーレム、思っていた以上のバケモンじゃねぇか!」


 ダンジョン核が移動用にゴーレムの体を作ったのか、ゴーレムがダンジョン核を吸収したのかは分からないが、あのゴーレムはダンジョンそのものと言える存在であり、まさに動く災害と表現してもおかしくない化け物だ。


(まあ、そんなことよりも……)


「おい、ジーク?」


 俺には先にやらなければならないことがあるので、興奮するおっさんを放って森に向かった。


「チー、悪いけどカロンを置いて、少し離れていてくれ。ああ大丈夫、殺しはしないから」


 チーが逃げ込んだ方に向かうと、案の定チーはゴーレムが見える位置で身を隠していた。そして都合の良いことに、カロンに背後を見せるのは危険だと判断していたらしく、カロンもゴーレムが見えるところに置かれていた。


「あ、ああ、分かった。私はフリックが心配だから、そっちの様子を見てくるよ」


「すまん、フリックは倒れていたところの近くで一番大きな木の下にいるからな」


 そう教えると、チーはすごい勢いで俺から離れて行った。


「さて、と……なあ、カロン……さっきの()()見てたよな?」


 しゃがんで目線をカロンに合わせて聞くと、カロンは目を大きく開きながら首を何度も縦に振っていた。


「お前はサマンサさんを大したことがないとでもいう風に言っていたが……あの程度の奴なら、サマンサさんは俺よりももっと上手く屠るぞ。俺の方が派手に見えたかもしれないがな。だからな……分不相応な夢を見るのは構わないが、今代の黒になり(サマンサさんを超え)たいのなら、最低限あれくらい出来るようになってから言えよ……な?」


 そう言って睨みつけると、カロンは口から泡を吹いて気絶した。ちょっと強めに殺気を向けただけでこれなら、こいつはサマンサさんを超えるどころか、これから先その領域に足を踏み入れることすら出来ないだろう。


 カロンを引きずっておっさんのところに戻ると……おっさんが変だった。いや、変身していた。


「おっさん、何遊んでいるんだ?」


「いや、まあ……その、なんだ。何となくだ」


 おっさんは、何となくと言っているが、あんな格好は、何となくでするものではないと思う。

 今のおっさんは、バイクのフルフェイスのヘルメットのような兜を装着し、さらにはライダースーツのような服に着替えているのだ。

 前の世界なら(森の中ということを除けば)特におかしくはない格好だが、この世界では異質な格好だと言えるだろう。その証拠に、親衛隊長はかなり警戒した様子(もっとも、クレアは興味深そうに見ていた)でさっきよりも距離を取っていた。


「さっさと着替えろよ」

「分かっている……ふんっ!」


 おっさんが気合を入れると、おっさんのヘルメットとライダースーツがフッと消えた。


「『神具』か……おっさんも使えたんだな」

「まあな」

「でも、神具ならそこまで気合を入れなくても消せるだろ? おっさんは違うのか?」


 俺はダインスレイヴの名前を呼んで出すこともあるが、実際のところ神具を出現させたり消したりするのに名前を呼ぶ必要はない。まあ、神具は正式名称である『精神具現化武具』に入っている通り精神に大きく関係している武器なので、自分のやりやすいと思うやり方で出現させた方がいいとされている……が、消すのに名前を叫んだり気合を入れる必要は無いはずだ。

 ちなみに俺の場合、ダインスレイヴを出したままガウェインに気絶させられた時は勝手に消えたらしいので、もしかすると個人差があるのかもしれない。

 そう思ったのだが、


「……何となくだ」


 おっさんが気合を入れたのは、単に格好を付けたかっただけのようだ。


「とりあえず、チーはフリックのところに行かせたから、俺が代わりにこいつを連れて来たぞ。それで、やっぱりそれはダンジョン核で間違いなさそうか?」


「俺もニ~三度しか見たことがないし、ゴーレムと一体化していたと言うのは聞いたことも無いから断言はできないが、まず間違いないだろう」


 そこでおっさんは一度言葉を切って、さり気なく親衛隊長の位置を確認してから、


「これでジュノーの依頼も完了だな。しかも、こちらの都合の良い感じにな。向こうとしても、ダンジョン核を破壊したと分かれば何か言ってくるかもしれんが、元はあちらの馬鹿が喰われて地上まで来るようになってしまったからな。あのままだとゴーレムは地上を徘徊してこの周辺の生態系を大きく狂わせることになっただろうし、スタッツの街までやって来ることも考えられたからな。あのクラスの魔物になったら、追い返すのなら最低でもフリックレベルの冒険者を数人、倒すなら数十人は集めないと難しいだろうな。しかも、あのゴーレムは食ったら強くなる性質を持っていたから、場合によっては多くの犠牲を覚悟しての総力戦になるかもしれん」


 それが分かればうるさくは言わないだろうと、おっさんは笑っていたが……


「もしかして、わざと一人喰わせたんじゃないだろうな?」


 ある疑問が浮かんだのでそう聞くと、おっさんはニヤっと笑っただけで何も言わなかった。まあ、喰われたのは裏切者だし、あのままだと邪魔になるのは間違いないので、例え喰われて強くなられても勝てる算段があるのなら、俺でも同じことをするだろう。


「まあ、いいや。とにかく、フリックの怪我次第では、数日はここに滞在するかもしれない……」

「それなら、私が治しましょう! 生きていれば大抵の怪我は治せる自信があります!」


「うおっ! どこから湧いて出た!」


 おっさんと話していると、いきなりクレアがおっさんの背後から現れた。

 位置的に俺からは丸見えだったが、おっさんはいきなり死角から現れたクレアに驚き変な声を出していたが……おっさん程になればクレアの接近に気が付きそうなものなのに、何故気が付かなかったのだろうという疑問が湧いた。まあ、今はそれよりも、


「それじゃあクレア、頼めるか? フリックや騎士たちは、向こうにいるはずだ。もしかすると、一人ずつチーが運んでいる最中かもしれない」

「は~い! いってきま~す!」


 クレアは俺が指差した方角を確認すると、片手をあげながら小走りにフリックたちの方へと向かって行った。


「あ~……何て言うか、聖女に懐かれてるな」

「自分に媚びを売らない同年代が珍しいんだろうよ」


 それだけではあの犬のようなクレアの説明には足りない気がするが、今のところそれ以外に思いつかない。


「そろそろいいか? こちらとしても、あのゴーレムについて聞きたいことがある」


 クレアが離れたのを確認してからなのか、今度は親衛隊長が近づいてきた。


「おっさん、説明は任せたぞ。俺は少し疲れた」

「ああ、まあ、あれだけのことをすればそれは当然だな。この辺りはあのゴーレムのせいで魔物が散ったみたいだから、しばらくは安全だろう。寝るなりなんなりして体を休めるといい……いいよな?」

「あ、ああ……」


 何か言いたそうにしていた親衛隊長に対し、おっさんは笑顔で圧力をかけて黙らせた。

 そのおかげで、俺はあの場での状況説明から逃れることが出来たのだが……


「ジークさん、怪我人は皆無事です! それでですね……お腹がすきました!」


 今度は仕事を終えたクレアが俺の元に戻ってきて、食事をねだって来た。

 疲れているからと断ろうとしたが、クレアはそれでも引き下がりそうになかったので、仕方なくバッグに残っていた食事を渡すしかなかった……そのせいで後で食べようと思っていた料理がなくなってしまった。

 食事を渡すとクレアは大人しく俺の言うことを聞いて離れて行ったので、ようやく横になることが出来たのだが……


「また地震!?」


 三度目の地震で、寝る暇などなくなってしまった。


「おっさん!」

「ジーク! 次が出てくるかもしれん、気を付けろ!」


 そう言うとおっさんはまた神具を展開して、臨戦態勢を取っていた。その横では、親衛隊長がクレアを庇うようにして剣を抜いており、離れたところでは女性騎士が仲間の騎士と共に身柄を確保した裏切者たちを守っていた。


 俺はほったらかしにしていたカロンを……と思ったが、そちらは戻って来たチーとフリックが確保していた。

 フリックはクレアの魔法のおかげか、もう歩けるくらいまで回復していたが、それでもまだふらついているので体力の方は戻っていないようだ。あの様子では、敵が現れた時に対応するのは難しいだろう。


(仕方が無いか)


 なので俺は、ダンジョンの入り口と二人の間に立って事態に備えたが……三度目の地震から数分が過ぎても、二度目の時のように敵が現れることは無かった。


(あの地震は、たまたま起こっただけなのか?)


 一向に変化が起こらないのでそう考えていると、


「ジーク、チー、フリック、俺は少し辺りの様子を見てくる! お前たちはその場で待機! もし何かあれば知らせるが、場合によってはそいつを担いでスタッツまで退却しろ!」


 おっさんは俺たちに指示を出した後で、神具を纏ったままダンジョンの入り口の方へと向かって行った。

 おっさんの指示にスタッツまでの退却とあったが、その時は当然クレアと親衛隊を置いて行くことになるし、場合によっては満足に動けないフリックも置き去りにしなければならないだろう。


 その指示が出た時にフリックのいる方に視線を向けたが、視線に気づいたフリックは当然という感じで頷いていたのに対し、チーの方は複雑そうな顔をしていた。

 フリックは今回の事件で何を優先するか分かっていて、今の自分が一番の足手まといということを理解しているようだが、チーはそこまで割り切れていないようだ。それに、俺の強さを知ったことで、何かあった時は俺が時間を稼げば大丈夫だと思っているのかもしれない。まあ、数日の付き合いの俺(しかも、ギルド長のせいで敵対関係に近い相手だと考えていたかもしれない)と、同業者として付き合いが長そうでそれなりに親しそうなフリックとでは、どちらを優先したいかと言われれば比べるまでもないだろう。


 そんなおっさんのせいで、俺たちの空気がちょっと悪くなった気がしたが……結局おっさんの調査では新たな敵の形跡や怪しいものは発見されず、とりあえず指示は撤回されることになった。


「とりあえず、一旦この場所から離れるぞ。ゴーレムが現れることは無かったが、ダンジョンの中にいたゴブリンが地震の影響で外に出てくる可能性はあるからな」


 中にいたゴブリンでは俺たちの脅威にはならないし、この辺りに生息している魔物や獣も大したことは無いが、それでも無用な戦闘はなるべく避けるという判断は当然のことだ。

 そんなおっさんの判断に親衛隊長は何も言わなかったが、親衛隊の裏切者は自分たちだけで管理すると言って譲らなかった。


(聖国の弱みを、これ以上俺たちに掴まれたくはないというところかな?)


 そう思っておっさんに視線を向けると、おっさんも同じことを考えていたようで、俺の視線に気が付いたおっさんが軽く頷いていたが……まだ神具を纏ったままだったので、表情までは分からなかった。

 おっさんが神具を纏ったままなのは、多分まだ完全に油断できる状況ではないから、安全な場所に移動するまであのままでいるつもりなのだろう……が、


(おっさん、来る時以上に感覚が鋭くなっていないか?)


 安全な場所を探して移動している最中、おっさんは誰よりも早く周辺の異変を察知していた。まあ、異変と言っても、本当に小さな音にいち早く反応していたというくらいだったが、時折立ち止まっておっさんのかなり後ろを歩いていた親衛隊長の方を気にしているような感じがしたので、もしかするとあの神具は感覚を強化する効果があるのかもしれない。


「ん? どうした、ジーク?」


 今も、後ろを見ていなかったのに俺のちょっとした変化に気が付いている。


「いや、どこまで歩くのか気になっただけだ」


 ゴーレムを倒したところから三十分も歩いていないが、これ以上進んでも大して安全な場所があるとは思えない。それに、休憩場所を確保するだけならフリックたちが待機していた場所でもよかったはずだ。


「ジーク、もうちょっとこっちに来い」


 そう言っておっさんが手招きするので近寄ると、


「もう少し、あの連中を歩かせておきたい。ジークの強さを見た後だから無いとは思うが、今回の失態を隠す為にあいつらが俺たちを襲わないとは限らないからな。怪我なら聖女の魔法でどうにかなるだろうが、疲労に関してはそうもいかないはずだからな」


 という理由があってのことだそうだ。だが、


「それは別にかまわないが、そのせいでフリックにもかなりの負担がかかっていると思うぞ」


 俺とおっさんとチーはともかく、死にかけたフリックにとっても苦行だろう。


「それは分かっている……と言うか、フリックには真っ先に話している」


 フリックはその話を聞いて、いざという時は置いて行っても構わないと答えたそうだ。かなり厳しいだろうが、置いて行かれたとしてもここからなら今の状態でも生きて帰ることは可能だと思っているらしい。


「だとしても、いい加減なところで止めないと流石に怪しまれるぞ」


「分かっている。もう少し進んだところに、休憩できる場所があるはずだ。もっとも、地図の上での話だがな」


 一応おっさんも怪しまれる可能性を考慮して、目的地は決めていたとのことだ。まあ、話によると昔使われていた山越えの道の途中にある野営地跡なのだそうだが、その道が使われていたのは数十年前とのことで、もしかすると今は使えない可能性があるとのことだった。


 使えなかったら、フリックだけでなく俺も困るんだが……と思いながら、大人しくおっさんについていくと、


「……まあ、何とか使えそうだな。井戸の方は……完全に埋まっているな」


 一応、広場らしいところは見つかり、おっさんの言う通り何とか野営地として使えそうではあるが、かなり草木が茂っていて、正直言ってこれなら別にここでなくてもよかったのではないかという感じだった。


「あ~……まあ、こんなこともあるだろうな。だがそれでも、森の中よりも木は細いし草も多くはない。この場所の方が森よりも安全と言えば安全だろう」


 おっさんは少しバツが悪そうに、頭を掻きながらそんなことを言っていた。

 確かにおっさんの言う通り、使われていたのが数十年前とは言え、地面が踏み慣らされていたおかげで草木の成長が森の中と比べて少し悪いし、起伏も少ないのでマシとは言えるだろう。


「よし、まずは今日の寝床を整えようか! あちらはあちらでやるから、俺たちのところだけ……そうだな、この辺りの草を刈って、テントを一つとかまどを一つと、後は数人が寝転べるくらいの広さがあったらいいだろう。それと夜間の見張りだが、基本は二人一組で回すが怪我人のフリックは今日のところは免除にしたい。ただし、明日からは普通に参加させる。いいな?」


 フリックの怪我自体はクレアに治してもらっているので、後は体力が回復すればいいので今日は休ませたいということだった。これにフリックは申し訳なさそうにしていたが、俺とチーが反対しなかったので免除が決定した。


「最初の担当はチーとジークで、次がチーと俺、最後が俺とジークだ。整地が終わった後で、夕食までチーは寝ててもいいぞ」

「それだったら、おっさんも寝てたらいい。どうせ夕食は俺が作るんだろ? なら、整地の後はおっさんもすることが無いんじゃないか?」

「ああ、バルトロさん、そうした方がいい。今の俺でも、カロンの見張りくらいは出来る」

「ん? ……なら、お言葉に甘えさせてもらうとするか」


 俺の提案にフリックも同意したので、おっさんも少し休憩をとることになった。ただ、俺の負担だけは変わらないので、明日以降で返してもらうとしよう。それに、少し考えていることもあるし。


 そうして今日の野営の話し合いを終えた俺たちは、手早く草を刈って場所を確保すると、かまどを作ってテントを張った。


「バルトロさん、本当にカロンはあれでいいのかな?」


 捕らえたカロンは一度猿ぐつわを外して水を飲ませた後、近くの木に厳重に縛り付けておいた。


「まあ、大丈夫だろ。あいつはもう逃げ出す気力も無いみたいだしな」

「ああ、もし逃げたとしても、俺が地の果てまでも追いかけて捕まえるから大丈夫だ……分かっているよな、カロン?」


 チーの疑問に答えたおっさんに続いて、俺がカロンに言い聞かせながら言うと、カロンは震えながら首を縦に振っていた。


「だとさ。何かあればジークに頼めばいいみたいだ」


 そう言うことで、カロンの責任者となった俺だが、すでに力の差は見せつけているし、カロン自身は逆らう気はないようなのでそこまで苦労することは無いと思う。あるとすれば、親衛隊がどう動くかというところだが……あちらも怪我人で手一杯のようだし、俺の力も見ているはずなので襲い掛かってくる可能性は低いだろう。それに、


「今日は何を作るんですか?」


 何故かクレアが俺に懐いているので、クレアを敬愛しているらしい親衛隊長は俺たちに手を出しにくいはずだ。


 その後、食事をねだりに来たクレアは女性騎士に連れ戻されたので、おっさんの飯が減らずにすんだのだった。

 そして、


「ジーク、交代だ」


 問題なく食事も終わり、早くも一回目の見張りの交代時間になった。


「それじゃあ、時間になったら起こしてくれ」


 声をかけて来たおっさんにそう頼むと、俺はテントに入って横になった。そしてしばらくして、


(そろそろ仕掛けてみるか……)


 こっそりとテントを抜け出した。その際、離れたところからおっさんとチーの様子を窺ったが、俺がテントを抜け出したことに気が付いているようには見えなかった。


 そしてしばらく森の中を歩き続けて、


「『シャドウ・ストリング』……動くな」


 俺の後を付けていた人物の動きを封じ、背中と首筋にナイフを突き立てた。

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