第六話
三話投稿の三話目です。
「ほう……つまりここに、ジュノーがバルトロを連れて乗り込んでくるということかい?」
「いや、どちらかというと逆で、ギルド長がおっさんに連れられてくるって感じだな」
「何だ、バルトロが言い出したことなのかい。まあ、それならさほど警戒する必要はないかもしれないね。それにしても……ジュノーも昔ほどの冴えは無くなったのかねぇ? ギルド長になったばかりの頃のジュノーなら、間違いなく自分から乗り込んできて、直接私たちをけん制しようと考えただろうね。その上でジークを引き込もうとしたはずだ」
「そうですね。立場が人を育てるという言葉がありますが、その反対に鈍らせることもあるということでしょう」
先に娼館に戻ってばあさんにおっさんたちが来ることを伝えると、何故か娼館の入り口を入ってからすぐの外からも見えるところで、ばあさんはモニカさんとお茶を飲んでいた。
俺の報告を聞くとばあさんはすぐに場を準備すると言ったので、俺がおっさんたちを呼びに行こうとしたのだが止められて、その場で簡単な招待状を書いて黒服の一人に渡してギルドに向かわせた。
あれでは目立ちすぎないかと思ったが、あの方がどこから見てもばあさんの使いだと分かるので、すぐにギルド長に手紙が渡るということらしい。
確かに黒服の男が手紙を持っていけば、受け取った職員はギルド長に説明しやすいだろうが、ばあさんの店の制服はそこまで特徴があるものではないので、もしかすると後回しにされてしまうのではないかとも思った。
「さて、他の準備もするかね。皆、今日は急だけど店は休みだよ! その代わり、いつもとは違う客をもてなさなきゃならないから、ちょっと手伝っておくれ!」
ばあさんがそう言うと、隠れてこちらの様子を見ていた店の従業員たちがわらわらと出てきて、ばあさんの指示に従って準備を始めた。
今からギルド長達が来たとしても、夜の営業には十分間に合う気がするが、いつもとは違う特別な客ということで気合を入れてもてなす為のようだ。もっとも、そのもてなし方は普通の客に対するものとはかなり違うみたいだが、あの二人相手ならそれは仕方がないだろう。
俺も準備を手伝おうかと思い声をかけたが、従業員たちからそれには及ばないから二人の相手をしていてくれと言われたので、大人しく二人と一緒にお茶を飲むことになった。
お茶を飲んでいる間、俺は二人の愚痴に付き合わされる羽目になり、その中でいかにギルド長が悪い奴で、おっさんがいい加減な奴かを聞かされた。
おっさんに関しては、会うたびにいつも酔っぱらっているかそれに近いテンションをしているので、二人の言いたいことは分かったのだが、ギルド長に関しては直接会って話したのは今日が初めてだったので、適当に頷くしか出来なかった。まあ、その初めて話した時の印象がかなり悪かったので、嫌な奴だというところはよく理解できた。
「ん? 準備が出来たようだね。そろそろジュノーたちも来るだろうし、私たちも席を移そうかね」
ばあさんがそう言って立ち上がったので一緒に店の中に入ると、いくつものイスとテーブルが置かれていたはずの大部屋はいつもとは違いがらんとしていて、その中央部分に一つのテーブルと五つの椅子が置かれているだけの状態だった。
「ご苦労だったね。それとついでに、誰かいつものお得意様たちのところに行って、今日は休みだと伝えて来ておくれ。それと、その中でも特別なお客様には今回のことを軽くでいいから教えて、詳しい話は後日私が直接話すからと伝えてくれないかい? あと、表に本日臨時休業の看板を出すのも忘れずにね」
ばあさんはそう言うと一人の従業員を手招きして呼び寄せ、小さな袋を渡していた。渡したのはお金のようで、渡された従業員が皆に配ると歓声があがっていた。
それからしばらくして、
「せめて、出迎えは綺麗なおねえちゃんにして欲しかったな~……ここに来たのに出迎えたのがいかつい黒服の男じゃ、せっかくの雰囲気が台無しだ~」
娼館に、おっさんの間の抜けた声が響いた。
「あんたらに、うちの綺麗どころはもったいないだろう? それに、あんたの言ういかつい黒服の男も私の可愛い子だよ……ジークと一緒でね」
「そりゃ失敬」
おっさんの軽口を聞いたばあさんが鋭い目で睨みつけながら言うと、おっさんは素直に頭を下げた。
ばあさんは一応おっさんの謝罪を受け入れていたが顔は笑っておらず、おっさんの方は笑ってはいるものの周囲への警戒は怠っていないようだ。
そんな二人とギルド長は鋭い視線で見ており、モニカさんは二人を見ているギルド長から視線を外さなかった。
正直言って、かなり雰囲気は悪い。
おっさんは周囲を警戒しているだけだからましなのだが、他の三人は初っ端からかなりの敵意を向けている。まあ、それが演技か本物なのかまでは分からないが、そんな険悪な雰囲気の中で、ばあさんとモニカさんの間の席に座らされている俺の身にもなってもらいたい。
「さて、今回の不始末、ギルドはどう責任を取るつもりかねぇ?」
そうばあさんが切り出すと、
「私はギルドに所属している者に不正の疑惑が出た為、呼び出して確認しようとしただけだ」
と、ギルド長は答えた。すると、
「その不正疑惑の元は、孤児院が直接出した依頼をこなしている最中に、ジークがたまたま遭遇して解決したもので、しかもわざわざ善意でギルドに報告したというのに、あんたたちが勝手に騒いだものだろう? 冒険者が自分のランクに見合っていないものを狩るのも、依頼主からギルドを通さない依頼を受けるのも、冒険者ギルドの掲げる規約に違反していないはずだ」
今度はモニカさんがギルド長を睨みつけながら言った。
「それでも、二つ星の冒険者が単独でコボルトリーダーの率いる群れを狩るなど、怪しいところだらけではないか! ならば、疑惑が出た時点で対処するのは、ギルドとして当然のことだ」
「それがおかしいんだよ。確かに二つ星がコボルトリーダーを単独で狩ったといった例は、確かにこの街ではないかもしれないが、似たようなものならそこのバルトロも経験したことがあるはずだ」
「確か、冬眠に失敗した熊の魔物を一年目のころに狩ってきて、かなりの騒ぎになっていたね。あれでバルトロの名が近隣に知れ渡ったはずだ」
俺はまだ熊の魔物に出会ったことは無いが、かなり危険な存在だと聞いているので、それを一年目の新人が倒したとなったら騒ぎになるのは当然だろう。
そう思いながらおっさんを見ると、おっさんはいきなり持ち上げられて照れていた。
「危険度的にはコボルトリーダーよりも熊の魔物の方が高いだろし、ジークが狩ったのが群れだったことを加味しても、いいとこ同等程度くらいなものではないのかい? なら、ジークのやったことは珍しいことではあっても、全く例がないと言う程ではないということになる。なら、あんたのジークへの対応は、ギルドの記録……つまりは、バルトロの記録を認めていないことになるね」
「勘違いしているようだが、私はジークがコボルトリーダーを倒したことを否定しているわけではない」
「でも疑ってはいて、呼び寄せて強引に真相を聞き出そうとはした。実の兄の時には、率先して功績を宣伝していたのにね」
ギルド長の反論に対し、ばあさんはおっさんの実例を使いながら攻めていた。ただでさえギルド長はばあさんに押され気味だというのに、そこにモニカさんの援護が入るので、傍から見ると完全に勝ち目が無いように見える。
そんな舌戦を繰り広げている三人をしり目に、俺とおっさんはと言うと……
(ジーク、それ俺にも少し分けてくれ)
(自分の分は食っただろうが、ギルド長の分を食え)
(食ったら後で怒られるだろうが)
などと小声で話しながら、テーブルに置かれているお菓子を食っていた。まあ、時折ばあさんたちから鋭い目を向けられているので完全にバレているが、俺に昔の例などを出されても知っているはずがないし、おっさんもギルド長の側に座っているというのに大して興味が無いようだった。
そんな俺とおっさんの態度に最初に切れたのは、
「バルトロ、お前は何のためにここに居るんだ!」
ギルド長だった。おっさんはギルド長の兄ということだが、ギルド長としての立場があるからか呼び捨てにしている。
「いや、俺が口を出してもややこしくなるだけだしな。それに、よく考えてみろよ。俺とジークは同じような立ち位置なんだから、ジークたちになんやかんやいうことは出来ないしな。そもそも、俺はギルドの職員ではなく、ジークの同業者だからな。注意や助言なんかは出来ても、命令する権利なんてないしな」
と、逆にギルド長に対して少し馬鹿にした口調で反論していた。
これには俺もばあさんもモニカさんも驚いたが、それよりもギルド長の方が驚きは大きかったようで、口を開けて絶句していた。
「そもそも、俺はジュノーの部下ではないから、ギルド長として二人と言い争っているお前を助けるつもりはない。むしろ、ジークと同じ冒険者としては、ギルド長のやっていることはやり過ぎだと思っているくらいだ」
おっさんはそう言いながら、ギルド長の目をまっすぐ見つめた後で、何故か一瞬俺を見た。
「ジュノー……お前、聖女のお願い以外に、何を隠している? そしてそれに、何故ジークを巻き込もうとしている?」
おっさんの言葉に、今度はばあさんとモニカさんが驚いておっさんを見ていた。俺は……まあ、ろくでもないことに巻き込まれそうだと感じていたので、今更のことだと思っていた。
「お前が聖女から……と言うか、聖国から何かしらの依頼を受けているのは知っているが、他にも何かあるんだろう? 多分、この街に関わるようなことを」
「な、何故……」
「俺はお前の兄貴だぞ。確かにお前は俺よりも頭はいいが、何か隠していることくらいすぐ分かる。多分、ろくでもないことを聖国から言われたんだと思うが……さっさとはいちまえ」
ギルド長はおっさんに言われても黙ったままだったが、
「しゃべらないということは、本当にろくでもないことなんだろうね……もしかして、私とモニカを排除して、この街の支配者にでもなるつもりなのかい?」
「だとすれば、すぐにでも戦う準備をしないといけませんね……その前に、ここから脱出する方が先でしょうか?」
モニカさんがそう言うと、ギルド長がおっさんを見たが……
「戦うというのなら、俺は降参する」
おっさんは両手を上げて戦う意志がないことを示した。
「バルトロ!」
ギルド長は椅子から立ち上がって、すぐに俺たちから距離を取ったが、動かないおっさんに苛立った様子で怒鳴っていた。
「とてもじゃないが、この状態でジークから逃げられるとは思えない。素直に捕まるから、俺とジュノーの命は保障してくれ」
ばあさんとモニカさんは、おっさんの言葉を疑っていたが、おっさんの額に脂汗が滲んでいるのを見て俺が何かしたと気が付いたようだ。ただ、ギルド長の位置からはおっさんの表情が見えていないせいで、何が起こっているのか分かっていないようだった。
「くっ!」
「動くな、ジュノー! すでに、勝負はついている! 無駄な抵抗をするな!」
その為、逃げるのか反撃すかまでは分からないが、ギルド長は何かしらの動きを見せようとしていたが、おっさんに怒鳴られて硬直したように動かなくなった。
「ジーク、抵抗はしないから、脚に絡みついているものを解いてくれないか?」
おっさんがそう言った瞬間、ばあさんとモニカさんが椅子の下を覗き込み、
「何だい、これ?」
「黒い紐……見たことも無い魔法ね」
おっさんの脚に絡まっているシャドウ・ストリングを、揃って不思議そうに見ていた。
「解放した瞬間、襲ってこないという保証は?」
「あるとは言えないが……襲い掛かったとしても、ジークを仕留めることが出来るとは思えないからな。出来てばあさんかモニカのどちらかだろう。襲い掛かっておいてどちらかを逃がせば、冒険者ギルドは終わりだ」
もしここでおっさんが襲い掛かってきたとしても、返り討ちは可能だ。まあ、ギルド長がどれほどの実力者かによっては、ばあさんかモニカさんのどちらかが犠牲になる可能性もあるが……ダインスレイヴを使用しての短期決戦なら、二人を無傷でとはいかないだろうが助け出すことは出来る。
「それにな、ジュノーが冒険者ギルドを守る義務があるように、俺にも同僚や後輩の冒険者を守る義務がある。これは場合によっては、ジュノーよりも優先しなければいけないことだ」
おっさんがギルド長の行動が義務からと言ったということは、相応の理由があるのだろう。
「ジーク、放してやりな。何かあったとしても、あんたならバルトロとジュノーを敵に回しながらでも、モニカ一人くらいならここから連れて逃げ出すことは可能だろう?」
ばあさんもおっさんの言葉から何かしらの理由があってのことだと判断したようだ。ただ、最悪の場合は自分を見捨てて、モニカさんを優先するようにと言った。多分、その判断は正しいだろう。モニカさんだけが犠牲になれば、スラムの人たちはこちらと足並みをそろえるどころか、俺たちも敵とみなして攻撃を仕掛けてくるかもしれないが、犠牲になったのがばあさんの場合、裏社会の代表が他の人に変わるだけだ。
なら、どちらの方が重要かは簡単に分かることだ。しかし、
「それなら理由を聞き出すまで、どちらかの手足の骨を折っておいた方がよくないか? 少なくともおっさんの両脚を砕いておけば、そんな心配は無くなると思うぞ」
他にも簡単な方法はあることも事実だ。しかも、俺たちに被害が出る可能性が一番低い。
だがこの方法は、冒険者ギルドの反感を確実に買ってしまうだろう。まあ、例え反感を買ったとしても、向こうの最大戦力が簡単に無力化されたというのは、かなりの影響を与えることは間違いないだろう。
そう言って椅子から立ち上がりおっさんを睨みつけると、俺が脅しではなく本気でそう思っているのが伝わったのかおっさんとギルド長の顔色はさらに悪くなった……が、
「ジーク! いい加減にしな!」
ばあさんが本気で怒鳴ったので、渋々ながら俺はおっさんを解放した。
「はぁ~マジでビビった……久々に死ぬかと覚悟したわ……」
「さて、バルトロもジュノーもジークが本気だと分かったところで、何が原因でこうなったのかを話してもらおうかい? ジュノー……まさかあんたに拒否権があるとは思っていないよね?」
おっさんが机に突っ伏すと同時に、ばあさんがギルド長を睨みつけた。流石におっさんが動けなくなっているのを目の前にして、ギルド長に抵抗する意思は完全になくなったようで、元の席に力なく座りなおした。
これで、後は俺が元の席に座れば最初と同じ状態に戻るが……俺は椅子に座らずに、ばあさんとモニカさんの後ろへと移動した。ここならおっさんとギルド長だけでなく、ばあさんとモニカさんも視界に納めることが出来るので、何かあれば対処はしやすくなるし、ギルド長への脅しにもなる。
それを分かっているギルド長は俺を睨みつけた後で、
「聖国がこの街の運営に割り込もうとしてきている。今更になって孤児院に声をかけてきたのは、その為だろう。冒険者ギルドに対しても、色々な依頼を出して冒険者と独自の繋がりを持とうとしている」
「私のところにやってこないとなると……潰すつもりなんだろうね。裏では色々と黒い噂のある聖国だけど、表立って裏社会に属する奴らと繋がるのはまずいということかい」
「そんな理由があるのなら、私たちに相談すればよかったのに……しなかったということは、あんたは聖国を利用して、この機会に冒険者ギルド……いや、ジュノー自身がこの街のトップに立つつもりだったからと思っていいんだね?」
「否定はしない。支配しようとかではなく、三つの派閥を一つにまとめた方が聖国に対抗できると考えたのは事実だ。それに、そのまとめ役は表社会の組織の方がふさわしいと思ったのもな」
まあ、ギルド長の立場を考えれば、この機会にこの街の権力を握ってしまおうというのは理解できるが……奪い取られる方はたまったものではないし、ギルド長の話では犠牲になるのはばあさんの派閥のみの可能性がある。
(この場で事故に見せかけてギルド長を殺して、こちらの操りやすい奴を新しい長に据えた方がいい気がするな)
そう思ってギルド長を見ると、ギルド長は額から滝のように汗を流していた。その横で、
「ジーク、いらないならこれ貰うな!」
などと言って、おっさんが俺の残していた菓子を奪って口に放り込んでいた……殺すなら、ギルド長よりもおっさんを先にした方がいいのかもしれない。
「……誰か! 新しいお菓子を持ってきておくれ!」
ばあさんは俺の殺意の理由に気が付いたのか、後ろの方で隠れてこちらの様子を窺っている従業員に向かってお菓子のお代わりを持ってくるように指示を出していた。
新しいお菓子が届けられるまでの間、俺はずっとおっさんを睨んでいたが、おっさんは悪びれた様子を見せずに、「そんな怖い顔すんなよ~」……とかいって、お茶のお代わりを要求していた。もっとも、お菓子を持ってきた黒服に拒否された為、仕方なくといった感じで自分で淹れていたが……失敗したようで、一口飲んでとてもひどい顔をしていた。
「話を戻すけど、そのジュノーの計画にジークを引き込もうとした理由を教えてもらおうか? あんたは今日までジークの強さを正確に把握していたわけではないんだろう? なら、あんたにとってジークは二つ星だがそこそこ強い程度の冒険者だったはずだ。しかも、私とモニカと親しい……あんたにとっては、敵側の人間という可能性が高いわけだ。普通に考えたら、ジークを手に入れるのは私とモニカに対する嫌がらせくらいにしかならないはずだけど……わざわざそんなことをする必要は無いはずだしねぇ」
「つまりジークには、私と姉さんに関する以外に使い道があったというわけだ……さっさとその使い道をいいな!」
ばあさんとモニカさんは、ここぞとばかりにギルド長を怒鳴りつけるが、ギルド長はなかなか口を割らなかった。すると、
「なあ、俺が知っている限りでいいなら教えてやるぞ。もっとも、ジュノー程知っているわけじゃないけどな」
不味いお茶を飲み終えたおっさんが、二人にそう提案した。
そんなおっさんをギルド長が止めようとしたが、
「一度見逃された恩がある上に、未だに剣を突き付けられているようなものなんだ。俺たちに拒否権は無い。むしろここで素直に話しておけば、聖国に対抗する目も出てくるんじゃないか? まあ、許してもらえればの話だけどな」
「ぐっ……」
などと言われて、ギルド長はくぐもった声を漏らした。
もしこれでギルド長ではなくおっさんが話すようなことになれば、ばあさんとモニカさんはギルド長を完全に追い落とそうとするだろう。そしてこの状況だと、それも簡単に出来てしまう。
そうなると、ばあさんとモニカさんは情報不足の中で聖国に対抗しなければならなくなるが、邪魔になりそうな人物がいなくなるだけでもましと言えるだろう。最悪の場合、二人が用意した人物かおっさんにでもギルドをまとめて貰えばいいだけの話だ。
「さて、どうするんだい? それでも話したくないというのなら、それでもいいさ。バルトロが知るだけの情報でも、今よりはましになるだろうしね」
「その代わり、聖国とのことが終わるまで、ジュノーにはどこか静かなところで過ごしてもらうことになるだろうけどね」
この二人が本気でギルド長を監禁したら、おっさんやギルド長の手駒でもそう簡単に解放することは出来ないだろう。それに、もし解放出来たとしても、その時にギルド長が無事でいるという保証はないのだしな。
俺の考えていることに、おっさんは何となく気が付いているようだが、ギルド長はそこまでの余裕がないようで、俺ではなくばあさんとモニカさんの方に集中していた。
そして、数秒程黙ったギルド長は、
「分かった、全て話す」
白旗を上げた。