第八話
「成程、それでディンドランが被害にあったというわけね」
伯爵と話した後、念の為バケツの用意をしていたのだが、ふとある方法を思いついて試していたところ、そこにディンドランさんに連れてこられたサマンサさんとカラードさんがやってきたのだが……その際、ちょっとしたトラブルがあり、ディンドランさんがダウンしてしまった。
「それにしても……説明されれば治療中と納得できるが、知らなければ罠を仕掛けているとしか思えんな」
「確かにある意味では、無防備な状態の婚約者を守る為の罠と言えるわね」
俺が思いついた方法とは、ダインスレイヴを出している状態で同時にシャドウ・ストリングを使い、先端をエリカの腕に結ぶと言うものだ。
この方法だと、シャドウ・ストリングを通じて俺とエリカが繋がっている状態になるので、離れていてもダインスレイヴでエリカの魔力を吸い取ることが出来るのではないかと考えたのだが、これは半分成功で半分失敗と言う結果だった。
何故そうなったかというと、確かにこの状態だと離れていてもエリカから魔力を吸い取ることが出来たのだが、離れる距離が延びるごとに、ダインスレイヴのコントロールが難しくなってしまうのだ。
一応、この部屋の中くらいだと問題ないことが分かったので、部屋の隅の方にバケツと衝立を設置して簡易的なトイレを設置したまではよかったのだが、その後すぐにサマンサさんたちがやって来て部屋の扉をノックした為、俺が出迎えたのだ。
もしもこの時、出迎えたのが俺でなければディンドランさんが被害にあうことは無かったかもしれないが、俺がトイレを設置しているのを見たフランベルジュ家のメイドたちが、もしかするとトイレなのかもしれないと思ったらしく、伯爵の言いつけ通り部屋を出て行ってしまったのだった。
なので俺がサマンサさんたちの対応したのだが、その際に二人の案内の為に先頭にいたディンドランさんが部屋の中に先に入り、俺とサマンサさんたちの会話の邪魔にならないように俺の後ろへ移動したところ……ダインスレイヴと繋がっていたシャドウ・ストリングを踏んでしまい、その場に倒れてしまったのだ。
幸い、倒れた理由は一時的に足に力が入らなくなったかららしく、ディンドランさんはすぐに立ち上がることが出来たのだが、今回は完全に俺の不注意だったこともあり、ディンドランさんは先程から俺を不機嫌そうな顔で睨んでいる。
一応、エリカの治療の為なので戦闘で使う時よりも威力はかなり抑えてはいたし、もっと力を出している状態のダインスレイヴでも普段のディンドランさんなら耐えることが出来るのだが、今回は想定外の使い方をしていたのでもろに不意打ちを食らってしまった上に、どうやらこの方法だと俺と距離が近い程ダインスレイヴが魔力を吸い取る力が強くなるらしく、おまけに両足の魔力が同時に吸い取られたことで踏ん張りが利かなくなったという、いくつかの不幸が重なった結果の出来事だった。
「ジーク、床に這わせているとまた誰かが犠牲になるかもしれないから、糸は天井に引っ掛けた方がいいと思うわ」
「確かに、鍛えている人ならともかく、フランベルジュ家のメイドが踏んでしまうと危険ですしね」
言ってから鍛えている人が倒れたばかりだったことに気が付いたが、口から出た後の言葉はどうすることも出来ないので、俺は失言だとは気が付かなかったふりをして、ディンドランさんから向けられる圧力は無視することにした。
「それにしても、エリカさんの魔力に関してはこの方法で何とかなっているようだが、このままだとエリカさんが起きた時にまともに動けなくなるのではないか?」
先程のディンドランのように……とまでは言わなかったが、カラードさんの言いたいことは理解した。
確かに、ダインスレイヴは魔力だけでなく体力も奪ってしまうので、このままだとエリカが起きた時に立ち上がれなくなるという事態が起こってしまうだろう。
まあ、立ち上がれなくなると言っても、余程のことがなければ後遺症として残ることは無いだろうし、エリカは昔からかなり鍛えているし本人の素質の関係もあり、一般的な男性騎士以上の体力を持っているはずだ。
ただまあ、今のエリカは体調不良が続いたせいで体力が落ちているだろうから、普段のエリカの状態は参考にならないだろうが……それに関しては対策はすでに思いついている。
「一応、エリカから吸い取った魔力を利用して、回復魔法を定期的に使用するつもりです。回復魔法には直接体力を回復させる効果はほとんどありませんが、回復力を高める効果はありますし、元々エリカは鍛えている分回復は早い方なので、そこまで酷くなることは無いと思いますが確実にとは言えないので、何か異変があれば即座にダインスレイヴを解除し、その時の状況に合わせていこうとは考えています」
回復魔法には怪我を治すだけでなく、内臓などの機能を正常化することが出来るので、副次的な効果として体力の回復力も高めることが出来るのだ。まあ、よくディンドランさんにしている二日酔いを治すのと同じような感じと言えば分かりやすいかもしれない。
「確かにその方法なら、エリカさんの負担は軽くなるわね。それにジークも」
魔力を吸われるエリカが一番負担が大きいのは確かだが、吸う側の俺にもリスクは存在している。それは、他人の魔力を吸い過ぎると、精神が崩壊する恐れがあることだ。
実際に俺は、他人の魔力を吸い過ぎて精神が崩壊……いや、狂った人物を間近で見ている。
「まあ、俺の場合は神具の能力を使っているので、ドレインを使用した場合のリスクとは比較できませんが、この方法なら吸い取った魔力を常に消費するので、ソウルイーターのようになる可能性は低いとは思います」
あのソウルイーターは、チューベローズとして生活していたので、最終的には化け物に変貌してしまったものの、人間であったことは間違いないはずだ。
ただ、その変貌がドレインの過剰使用によるものなのか、それとも薬の影響なのかは不明だが、少なくともドレインを使い過ぎると精神がおかしくなってしまうという記録は他にもあるし、ソウルイーターは記録に残っているだけでも何十人と言った数の人間を襲っているので、精神にドレインの影響は出てなかったということは無いはずだ。
「吸い過ぎたことで影響が出るというよりは、吸った魔力をため込み過ぎたことが精神に異常をきたす原因と師匠も考えているようだから、今のジークみたいに魔力を消費し続ければ問題は無いはずだけど……何かおかしいと思ったら、すぐにダインスレイヴの使用を中止するのよ?」
大丈夫なはずと言いながらも、サマンサさんはかなり心配しているようなので俺は素直に頷き、何かあれば使用は中止すると約束したが……俺としては、ダインスレイヴではそう言った精神が崩壊するようなことは起こらないと思っている。
何故なら、今エリカから吸い取っている魔力よりも、もっと大量の魔力を吸い取った経験が二度もあるが、今もこうして無事でいるからだ。
もっとも、ダインスレイヴで一定以上の魔力を吸うと、かなりの確率で自分でも分かるくらい興奮状態になり、いつも以上に気が荒く好戦的になってしまうのだが……時間が経つか魔力を消費すると収まっていくので、あれはダインスレイヴの効果の範囲内だと考えている。
「サマンサ、俺はフランベルジュ伯爵と話してくるが、君はどうする?」
「私はもう少しここに残って、エリカさんの様子を見ていくわ」
定期的にフランベルジュ家のメイドがエリカの状態を確認しているが、魔法に詳しいサマンサさんが見てくれればより安心できる。
「分かった。伯爵にもそう伝えておこう」
そう言ってカラードさんは部屋を出て行き、残ったサマンサさんはエリカのそばに近づいて……急に俺の方を向き、
「ジーク、少しの間離れて反対側を見ていなさい」
と指示を出した。
「サマンサ様、私が見張っていますので安心してください」
それに対し、ディンドランさんが真っ先に反応し、俺の視線からエリカを守るかのように立ち塞がった。
まあ、そんなことをしなくても言われた通りに反対を向くつもりだが……そう言ったとしてもディンドランさんは聞き入れないと思ったので黙って従い、許可が出るまで大人しくしておくことにした。
「ジーク、もういいわよ。見た感じだと、エリカさんに異常はないみたいね。魔力も安定しているみたいだし、今のところはこの方法が一番の治療法だと思うわ。ただ、いつエリカさんの魔力が安定するか分からないから、しっかりと様子を確かめながらダインスレイヴを使うのよ」
「分かりました」
もしもエリカの魔力が安定した時、俺がそれに気が付かずに魔力を吸い過ぎてしまうと今度はそれが原因でエリカの体調が悪くなることも考えられるので、一番の治療法だったとしても危険が伴う方法だということは忘れてはいけないだろう。
改めてそのことを心に刻みながら、エリカに回復魔法をかけていると、
「エリカさんの体調が元に戻ったら、一度レベルの確認をした方がいいかもしれないわね」
サマンサさんがそんなことを言い出した。
確かに、定期的にレベルの確認をした方がそれに合った鍛錬が出来るし、今後の活動に幅が出るかもしれないが、今のサマンサさんの言い方にはそれとは違った目的があるように感じた。
そんな俺の考えに気が付いたのか、
「もしかして、ジークは気が付いていない……いえ、知らなかったのかしら? エリカさんの体調不良の原因は、恐らくレベルが上がったことによるものだと思うわ」
レベルが上がった時に起こる成長痛みたいなものだろうか? というのが最初の感想だが、俺の時はそんなことは起こらなかったな……と思っていると、
「あまり起こることのない現象だから、知らなくてもおかしくないかもしれないわね。ただ、普通に一つレベルが上がってもこの現象は起こらないと言われているから、エリカさんは一気に属性か肉体のレベルが上がったのだと思うわ。ただ、どういった症状が起こるのかは人によって違うし、エリカさんが周囲に影響を出す程の高熱を出したということは、属性のレベルが上がったのでしょうね」
という説明をサマンサさんがしてくれたが、やはり俺には心当たりはなかった。
「ちなみにだけど、私も経験しているし、師匠もしたと聞いているわ。特に師匠の時にその現象が起きたのは今代の緑になった時らしく、無性に空を飛びたくなったとか思ったそうで一日中飛び回っていたのよ。それで目立ってしまったことで、一気に師匠の名が一般にまで広まったと聞いたわ」
確かに空を飛びまわって魔力を消費するというのはエンドラさんらしいな……と思ったところで、サマンサさんの場合はどうだったのだろうか? と思い聞いてみると、
「私の場合は……好戦的になったわね。それはもう、自分でも驚く程……」
少し話しにくそうにそう言ったし聞いて欲しくなさそうだったので、それ以上は詳しく聞かなかった。
ただ、その好戦的という話を聞いて、俺はあることを思い出した。それは、
「そう言えば、俺もカラードさんたちと会う前に、相当気が荒くなっていた気がしますね」
俺がこの世界で意識を取り戻し、どこにいるのか分からずに混乱しているところであのゴリラの魔物に襲われて殺されかけた時、たまたまダインスレイヴを発現してゴリラを殺すことが出来たのだが、今思えばあの後森の中をさまよっている最中は、ずっとダインスレイヴの獲物を探していた気がする。
もしかすると、あのゴリラを殺したことで俺のレベルが一気に上がって今代の黒になり、その反動で好戦的になったのかもしれない。
ただ、好戦的というよりはダインスレイヴで獲物を殺し、その魔力を吸い取る感覚に酔いしれていた可能性もあるので、一歩間違えばソウルイーターのような化け物になっていた可能性も考えられる。
そのことを話すと、
「確かにあり得ない話ではないかもしれないけれど、もしもあのままカラードたちに出会うことなく森の中をさまよい続けていたとしても、私はジークがソウルイーターのような化け物にはならなかったと思うわ。結果論ではあるけれど、あの森の後もジークはダインスレイヴを使い続けていたし、学園ではあの森以上に魔力を吸ったはずよ。それでも精神に異常をきたしていないということは、ダインスレイヴの能力とドレインの魔法には明確な違いがあり、双方似たような性質を持っているものの、安全性に関してはドレインとは比べ物にならない程ダインスレイヴの方が上だと私は考えているわ」
確かにサマンサさんの言う通り、ダインスレイヴがドレインと全く同じなら、俺はとっくの昔にソウルイーターのように精神を狂わせ、人間を食べ物だと認識する化け物になっているはずだ。
ただまあ、これまで安全だったからと言って、今後もダインスレイヴで精神を壊すことは無いと断言できるものではないので、魔力を吸ったらその分だけ使用するというのは徹底した方がいいだろう。
その為にも、
「エリカから吸い取った魔力は、回復魔法以外でも消費した方がいいかもしれませんね」
今のところ、エリカから吸い取った魔力はエリカに回復魔法を使うことで消費しているが、それでも若干余り気味だ。
なので、
「ほいっと!」
空いている方の手で、足元に光を出してみることにした。
「ほとんどの属性魔法が使えるというのもあるのでしょうけど、やっぱりジークは器用ね。器用さだけなら、私どころか師匠も越えてると思うわ」
そんな俺を見て、サマンサさんはそんなことを呟いていたが……やはりエンドラさんの弟子だけあって、サマンサさんも同じようなことを言うのだなと、変に感心してしまった。
そこに、
「ジーク、魔力をそんなことに使うのなら、私にも回復魔法をかけてくれないかしら? どこかの誰かさんのせいで、ちょっと体がだるいのよね」
などと言いながら、ディンドランさんがジト目で睨んできた。
「まあ、光を出すのもディンドランさんに回復魔法を使うのも、魔力を消費するという意味では同じだけど……」
確かにあれは俺の不注意ではあるし、ディンドランさんは被害者で間違いはないだろうが……よくよく考えると、自身の主人であるカラードさんやサマンサさんよりも先に部屋に入って来たディンドランさんにも問題があるのではないだろうか?
あの場面では、ディンドランさんがサマンサさんたちの代わりに扉を開けるのは当然だろうが、その後は後ろに下がるかドアを押さえながら二人を先に中に入れるのが普通な気がする。
サマンサさんたちが何も言わなかったので、もしかすると俺の考え方が間違っているのかもしれないが、少なくとも他人の部屋に主人よりも先に入ったのは事実なので、間違っていないのならディンドランさんは一方的な被害者ではないということになりそうだ。
まあ、そんなことを言って下手に騒げば、せっかく寝ているエリカを起こしてしまうかもしれないので、このことは後でサマンサさんとカラードさんに確認してみようと思う。
その後、俺が何も言わずに回復魔法を使ったことでディンドランさんは機嫌を直し、その様子を見たサマンサさんも興味がありそうだったので回復魔法を使ったところ、肩こりが治ったと言って満足そうにしていた。
この分だと、サマンサさんはエンドラさんに自慢するかもしれない。そうすると、エンドラさんも当然のように自分にもやれと言うだろう……と言った未来が見えた気がして、それだけで少し面倒臭くなってしまったのだった。
「え~あ~……あれ?」
「おはよう。お邪魔しているわよ」
「おはよう……ございます?」
サマンサさんへの回復魔法が終わったところで、エリカが目を覚ましたのだがまだ頭がはっきりしていないようで、サマンサさんに返事をしたものの相手が誰だか分かっていないようだ。
「ちょっと失礼するわね。熱は……まだあるみたいね。体調はどう? 食欲はあるかしら?」
サマンサさんに熱を測られても、エリカはぼーっとしたままで、質問に対しては首を横に振って応えている。
「何かお腹に入れておいた方がいいと思うけど、無理に食べてもよくないと思うから、お水だけでも……」
と言ったところでサマンサさんは俺の方を見て、手で部屋の隅に移動するように指示を出してきた。
そして小声でエリカに耳打ちして、エリカが頷くと、
「ジーク、ダインスレイヴを一時解除しなさい。ディンドラン、外にフランベルジュ家のメイドがいると思うから、彼女たちのところへエリカさんを連れて行くわよ。あっ! ジークはここで待機ね、部屋から一歩も出てはいけないわ」
と言って、ディンドランさんと一緒にエリカに肩を貸しながら部屋の外へと出て行った。
「あ~……そう言うことか」
何となくサマンサさんの言っていた意味が理解できた俺は、エリカたちがいない間に簡易トイレを使って用を足し、窓を全開にして部屋の換気をしてからバケツの中を処理した。
これで臭いはほぼ残っていないはずだが、向こうには鼻が利くディンドランさんがいるので、念を入れてマジックバッグに保管してあった柑橘類をいくつか取り出し、皮をむいて中身を皿に乗せてエリカのベッドの横にあるテーブルに置いてみた。
なお、むいた皮の一部は簡易トイレの近くに置き、残りは次の出番までマジックバッグで保管することにした。
「あら? いい匂いがするわね」
部屋に戻って来て真っ先に反応したのはディンドランさんで、俺がトイレの臭い消しに柑橘類を使ったことに気が付いていないようなので、これで大丈夫だろう……と思ったがサマンサさんにはすぐにバレたようで、目が合うなり笑みを向けられた。
そして肝心のエリカはというと、
「本当にいい匂い……これなら食べられるかも?」
とのことだったので、三人と一緒に入って来たメイドに柑橘類を切り分けてもらうことにして、そのうちの一部は潰してジュースにするように頼んだのだが、
「ジーク、これだけだとエリカさんにはきついかもしれないわ。他の果物は無いのかしら?」
サマンサさんが空腹時に酸味の強い柑橘類だけでは胃に悪いかもしれないからと言うので、他にも何かないかマジックボックスの中を探ってみたところ、
「これとこれは使えるわね。あとはこれもいいわね」
と言いながらリンゴを中心に色々と籠に入れ、メイドと共に部屋を出て行った。
なお、ディンドランさんはサマンサさんについて行こうとしたところ、俺がエリカに悪さをしないように残りなさいと言われていた。
「なんか、サマンサさんにも迷惑をかけてしまって申し訳ないわ……」
と、サマンサさんが出て言ってからエリカは言っているが、
「大丈夫よ、エリカ。サマンサ様はあれでも楽しんでいると思うから」
などと、俺よりも先にディンドランさんがエリカを慰めていた。
ただ、その言い方だと二人に対して少し失礼ではないかと思ったが……言っていること自体は間違いではないと思う。
「エリカ、ディンドランさんの言い方は少しアレだが、元々サマンサさんは世話焼きなところがあるし、俺やカラードさんは割と頑丈な方だから、今日みたいに誰かを看病できるのは貴重な体験だと考えていると思うから、そんなに気に病む必要はないぞ。ただ、それでも気になるようなら、元気になった後で礼を言っておけば、それだけでサマンサさんは喜ぶと思うぞ」
カラードさんが体調を崩して寝込んだというのは俺の知る限りでは見たことも聞いたこともないし、俺も看病が必要な程寝込んだことは無い。
それに、うちの騎士団は上三人が人一倍頑丈なせいか、他の騎士たちも重い病気にかかったことは無いはずだし、軽いものなら騎士同士で何とかするし、その為の人員も確保している。
つまり今回のように、サマンサさんが直接看病するということは、あまり経験がないはずだ。
その為、サマンサさんが自分から進んで看病しているのはサマンサさん自身がやりたいからであり、エリカが嫌でなければ好きにさせた方がということだ。
「確かにその通りかもしれないわね。元気になったらちゃんとお礼を言うわ」
エリカの調子は俺が来た時よりはだいぶ良くなってきているようなので、このままなら割と早く元に戻るかもしれない。
サマンサさんたちが戻ってくる気配がまだないので、今の内にもう一度ダインスレイヴを使っている理由などを話したり、エリカの質問に答えたりしていると、
「遅くなってごめんなさいね。出来たわよ」
サマンサさんが、メイドたちと大量の料理を運んできたのだった。




