第一話
「ちょっと恋人っぽいことをしようと思っただけなのに、やたら目立って仕方がないな」
「まあ、あれだけ宣伝に使われたらね」
「ファブールとの戦争で活躍した二人だから、目立つのは仕方がないわよ」
婚約を発表してから十日程経ち、そろそろ落ち着いて来ただろうと思ってデートでもしてみようと街に繰り出したのだが……ウーゼルさんや王族派の上の人たちが揃って戦争の功績を宣伝したせいで、貴族の間どころか一般市民の間にまで俺とエリカの話は知れ渡り、ついでとばかりに婚約の話も広がった為、十日程度では話題が落ち着くには短すぎたようだ。
「それにしても……初めてのデートって言うのに、なんでディンドランさんが一緒なのか不思議なんだけどね? しかも、俺たちよりも楽しんでいるみたいだし」
「仕方がないでしょ? 仮にも子爵と名誉男爵なんだから、護衛の一人くらい付いていないと格好がつかないし……何よりも、フランベルジュ伯爵から直接頼まれたからね」
ディンドランさんの言葉に、俺とエリカは頭を抱えてしまった。
何故かというと、このデート自体は数日前から計画していたのだが、それを伝えに行った時に伯爵が、
「デートはいいが、婚前交渉は許さん!」
とエリカの横で仁王立ちし、今日の朝エリカを迎えに行こうと準備をしている最中に、何故かフランベルジュ家の馬車がうちに来たと思ったらエリカと伯爵が降りてきて、
「今日はエリカを頼む。それはそれとして……ディンドラン殿、申し訳ないが護衛としてエリカのことを頼めないだろうか?」
と言った感じで、様子を見に出てきた俺とディンドランさんに言ったのだ。
なお、馬車の中では何とか我慢できていたであろうエリカは、その言葉を聞いて限界が来たようで、背後から伯爵の尻を蹴り飛ばしていた。
エリカはその一撃で倒れこんだ伯爵に追撃しようとしていたので、一応止めはしたのだが……その時に伯爵が、
「ちょっと父親っぽいことをやってみたかっただけなのに……」
などと拗ねたのを見て、
「気持ちわる!」
と、本気で嫌がっていた。
まあ、エリカの反応は当然だろう。俺でもあの伯爵の言動は少々イラっとしたし、拗ねた時はエリカと同じことを思った。
まあ、伯爵に関してはエリカの領分なので俺は苦笑いを浮かべるしかできなかったが……ディンドランさんに関しては俺の担当になるので断ろうとしたら、
「ちょっと準備をしてくるわね。それと、カラード様に許可を取ってくるわ!」
その前にディンドランさんは爆速で屋敷の中に戻っていき、すぐに戻ってきてエリカの背中を押して外へと連れ出していったのだ。
「まあ、護衛の件に関しては仕方がないにしても……一番楽しんでいるのは間違いないよね?」
俺がディンドランさんが頼んだ食事を見ながら聞くと、
「護衛は体力と集中力が大事だからね。必要経費よ」
ディンドランさんは当然だといわんばかりに言い切った。
確かに、護衛が付かれるのは知っている。だが、ディンドランさんが頼んだのは、俺たちの倍……いや三倍近い量で、テーブルの大部分を占めている。
「まあ、いつも通りと言えばいつも通りだけど……そろそろ次に行きたいから、早く食べてよね」
俺とエリカはあと少しで食べ終わるが、ディンドランさんはまだ半分くらい残っている。
そろそろ次に向かわないと店が客で溢れてきているので、ディンドランさんの言うところの護衛にも支障をきたしかねない。
「もうすぐ食べ終わるわ」
ディンドランさんも人が多くなっていたのは気にしていたらしく、食べる速度を上げてあっという間に残っていた料理を胃に納めていった。
店を出ると、何人かが俺たちの後をついてくる気配がしたものの、今のところ危険はないと判断してしばらくの間は泳がせることにした。まあ、もし少しでも怪しい動きを見せれば、すぐに対処するつもりではあるが……ちらっと見た感じでは一般人っぽい雰囲気だったので、物珍しさからついてきているといった感じだった。
「この後は予定通り、街をぶらつきながらボルスさんの店に向かうつもりだけど……ちょっと遠回りした方がいいかもな」
「そうね。例え後をつけてきているのが私たちに危害を加えようとしても、この三人相手に何かできるとは思えないけれど、念は入れておいた方がいいわね」
「ジーク、エリカ、あっちの道を通るのがいいと思うわ。少し細いけれど、後をついてくる奴を確認しやすいし、何より通り抜けた先には美味しいと評判の露店が並んでいるのよ」
エリカとこの後の予定を軽く話していると、ディンドランさんが行き先を提案してきたが……しっかりと自分の都合も加味した上で選んだ道だった。
「そうですね。それくらいの楽しみがないと、後ろの人たちに必要以上にあたってしまいそうですしね」
まあ、エリカも露店は興味があるようだし、俺としてもどんなものを扱っているのか覗いてみたいので、デートの行き先としては満点と言ったところだろう。たとえそれが、おごらせる気満々のディンドランさんの欲望から選ばれたものだとしても。
「とりあえずそっちに進んでみようか? 道が細いなら、たとえ襲われたとしても対処はしやすくなるし」
エリカとディンドランさんは道が広い方が戦いやすいだろうが、俺にとっては道が細く影が多いところの方がやりやすい。
というわけで、俺たちはすぐにその細道に足を踏み入れたのだが、俺たちの後をつけてきていた奴らはそこまで入ってこなかったので、心配事が無くなってよかったというところだ。
そのまま細道を抜けると、そこはディンドランさんの言った通り露店の多い道へ続いていたので、俺たちは露店を除きつつ色々と買い物をしたのだが……やはり一番楽しんでいたのはディンドランさんだった。しかも、必要経費だと言い張って、俺に金を出させて……
「お~う、男爵……いや失礼、子爵様だったな。それで、こんなところに噂の婚約者様を連れてデート……デートなのか?」
ボルスさんの店の扉を開けると、俺とその後ろにいるエリカに気が付いたボルスさんがいつものように軽い口調で声を掛けてきたが、更にその後ろから入ってきたディンドランさんを見て首をかしげていた。
「まあ、こっちにも色々と事情があって仕方がないんですけど……一応デートで合ってます」
「そうか、子爵様も苦労してるんだな……それはさておき、いつも通りジークでいいな? それで、何の用だ? 自分で言うのもなんだが、うちの店はデートに向いているようなところじゃないだろ?」
向いているどころか、普通なら真っ先に外すような場所だろう。まあ、それはあくまでも、デートするのが普通の感覚を持つ人ならばと言うことで会って、俺やエリカ、ついでにディンドランさんのように、普通の枠から外れる奴は当てはまらないということだ。
「また前みたいなドラゴンの素材を使った武器と、それよりも少し質を落とした武器、それとエリカの武器を作ってほしいんですけど……それとついでに、ディンドランさん用の武器もお願いします」
俺はそう言って、作って欲しい武器とその数を注文票に書いて渡した。
「はいよ。それじゃあ、素材は奥の部屋にでも出しておいてくれ。必要な量は大体わかるだろ? それと、エリカ嬢とディンドランは、どういった武器が望みなのかを教えてくれ。もしくは、手持ちか今うちにある武器で近い形のがあるなら出してくれ」
エリカは愛用のハルバードの形を詳しく話し、太さや長さなどは店に置いてあるものを使って説明していた。
ディンドランさんも、俺が前にあげたロングソードを見せながら細かい注文をしている。
エリカに関しては、俺よりも小柄なのに腕力は上で、おまけに武器の特性上、力任せに使うことが多いせいで不具合が出やすかったので、今回のデートの記念として丈夫な武器をプレゼントしようと考えたのだ。
ただ、ディンドランさんに関しては……少々納得がいっていないところがある。
この間のファブールの戦争の時、俺とバンさんは反発したように見せて裏で繋がっていたのだが、その際に詫びの意味も込めて、バンさんにロングソードを渡したのだ。
一応、詫びと報酬の意味を込めたものだったので、主君ではない俺から渡しても問題は無いかは事後報告ではあるがカラードさんには確認を取ったのだが、あの一件でバンさんを嫌いになってしまったディンドランさんが、同じロングソードを使うことに不満を覚え、今回エリカの武器を注文しに行くと知った時に自分の分も強請ってきた。
まあ、バンさんとの仲がこじれた原因について多少は責任を感じていたし気持ちは何となくわかるのだが……婚約者のエリカと同時に注文するのは抵抗があった。
ただ、その際にエリカもそう言った事情があったのは知っているし、気持ちは何となくわかると言って許可を出したのでこうなっているのだが……後で一応サマンサさんには報告しておいた方がいい気がする。
そうしておかないと、後でこの件が知られた時に俺が責められる気がしてならないからだ。
「それじゃあ、注文を受け付けたぜ。一応、エリカ嬢とディンドランのものに関しては、特注武器ということになるので、形になったら連絡するから確認に来てくれ。そこから微調整を加えるから、もしかすると時間がかかるかもしれんというのは覚えておいてくれ。ジークの注文に関しては、今回も仲間に声を掛けるつもりだが、場合によっては後回しにするから前よりも時間がかかるかもしれんが構わんな?」
「大丈夫です。エリカとディンドランさんの武器を優先してください」
俺の注文分に関しては、贈答用や使い捨てにするかもしれない武器なので優先度は低い。なので、主武器として使う予定のエリカたちを優先するのは当然だ。
それに、俺のを優先してディンドランさんの分を後回しにした場合、後で愚痴を言われる可能性が高いので、余程の理由がない限り俺の武器はディンドランさんの後に出来上がった方がいい。
ちなみに、前に渡したロングソードは返してくれるのかと思ったらそんなことは無く、予備か予備の予備として使うと言われた。
まあ、一度譲ったものなので、今更返せと言うのもどうかと思うが……このことをガウェインが知ったりすると、自分も同じように予備の予備が欲しいとか言い出しそうなのが心配だ。もっとも、その時はカラードさんに遠慮なく報告するつもりだけど。
「そう言えば、ジークは今回も武器……と包丁の注文のみだが、防具とかはいいのか?」
「あ~……防具の方は、武器程こだわってないですからね。俺の戦闘スタイル的にも、革製のものならともかく、金属製のものは邪魔になることも多いですし」
俺の戦い方は、基本的に速度を重視することが多く、おまけに魔法による不意打ちなどもよく併用するので、金属製のものだと動きが鈍ったり音で効果が薄れたりする恐れがあるのだ。
その為、何かしらの理由がない限りは金属製の鎧を身に付ける機会がなく、今使っている防具も最低限の防御力があれば後は付け心地を優先している。
「まあ、そうかもしれんが……何と言うか、それはそれで惜しいな。ジークの戦闘スタイルに文句をつけるわけじゃないが、もう少し防具に気を配ればもっと活躍できると思うがな。例えばの話だが、今のやつをドラゴンやワイバーンの革を使ったやつに変えるだけでも防御力は段違いに上がるし、腕のいい奴に頼めば今のよりも付け心地がよくなるかもしれん」
確かにそう言われれば、もしも防具をドラゴンやワイバーンの革を使ったものに変えていれば、スタッツで今代の雷に傷を負わせられることもなかったかもしれない。
そう考えると、俺はこれまで防御というものを軽んじていたということになり、逆に考えれば今の状態よりも簡単に強くなれるということでもある。
「作るつもりがあるのなら腕のいい奴を紹介できるが……どうする?」
「お願いします。ただ、今日はちょっと無理なので、後日伺いたいと思います」
とても魅力的で今すぐにでも飛びつきたい話ではあるが、流石に今日は無理なことは分かっているので断りを入れ、後日改めて話を聞きに来ることにした。
「別に防具の話を聞きに行ってもよかったのよ?」
エリカは自分が武器の注文をしたからかそう言ってくれるが、
「この話を聞かれれば、俺は数人から説教を食らうことになるかもしれないから」
エリカの隣でニヤついているディンドランさんを見ながら、今日の報告を待っているであろうサマンサさんとエンドラさんの顔を思い浮かべた。
「それに、この後冒険者ギルドに行かないといけないからな」
「それでも時間はある気がするけど、確かに防具の話はどれくらい長くなるか分からないのは確かね。こだわるときりがない話だし」
エリカも自分の武器を注文する際に色々と細かいところまで話していたので、こういった話は時間に余裕がある時にするのが一番だと思ったのだろう。
「武器や防具は自身の身の安全に直結するものだからな。中途半端にするのが一番危ない」
「そう言う割に、ジークはこれまで防具を軽んじていたけどね」
俺が話をまとめようとしたのに、ディンドランさんが茶々を入れてきた。
だが、そう言うディンドランさんも、どちらかと言えば防具は後回しにする方だ。ついでにガウェインも。
そのことを逆に指摘しようとした瞬間、
「それは……待てよ。もしかして俺が防具を軽んじていたのは、ディンドランさんとガウェインのせいじゃないか?」
俺の防具に関する考え方は、目の前でニヤついている人が関係しているのではないかと言う考えが頭をよぎった。
「ちょっとジーク、人のせいにしないでよね」
ディンドランさんは、すぐに自分のせいだと言われていると気が付き抗議してきたが、
「いや、よく考えてみてよ。俺の戦い方って、基本的に力任せよりも不意を突くようなスタイルだよ。ただ、剣を握り始めた頃はカラードさんとランスローさんにちゃんとした基本的な戦い方を習っていたはずだし、その記憶もちゃんとある。でも今考えてみたら、同時にそんな子供の初心者相手に、力任せで殴りつけてくる、大人げない二人が身近にいたたんだ。そのせいで、攻撃を盾で防ぐか受け流して切りつけるとかいう方法が、全く通用しないと身をもって知らされた。だから、力任せの攻撃の前では役に立たない防具で身を守るよりも、躱して攻撃するっていう方法しかないと刷り込まれていたとしたら、俺の防具に関するこれまでの認識は、その二人のせいだとは思わない?」
実際、今の俺でもガウェインとディンドランさんの一撃を盾で受ければ、下手をすると腕の骨が折れてしまうだろう。それが戦い慣れていない初めの頃ならば、かすっただけでも腕が使い物にならなくなるのは目に見えている。
そう考えながらディンドランさんの目を見つめると、
「思い当たるところがあるみたいだね?」
「少し……ほんの少しね。ほとんどは原因は団長だと思うけど」
ディンドランさんは気まずそうに目を逸らした。
「ま、まあ、結果的にそうなってしまったのだとしても、今の戦い方はジークに合っているように思えるから、逆に早くに分かってよかったんじゃないかしら……多分?」
エリカが苦笑いを浮かべながらそう言うと、ディンドランさんは俺の視線を避けるようにエリカの後ろに移動して何度も頷いていた。
「まあ、原因が何にせよ、俺の魔法とも相性のいい戦い方だと思っているからいいんだけどね。それに、今更変えることは出来ないし……ただ、これは一度カラードさんに報告しないといけないかな?」
「何でよ。問題は無いんでしょ⁉」
途中までホッとした表情をしていたディンドランさんは、最後の言葉を聞いて慌て始めた。
「いや、別に意趣返しとかで報告するわけじゃないよ。ただ、今後ヴァレンシュタイン家に入ってきた新人が俺と同じようになってしまう危険性を考えた場合、全員が俺の戦い方を参考にするのは無理だからね。だから、カラードさんに報告した上で、対策を取っておかないといけないというだけだよ……だんじて、意趣返しとかではないからね」
大事なことなので二度言ったのだが、
「いや、絶対に違うでしょ! しっかりと根に持っているじゃない!」
残念ながら、ディンドランさんには信じてもらえなかったようだ。
「と、とにかく、ここで騒いでいると他の人の迷惑になるから、冒険者ギルドに行きましょうか?」
「そうだな。ディンドランさん、皆の迷惑になっているから移動するよ」
ただでさえ目立っているというのに、ディンドランさんが大声を出せたせいで余計に注目を浴びてしまったので、俺たちは急いでその場を離れて冒険者ギルドを目指した。
「エリカ、あれってマリ……じゃないか?」
「えっ⁉ ……ああ、確かにそうね。こんなところ……は失礼かもしれないけれど、騎士見習のマリがどうして冒険者ギルドを覗いているのかしら?」
冒険者ギルドの建物が見えた時、俺はその入り口付近でうろつきながら中の様子を窺っている女性を発見した。
最初は依頼か何かで来たものの、中に入るのが怖くてためらっているのかと思ったのだが、すぐに見覚えのある顔だと気が付き、それがエリカとパーティーを組んでいたマリだと気が付いたのだ。
ちなみに、知り合いとはいえ少し微妙な距離感なので名前を呼び捨てにしていいものか少しだけ迷ったが、下手に『さん』付けするのはおかしいのでそのまま言ったのだが、もしかするとエリカの最初の反応はその一瞬の間が逆におかしなものに感じてしまったからかもしれない。
「マリ、どうしたの?」
「あっ! エリカ様! それに男……申し訳ありません! 子爵様!」
マリは、エリカが声を掛けると一瞬ビクッとしていたが、すぐに相手が誰なのか気が付き、笑みを浮かべていた。そして、その後ろにいた俺にも気が付いて挨拶しようとしたが……男爵と言い間違えそうになってしまい慌てて言い直し、すぐに頭を下げていた。
「いや、俺は気にしないけど、他の人には気を付けるようにしてくれ」
「は、はい……申し訳ありませんでした」
別に俺はわざとでないのなら爵位を言い間違えたくらいでは腹を立てて責めるつもりはないのだが、他の貴族の中にはそうでない者も多いだろう。
もしかすると、侮辱されたと言って、その場で激高して剣を抜いたり魔法を放とうとしたりする者もいるかもしれない。
「そうよ、マリ。私やジークは知り合いだし、多少間違えられたくらいでは何とも思わないけれど、全ての人がそうだとは限らないからね。特にマリは、遺族と関わることの多い場所で働いているのだから気を付けないとね」
マリの仕事で王城に行くことも多いし、今は見習いでも、正式に騎士となれば今よりももっと貴族と関わる仕事をすることになるのだ。
エリカの言う通り、今回の失敗は運がよかっただけで、次はそうもいかないだろうと反省しなければならない。
「はい……以後気を付けます……」
俺とエリカの言い方はかなり上から目線のものではあるものの、実際にマリとエリカは友人ではあるがその間には高い身分の壁があるし、今はもう学生ではないので、必要以上の馴れ合いは互いにとっていい結果に繋がらないということ、少なくとも他人の目があるところではけじめをつけるべきだろう。
もっとも、この世の中には、例外がいくつも存在してはいるが……まあその例外も、大事な場面ではわきまえているので、今のところ大きな問題にはなっていない。
「何か言いたげね、ジーク?」
「いや、別に?」
「ところで、本当に何していたの? 何かためらっていた様子だったけれど?」
エリカが俺とディンドランさんのやり取りを無視してマリに尋ねると、
「実は、上司から冒険者ギルドの方に催促してくるように言われまして……」
マリは、どこか言いにくそうに答えた。
まあ、上司から言われてきたということは正式な仕事であり、守秘義務などもあるだろうから俺たちには言いにくいというのもあるのかもしれない……が、それを聞いたエリカは、
「無理難題でも言われたのね?」
「え~っと……はい、そうなんです……」
マリが言いにくそうにしていた理由が別にあると気が付き、マリも誤魔化せないと観念して頷いていた。




