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黒のジーク 《書籍版発売中》  作者: ケンイチ
第六章
112/118

第十六話

「何でこんなに少なくなったんだろうか?」


 俺は、ボルスさんに頼んでいた武器の()()を自分の部屋で並べながらそう呟いていた。

 いやまあ、少なくなった原因は自分でも分かっている。減ったものの中には、自分の意志で譲ったものもあるのだが、想定外の状況に追い込まれて手放さなければならなかった分が痛かった。

 具体的に言うと、


「ランスローさんとカラードさんには確かに俺から言い出したことだ。後悔はしていない。アーサーも……まあ、今度戦術書などを見せてもらう約束のお返しに渡したから、これも想定内だ。問題は……ディンドランさんにガウェインにサマンサさんにエンドラさんか……半数以上じゃないか」


 ランスローさんには先日の捕縛騒動の時のお返しにショートソードを渡し、カラードさんにはいつものお礼としてロングソードを渡した。アーサーには約束のお礼でショートソードだ。ここまでなら、まだそれぞれ半数以上残っていた。だというのに、


「カラードさんへのお礼というのなら、自分も貰わないとと言ってサマンサさんがダガーを三本。サマンサさんが貰ったのなら、自分もとか言い出したエンドラさんが同じく三本。カラードさんが貰うところを見ていたディンドランさんが自分も欲しいと圧力をかけてきて、強引にロングソードを一本。最後に……ガウェインがキモい行動を繰り返したせいで、身の安全の為にショートソードを一本手放すことになってしまった……」


 なので、残りはショートソードが二本にロングソードが一本とダガーが四本、後は……


「八角棒が二本と刀か……まあ、全部渡さなくてよかったと思うしかないか。それに、ある意味本命は八角棒だからな。もっとも、そうそうこれを欲しがる人は居ないと思うけど……いや、ガウェインとディンドランさんは分からないな。欲しがられても、これだけは絶対に渡さないでおこう。それにしても……」


 俺は二本の八角棒を見比べて、俺の戦闘スタイルだと百五十cmの方は少し長すぎたかな? と思ってしまった。多分、使用頻度は百cmの方が多くなるだろう。まあ、五十cmの差が必要な場面が来るかもしれないし、八角棒は戦いに使うだけのつもりで作ってもらったわけではないので、あって困ることは無いだろう。もっとも、それはマジックボックスで保管できるからこそ言えることではあるが。

 刀の方も、思ったよりも軽いし削ったことで全体的に反りが少なくなったので、刺突武器として有効的に使えるだろう。

 これなら俺の戦闘スタイルにも合いそうだが……正直言うと、この刀を使うよりは作ってもらったショートソードの方が使い勝手がよさそうなので、やはり使用頻度は低くなりそうだ。


「包丁も、小さいのから大振りなものまであるし……これ絶対、途中で楽しくなっただろ」


 ボルスさんには二~三本くらいでお願いしていたはずなのに、出来上がったのはその倍以上の八本だ。多分、俺が包丁用にと渡していた材料だけでは足りなかったはずだ。恐らくは、報酬として渡していたものも使ったのかもしれないが……まあ、貰う時に何も言われなかったので、後から追加の素材を請求されることは無いだろう……多分。


「でも、正直言って、これだけの包丁を使いこなせる自信は全くないんだよな……何本かは厨房に置いておくか」


 包丁は小さいのが四本と中くらいのが三本、大きいのが一本なので、それぞれ一本ずつ確保しておいて、後はヴァレンシュタイン家の厨房に置いておくことにしよう。絶対に俺よりも、調理人やメイドたちの方が有効活用してくれるはずだ。

 それに、今度使った感想を聞いてみて、評判がいいようならボルスさんに頼んでまた作ってもらえばいい。もしかすると、何かあった時の贈り物に使えるかもしれないし。


 などと考えながら、広げていたものをマジックボックスに入れていると、


「ジーク、フランベルジュ伯爵が緊急の話があるようで、もうすぐ我が家に来られるそうだ。すぐに来てくれ」


 カラードさんが部屋に入ってきた。

 珍しくノックを忘れているので、かなり慌てているらしい。


「分かりました、すぐに行きます……ところで、何か話の内容は聞いているんですか?」

「いや、先程使者が来て、急で悪いが伯爵との面会の時間を作ってほしいと言われただけだ。ただまあ……」

「時期的に、ファブール関係ですかね?」

「その可能性は高いな」


 フランベルジュ家とは、一週間に一回くらいのペースで訓練を行っていて、三日後には四回目の訓練の予定が入っている。用があるのならその時でもいいし、そうでなくても使者を立てて緊急で強調しなくても、伯爵なら普通に遊びに来そうなものだ。

 そうしなかったということは、本当に緊急で知らせなければならない事態が起こったということだろう。ただ、


「もしファブール関連だとすれば、言い方は悪いですけど、伯爵よりも先にカラードさんに連絡が来ませんか?」


 当然ながら伯爵という位は子爵や男爵よりも上なので、その分だけ情報も早く多く入ってくるのは当然なのだが、カラードさんに限って言えば国王であるウーゼルさんの親友で最も信頼している人物の一人だ。

 そう言ったことから、今回のファブールのような俺に関係している情報なら、いち早くウーゼルさんはカラードさんに情報を流してくれるはずだ。

 

「それもあるから、正直伯爵の話が何なのかよくわからん。それに、最近の合同訓練は貴族の間でも話題になっているらしいからな。そのことかもしれない」


 カラードさんの言う通り伯爵の話の内容が分からないので、事前に打ち合わせが出来ないのだ。まあ、伯爵が今更そんな策謀を巡らせてくるとは思えないので、打ち合わせなどしなくても大丈夫だろう。



「ヴァレンシュタイン子爵、男爵、急に訪ねてきて申し訳なかった。少し想定外のことが起こってな。そのことを相談したいのだ」


 応接間に通された伯爵は、部屋に入ってくるなり困った顔をしながらそう言ってきた。


「フランベルジュ伯爵、まずはお座りください……それで、相談というのはファブールに関してのことでしょうか?」


 伯爵を俺たちの向かいの席に座るように勧めたカラードさんは、すぐに今回の目的を聞こうとしたが……


「いや、確かにファブールの動きがきな臭くなってきているのは確かだが、それに関しては俺よりも子爵の方が詳しいだろう。今回の話はそれに関してではなく……いや、関係はあるか。実は、俺たちが作ることになっている連合軍だが、それに加わりたいという者たちが来てな。それが……どうも男爵が目当てのようでな」


「ジークが? ……それはどういう意味でしょうか?」


 確かに俺は今注目されている貴族の一人ではあるが、わざわざ俺に近づく為に戦争に参加しようとするのは考えにくいが……


「それが、詳しいことは男爵と会ってから話したいと、向こうが言ってきてな。それでどうしたものかと思って、相談に来たわけだ。流石に男爵が目当てだと言い切った相手のことを、俺が勝手に決めていいものでは無いからな」


 俺と伯爵は同じ派閥であり、今回の連合軍の中心はフランベルジュ家なので、参加の決定権は伯爵にあるのだが、俺目的の貴族の参加を勝手に決めるわけにはいかないと考えてここに来たのだろう。


「俺が目的だと言い切っているのに参加させるか決めかねてここに来たということは、参加希望の家はそれなりに信用できるか、伯爵以上の権力を持った者からの推薦と言ったところですか?」


 なので、パッと思いついたことを聞いてみると、


「そうだ、その両方だ。推薦者はカレトヴルッフ公爵で、参加を希望してきたのは公爵家寄りの伯爵家である、『()()()()()()()』だ」


 伯爵は少し眉をひそめながらそう答えた。

 そしてその名前を聞いた瞬間、


「シドウ先輩……ソウルイーターの犠牲になった、シドウ・カルナディオの実家ですね……」


 俺は中等部時代にお世話になり、ソウルイーターのせいで二度と会うことの出来なくなった先輩を思い出した。


「この話が来た時に、一応俺の方でも軽く調べてみたが、カルナディオ家がジークを()()()()()という話は出てこなかった。ただまあ……」


「本心ではどう思っているか分からない……と言うことですね」


 そう言うと伯爵は、黙って頷いた。


「私の方でも、ジークがいなくなった後で独自に情報を収集したことがあるが、その時もそう言った話は聞かなかった。ただそれは、陛下がソウルイーターを利用したアコニタムに全面的な非があると発表した後だったからな……」


 カラードさんも調査はしていたみたいだが、やはり人の心の奥底までは分からないとのことだった。


「とにかく、一度会ってみましょう。そうしなければ、話は進まない。もしもカルナディオ家が俺に敵意を隠して近づいてくるというのなら、こちらとしてもそれなりの対処をさせていただくということで」


「まあ、それしかないだろうな。一応、ジークがカルナディオ家の者と会う時は、俺も同席しよう。俺を通して面会を求めてきたのだ。相手も嫌とは言うまいし、良からぬことを考えていたとしても、他家の同席者がいればそう簡単に手出しは出来ないだろう」


「伯爵、ジークをよろしくお願いします」


「まあ、いざとなれば、もしかすると俺が止めるのはジークになるかもしれんがな!」


 と言う感じで、俺とカルナディオ家の面会が決定した。

 伯爵が同席してくれるというのなら、俺としては心強い。何せ俺は、貴族間のやり取りなどは不慣れなのだ。

 下手をすると、俺が気が付かない間にヴァレンシュタイン家に不利な条件を突きつけられてしまうかもしれないが、伯爵がいれば回避が可能だろう。

 カラードさんも伯爵に頭を下げて感謝しているが、本当はカラードさん自身が付いてきたかったのだろう。ただ、今回の連合軍では俺がヴァレンシュタイン家を引き連れることになっているし、総責任者はフランベルジュ伯爵なので、自分が同行しない方がいいと判断したに違いない。


 相手側に日時の希望は無かったらしいが、ファブールのことを考えると早い方がいいので、明日伯爵の方から連絡してもらい、都合が付くようなら明後日でも構わないと伝えてもらうことにした。


「もし仮にこのままカルナディオ家が参戦するとなれば、軽く五千を超える軍となるはずだ。現状ではフランベルジュ家が千、ヴァレンシュタイン家が五百、他の十の貴族がそれぞれ二百~三百出すことで、四千近い連合軍を結成することになっていた。そこに別の伯爵家……単独での参加は考えにくいことから、別にいくつか公爵家寄りの貴族が参加するだろう」


「成程、公爵家と伯爵家の面子のことを考えると、少数の兵を引き連れての参加はあり得ない。かといって、陛下が認めている連合軍の面子を潰すことは出来ないということで、カルナディオ家はフランベルジュ家と同じ程度の数で参加するということですね」


 それに加えて、カルナディオ家と遺書に参加する貴族の兵数を合わせれば、楽に五千を越えるというわけだ。


「連合軍のことを考えれば、数が増えるのは大歓迎なのだが……合流する者たちの魂胆が分からない以上は信用することは出来ない。それに、連合軍が大きくなれば警戒する者たちが増える……それが心配ではあるな」


 確かに、規模が大きくなればファブールの警戒も強くなり、今代の雷の周辺も守りが固くなるかもしれない。それは避けたいところだが……


「ジーク、問題はそれだけではないぞ。何も敵はファブールだけとは限らない。アコニタムのことを忘れたか?」


 考えていたことが口に出ていたようで、カラードさんが険しい顔をしながら忠告してきた。


「そうだな。ファブールだけなら、連合軍の数が増えるのはさほど問題ではない。例え四千が五千に増えたとしても、敵にしてみれば大した問題ではないはずだ。ただ、連合軍が増えれば、陛下の派閥に反発している者たちが手と口を出してくる可能性が増える。奴らにしてみれば、自分たちの失敗の尻拭いを敵対派閥にしてもらう可能性が大きくなるからな」


 なるほど、最初に遭遇戦をして負けたのは、ウーゼルさんに反発している奴らだったのか……と思ったところで、


「そんな奴らが、よくウーゼルさんの派閥が連合軍を作ってことに当たるのを認めましたね」


 大きな疑問が出来た。


「まあ、その辺りは少し複雑でな。確かに最初にファブールの軍と交戦して負けたのは陛下の敵対派閥に所属している貴族なのだが、その後で占領された街を統治しているのは陛下の派閥に属する貴族なのだ。だから、俺たちが連合軍を作ると言っても、高々四千程の人数で今代の雷を相手にできるとは思っていなかったのだろう。しかし、勝てなくてもそれなりに相手に被害は出せるだろうから、その後で自分たちが出ればいいとでも考えたのだろう。しかし」


「カルナディオ家……その背後にいるカレトヴルッフ公爵家が出てくるとなれば、話は変わってくるということですね」


 言われて疑問は解決したが、その代わり、


「その通りだ。それが俺や伯爵が心配しているところだ……と言うか、ジークはあまりその辺りのことを調べていなかったのだな。連合軍などと言い出したのはお前なのだから、最低限の情報は収集していると思っていたのだがな……」


 カラードさんに呆れられてしまった。最近こういった失敗が多い気がする。


「まあ、それだけ今代の雷に集中していたということだろう。それに、俺としてはそれだけ信用されていたという風にも取れるな」


 ただ、伯爵は特に気にしていないのか、いつも通りの感じで笑っていた。ただ、気にしていないというよりも、伯爵の場合俺との比較対象がエイジである可能性がある為、エイジのやらかしと比べればマシだろうということも考えられる。


「話は戻るが、敵対派閥に知られれば、何かしらの妨害を受けるのはほぼ確実だと思っておいた方がいいだろう。その辺りのことも頭に入れた上で、カルナディオ家と面会しなければならない。もしも信じられないと判断した場合は……カレトヴルッフ公爵家との仲がこじれることになるとしても、参加を断らなければならない」


 妨害を受けた結果、連合軍が解体ということになってしまうとこれまでの準備が全て水の泡となるので、そうなるくらいなら公爵家の介入を断った方がいいということだ。

 ただ、そのせいフランベルジュ伯爵家に迷惑が掛かってしまうのは避けたいが……その辺りのことは俺やカラードさんでは直接手を出すことが出来ないので、ウーゼルさんやアーサーに頼むことしかできないだろう。


「まあ、そう言うわけだ。今回連合軍に参加する貴族たちには、妨害行為に十分注意させ、何かあればフランベルジュ家かヴァレンシュタイン家に知らせるというように通達しておいた方がいいだろう。もっとも、現段階では気をつけろしか言えないけどな」


 という伯爵の言葉でこの話は一旦落ち着き、次の話題へと移ることになった。


「そう言えば次の合同訓練だが、急で悪いがエリカが不参加となった。その理由は……まあ、察してくれ。その代わりと言っては何だが、エイジの方はいつも通り連れて行く、近頃疲れが溜まって体中が痛いとか抜かしていたが、無理やりにでも引っ張ってくるから今回も付き合ってやってくれ」


 その言葉で、何となく察した俺たちだったが……確実に男性陣が踏み込んでいい話題ではないので、それ以上エリカの話題には触れず、代わりに人身御供にされていそうなエイジの話題に移った。

 ちなみに、伯爵はエイジを未熟だと言って低めに評価しているが、それは親だから厳しい目で見ているからだろう。現に伯爵家の騎士どころかヴァレンシュタイン家の騎士の間でも、エイジの評価は高い方だ。何せ、中等部(あと少しで高等部だが)にもかかわらず、大の大人でもきつい訓練に、愚痴を漏らしながらもついてきているのだ。

 それに、未熟といってもそれは比較になるのが同じ訓練をしている大人の騎士ばかりなせいであって、この数回の訓練で同年代の中では頭一つとまではいかないにしても、しばらくは負けない程度の実力を身に付けたはずだ。


「ご子息も、一回目の時よりも動きに切れが出てきていますから、この調子なら高等部の主席も狙えるでしょう」


「確かにそうなってほしいが……腕力だけでは無理だし、実技にかまけて勉学をおろそかにされては困る。将来の為にも、今後は勉強の方も同様に叩き込まないとな」


 確かに、総合で一位を狙うとなれば座学の方も大事だが……今からだと詰め込む時間が短いだろう。

 まあ、伯爵もその辺りのことは分かっているだろうから、叩き込むというのは卒業までに主席を取らせるという意味だろう。


「それでは、そろそろ帰るとしよう。ジーク、もし明日の内にカルナディオ家と話が付くようなら、多少時間が遅くなっても知らせるようにするが、構わないな?」


「お願いします」


 遅くなるかもとはいっても、流石に日が変わる時間帯にということは無いだろう。まあ、俺はその時間でも起きていることが多いので、伯爵やカラードさんたち迷惑が掛からなければ構わないが……多分、そんな遅くなることは無いだろう。

 何せ、向こうから持ってきた話だし、会うと伝えた後で時間がかかるような手続きなどは無く、せいぜい会う場所はどうするかとか、伯爵が同席する許可を取るくらいなものだ。

 会う場所や伯爵の同席などでもめるようなら信用できる相手とは思えないので、俺としては断るのに十分な理由となる。


 伯爵を見送った後で俺は部屋に戻ろうとしたが、まだ昼を少し過ぎたくらいの時間だったことを思い出し、どうせならもう一度ボルスさんの店に行って、追加の注文をしてくるかと考え、カラードさんにボルスさんのところに行くついでに飯でも食べてくると伝えて部屋に一度戻り、外出の準備をしてから玄関に向かったところ、


「……何でいる?」


 そこには外出の準備を済ませたガウェインとディンドランさんがいた。


「何って、護衛に決まっているだろ」

「男爵を一人で街歩きさせるわけにはいかないからね」


 などと言っている二人だが、目的は明らかに昼飯だろう。

 なので、


「護衛ならランスローさんに頼むとしよう」


 と、一番信用できる人に頼もうとしたのだが、


「残念だが、ランスローは居ない」

「副団長は、奥さんと出かけているわ」


 ランスローさんは奥さんとデートしているらしく、二人は何故か勝ち誇った顔をしていた。

 それならと、ケイトやキャスカ、マルクやロッドの名前を出してみたものの、二人は自分たちの方が何かあった時に対処できると言い張った。ただ、


「それなら、カラードさんたちに何かあった時の為に、二人はなおさら残っていないといけないんじゃないか?」


 と正論をぶつけてみたものの……すでにカラードさんたちからの許可は得ていると、俺の反論を先回りして潰していたのだった。


 結局、二人がうるさく騒いだせいでカラードさんが出てきて、仕方がないから二人共連れて行けと命令されてしまった。

 これでは俺は護衛対象ではなく、二人の保護者のようなのだが……と思ったが、割といつものことのような気がしたので、仕方なく連れて行くことにした。


 その後、ボルスさんの店に着いて追加の注文をすると、ボルスさんからは何故こんなに早い追加注文なのかと問われたが、理由を話すと爆笑された。

 まあ、ボルスさんもカラードさんたちが欲しがる可能性は十分あると考えていたようで、準備だけはしていたようだ。ただ、ここまで早くに来るとは思っていなかったようだが。


 そして、使いの注文だが、今回は前回よりも鱗や骨の割合を下げたものを量産してもらうことにした。その方が、何かあった時に手放すことになったとしても惜しくはないからだ。

 ただ、それとは別に、前回と同じような割合の者も作ってもらうことにしたが……こちらはダガーのみ十本追加で、他は各種一振りずつにした。それと包丁だが、そちらは小さいのを中心に作ってもらうことにし、大きいのは今回は無しだ。


「前回はドラゴンの素材と鉄を半々にしていたが、今回は素材を二~三割くらいでいいな? それなら前回の倍くらいの数が出来る。報酬も、前回と同じでいいぞ。ただし、数を作る分、今回も他の奴らに手伝わせるが構わんな?」


 と言った感じで、追加注文の方は無事に終わった。

 そして、ガウェインたちの待ち望んでいた昼食だが……


「これはこれで美味いんだが……」

「思っていたのと違うわね……美味しいけれど」


 屋台で目についたものを買い食いするとは思っていなかったらしく、二人はどことなく不満そうにしていた。もっとも、そう言いながら俺の金で俺よりも食べていたけれど。


 ちなみに、その買い食いの最中、街で奥さんとデートしていたランスローさんと遭遇し、二人はランスローさんをからかおうとしていたが……冷たい視線と殺気を向けられて、即座に俺の後ろに隠れていた。

 なお、ランスローさんの奥さんは領地と王都を行ったり来たりを繰り返している為のと、二人が結婚したのは俺が学園にいる時だったこともあり、何度か会ったことがありはするもののしっかりと話をする機会がなかったので、お近づきの印と言った感じで菓子店の『フェアリーピコ』を紹介すると、かなり喜ばれた。

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カルナディオ家の人たちはジークさんにどんな感情を抱いているのでしょう? 本当に悪かったのは誰なのか、理解はしていても納得は出来ない というのは自分にも覚えがあるので、ジークさんに対する悪意を抱いてしま…
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