1.始まりの夜
暗い‼︎兎に角暗い‼︎
そんな感じで細々とやっていきます。
初投稿となります。
誤字等御座いましたらご指摘頂けると幸いです。宜しくお願い致します。
この世界は理不尽に満ちている。
そんな事を、きっと誰しも一度は考えた事があるだろう。
悪い事など何一つしていないのに、何故か自分が悪者にされていたり、やることなす事悉く裏目に出たり。
別に、珍しくもなんともない、有り触れた出来事だ。
だから、大抵の場合は内心憤慨しつつも、押し込めてまた明日を迎えるのだ。
理不尽と同じ数だけ、幸せだと思える瞬間が訪れると信じて…
〜〜〜
「んじゃ、行ってくるわ。今日はカレーっしょ?」
朝。ザ・サラリーマンである俺、伏見 聖夜は、妻である希美に声をかける。少しヒソヒソ声なのは、未だに爆睡中の4歳の娘と2歳の息子を起こさない為だ。
「うん、美希と悠二も昨日からカレーカレーうるっさくて…」
「カレーは子供と男のロマンだからなー‼︎」
まぁ、昔からカレーは飲み物とはよく言ったもんだ。カレーの日は米を大目に炊くあるある。
「意味わかんねー…まぁ、作るの楽だし良いけど。そういう訳だから、今日は早く帰ってこいよー‼︎」
ジト目で呆れた様に言われようとも、意味など無いのだから仕方ない。カレーが好きだ。だからカレー食べたい。晩御飯がカレーだと分かっていればワクワクするのだ。理由?知らん‼︎
「うーす。流石に今日くらいは何とか早く切り上げるわ‼︎じゃあ行ってきます‼︎」
今日、12月24日は、我々夫婦の結婚記念日でもあるのだ。早いもので、もう5年。子供の夜泣きや、体調不良、夫婦喧嘩…バタバタと慌ただしく過ごしていたら、もう28歳になっていた。
妻からは「家事に協力的じゃない」だの「もっと有給取って家族との時間を取れ」だのと言われることもあるが、なんだかんだで仲良く幸せな日々を送れている。
多少の理不尽さを感じる事はあるが、そんな事を考えるより、幸せの方が大きいのだから問題ないのだ。
〜〜〜
「やっべ、めちゃくちゃ遅くなっちまった…電話も出ないし、ブチ切れ説教コースか完全無視数日継続コースか…うぁあぁぁ‼︎なんでこんな日に遠方でクレーム多発すんだよ‼︎」
結局、23時を回る頃になり、ようやく帰宅する事が出来た。途中、コンビニでショートケーキを4個購入し、揺らさない様慎重に、且つ足早にマンションへ帰宅。
オートロックのエントランスを鍵を差し込み解錠し、エレベーターのボタンを押し、降りてくるのを待つ。
こういう時の待ち時間って異様に長く感じる不思議…。
「…ん?」
エレベーターが5Fに登り、ローンが28年残っている我が家へと辿り着いた。
鍵を開けようとするが、いつものガチャリという手ごたえがない。日頃から度がすぎる程の心配性な希美が鍵を掛け忘れるとは考えにくいが…
とは言え、今はそれどころではない。
家内のあらゆる部屋に、電気が点いている様子はない。まずは冷蔵庫にケーキをしまい、寝室を覗く事に決め、玄関から真っ直ぐ進んだリビングのドアを開ける。
「ッ…⁉︎」
ドアを開けた瞬間、一気にリビングの空気が室外へと流れ出す。
一言で表すなら、悪臭。
強烈な吐き気に襲われるも、我が家にこんな臭いの元凶があるはずも無く、口元を抑えながら電気のスイッチを入れる。
そして、明るくなったリビングに広がっていたのはーーー
「う…ゔぉエッ……ゲ…ウェ……っ…」
意味が分からない。何だこれは。何の冗談だ⁉︎まるで理解が出来ず、ケーキを床へ落とすと同時に、耐え切れずに吐き出してしまう。
リビングのテーブルの上には、よく知った衣服を着た、よく知った3人のー
首、両手、両足、胴体
が、綺麗に、並べられていた。