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同類

 来る、そう思った。

 次の瞬間バルバトスが駆けた、気付いた時にはトリに肉薄しており、アジンが初動と同時に引き金を絞って撃ち出した弾丸が無人の輸送車に突き刺さる。弾丸が通過する頃、バルバトスはその場所にもう居ない、その速度は瞬間移動に等しかった。

 いや、初動が滑らか過ぎるのだ、速いと言うより鋭い。意識の間隙を縫ってバルバトスは銃口をトリに向ける、だがBANKERとて一人一人が豪傑の人間、容易く撃たせなどはしない。


「ン、のッ」


 トリのガトリングが重低音を打ち鳴らし、弾丸の面制圧が始まった。火を噴き鉛をバルバトスに浴びせる。しかし彼に着弾するよりも早く、バルバトスはベリーロールの要領で宙を飛んだ。射線を飛び越えながら的確にトリガーを弾く。その動きは一人だけ人外染みていた、最早映画の世界の住人だ。

 バキンッ! とガトリングの重低音が鳴り響く中、甲高い射撃音。同時にトリの顔面が弾け、バイザーに弾痕が残った。頭部が大きく逸れ、ガトリングの照準がブレる。


「トリッ!」


 充嗣は叫び、駆け出す。獣の様に着地し、同時にトリに対して追撃を仕掛けようと銃口を向けていたバルバトスが充嗣の方に顔を向ける。銃口は滑らかにその標的変更した。ボッ! と視界に光が満ちる、強烈なマズルフラッシュが充嗣を包み、弾丸が飛来した。


 バルバトスのjackはコルト・パイソンを超える怪物拳銃、充嗣はゲーム時代に経験した英雄との戦闘を脳裏に浮かべていた。奴が弾丸を撃ち込んでくる場所を、充嗣は良く知っている。駆け出すと同時にブレードの出力を最大に、そして顔面の前で真っ直ぐ構え上部をもう一方の手で抑える。両腕を固定しインパクトの瞬間のみ重心を下に、地球に根を張るイメージ、膝の関節を曲げ衝撃に備えた。


「来いッ!」


 叫んだ瞬間、両腕に強烈な衝撃。同時に何か強烈な金属同士が擦れ合う音、目の前で盛大に火花が躍り、左右を小さく尖った何かが飛び出していった。ソレは後方にあったフロアの支柱に着弾し砂煙を巻き起こす。


「ハッ、何だそれは、弾丸を両断か? ジャパンのサムライって奴かね?」

「うるせェッ、叩き斬ってやるよ、地獄の畜生がッ!」

「……ドヴァ(二番)、前撃ち合った時とは随分雰囲気が違うな――まぁ良い、どうせ全員殺すのだ」


――来たまえ盗人、諸共沈めてやろう


 バルバトスが告げ、その引き金を再度引き絞る。その瞬間充嗣は横に回転しながら回避行動、顔面スレスレを鋭く弾丸が穿ち、充嗣はブレードのトリガーを握った。振り返ると同時に腕を全力で薙ぎ、ロックの外れたブレードが急激にそのレンジを伸ばす。余りの速度にワイヤーが悲鳴を上げ、グリップとワイヤーの摩擦で火花が散った。


 ブレードが飛んでくるなんて、予想も出来ないだろう。しかし、バルバトスは充嗣が回転した瞬間何かを悟り、腕を薙ぐ頃には上体を更に深く沈め、半ば地面に伏せる様な恰好を取っていた。

 その頭上を凄まじい速度でブレードが通過、熱風がバルバトスの頬を撫でる。


「面白い機構だ」


 腕が伸びきった充嗣は、悠々とブレードを避けたバルバロスを視界に収め、憎々し気に彼を睨めつける。Jackが充嗣に向けられ、トリガーを引き絞る瞬間――バルバトスはその場から勢いよく飛びずさる。その一拍後、フローリングにボッ! と三つの穴が穿たれた。


「ッチ」


 アジンが舌打ちを零し、再度射撃を敢行する。しかし右へ左へ、上手く障害物を盾に弾丸を避けるバルバトスには当たらない。勘が良いのか、いや、もうそんなレベルで済ませられる能力ではない。奴はどこに弾丸が飛来するのか理解している様に動く、まるで超能力だ。

 ゲームでは幾ら弾丸を撃ち込んでもビクともしない重装甲だったが、この世界ではそもそも『弾が当たらない』らしい。重装甲に加えて破格の回避性能、どういう難易度調整だと怒鳴りたい気持ちだった。


「トリッ」

「問題ねぇッ!」


 頭を軽く振って再度ガトリングをバルバトスに向けるトリ、バイザーは殆ど欠けていて、恐らく次弾は防げないだろう。ライフルの弾丸を防ぐバイザーがこれだ、少なくとも拳銃の威力では無い。

 トリのガトリングが再度火を噴き、腹に響く轟音を鳴らしながら障害物を粉砕、バルバトスを襲う。しかし彼の予測不可能な動きは銃口を定めさせず、時折飛んでくる弾丸は正確に人の急所を狙って来ていた。特にガトリングの反動を殺す為に動けないトリは良い的だ、何発かの弾丸がトリの各所で弾け、その度に呻き声が上がった。しかも狡猾に、アーマーの繋目、比較的防弾線維の薄い関節部位を的確に狙って来る。


「っ、畜生、当たらねぇッ、もう弾が無ェぞクソが!」

「俺が行く!」


 充嗣は叫び、トリガーを放してブレードを手元に戻す。同時に自分の胸を強く叩き、死地に飛び込む覚悟を決める。いつだってそうだ、BANKERは修羅の道を征く、普通の方法じゃ、常人じゃ届かない領域、自ら死地へと身を投げ、死の瀬戸際に活路を見出してこそ生き永らえる。

 今、この時だけは恐怖を捨てろ、矜持も捨てろ、充嗣ではなく、巳継で。


「――ぶっ殺すッ!」


 両足の筋力補助が唸りを上げ、グンッと充嗣の体が加速する。トリの脇を風の様に通り抜け、jackの弾倉をリリースしたバルバトスへと飛び掛かった。充嗣の声を聞いたトリは既にガトリングの雨を止めている。


「お仲間の援護は要らんのかね?」

「援護無用ッ!」


 ブレードを一度引き、ギチリッと筋肉が唸りを上げる。そして限界まで力を籠め、解放。凄まじい気迫と共にブレードが突き出された。それは肉眼で捉えられる限界の領域、バルバトスが一瞬目を見開き、次の瞬間にはブレードとjackが火花を散らした。

 あの渾身の突きを見切り、グリップ部分にjackの遊底を重ねたのだ。僅かに逸れたブレードの矛先はバルバトスの戦闘装甲(バトルドレス)、その右肩を掠めるに留まる。元より一撃で仕留められるなどと思ってはいない、ブレードを素早く引き戻しつつ左腕で肘打ちを繰り出す。


 それを腕で防いだバルバトスが、逆の手で掌打を充嗣目掛けて放った。ゴッ! と鈍い音、掌打は充嗣の首元に炸裂し、一瞬息が詰まる。強烈な一撃だ、だがその力は利用も出来る。穿たれた力を回転に利用し、一歩後ろに退きながらその場で一回転、ブレードに力を載せて一閃。僅かに上体を逸らしたバルバトス、その引き戻した腕の装甲に刃が食い込み一瞬で溶断した。ジッ! と高温によって装甲板が溶断され、欠片が宙を舞う。


「やる」


 装甲板が地面に落ち、甲高い音を鳴らす。その瞬間、クンッとバルバトスの上体が大きく逸れた。同時に視界外から強い風音、充嗣の第六感が警鐘を鳴らし、本能の赴くまま上体を沈めた。その一センチ上をバルバトスの強烈な蹴りが通過、風が充嗣の頬を撫でる。


 半回転したバルバトス、その背後から突き殺してやるとブレードを再度構えた瞬間、バルバトスの腰辺りから銃口が見えた。背を向けた状態での背面撃ち(バックショット)、マズいと思った瞬間、ボッ! とマズルフラッシュが視界を覆う。

 そしてコンマ一秒以下でバイザーに着弾、首が衝撃で仰け反り、そのまま大きく後退った。視界に光が弾け、ピシリと視界に罅が入る。

 何故弾丸が飛んでくるのだ、リリースの瞬間は見ていた、この数秒で弾倉を嵌めたのか? あり得ない。


 何て奴だと充嗣は思った、首が衝撃で捥げそうだ。奴にもスキル補正が存在している、そう確信する、こいつは充嗣やBANKERと同じ類の人間だ。

 衝撃は中々抜けきらない、視界で光が点滅し脳が揺らされた。ブレる視界の中で、バルバトスがjackに弾倉を装填、一発空撃ちし薬室への装填を行ったのを見た。どうやら弾倉をリリースしたのは、弾切れだと錯覚させる為だったらしい。薬室に一発だけ残していたのだ。




 一日3000字を目安で、十日連続投稿しても30000字、取り敢えず一日1000~2000字は最低書いて、土日で一気に一万字位書けばストックはたまる筈、がんばれ明日の私。


 英雄のスペックですが、大体人外にスキル値上乗せした完全チート人間だと思って下さい。

 分かり易い例を出すなら「性欲を持て余す」の方のスペックに近いモノを持っています。

 肉体的には「退かぬ、媚びぬ、省みぬ」の方を想像して下さい。

 更に精神は「終末は近い」の看板を持って歩く、精神的超人に匹敵します。


 皆さんの頭の中に出て来た人が大体バルバトスです。

 凄そうですね(小並感)

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