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決断

 投稿遅くなってすみません、ちょっと旅行したりPCがぶっ壊れて修理に出したり、携帯が壊れて新しいの買ったり忙しかったもので。

 何とか姉のpcを借りて投稿できました。



「リロードッ!」

「おい、何だこのキチガイ野郎はッ!? こんな硬いなんて聞いてねェぞ!」

「グレネードッ!」


 充嗣から距離をとった隊員が胸元のベストポーチから手榴弾を取り出し、充嗣目掛けて投擲した。周辺で射撃を繰り返していた隊員もすぐさま反応し、大きく後退して物陰に隠れ、その場に伏せる。中央で立ち上がっているのは充嗣のみ、足元に転がった三つの手榴弾が炸裂し、地面が大きく爆ぜた。BAKER用に火力を調整したソレは破片だけでは無く、爆発そのものでも相手を殺傷できる威力を秘めている。


「ドヴァッ!」


 背後で援護射撃を行っていたトリが叫ぶ、その声は焦燥に駆られている。歴戦の猛者であるトリがマズいと思う程の爆発であった、しかし。


 爆煙を引き裂きながら充嗣は飛び出す、その標的は今しがた手榴弾を投擲した隊員。爆発の威力が高かった為、バイザーに罅が入りアーマー表面も黒ずんでいる、が。

 

 無傷。


 あれ程の爆発を受けながら充嗣の戦意は衰えていなかった。


「冗談だろ」


 充嗣を目の前にした隊員が呟き、その顔面に拳が突き刺さる。半ば地面に叩きつけられる様な形で隊員が反転し、殴り倒した隊員のホルスターから素早く拳銃を抜き出した充嗣は顔面に向かって二発。

 近くに居た隊員にも連射、突然の事に呆然と突っ立つ若い隊員の眼球辺りに着弾し、射殺した。


「がぇ、はっ………」


 充嗣は喘ぐように呼吸をする、先の爆発で肺の辺りが強く圧迫された、恐らくゲーム画面で言えばHPゲージが半分程度削られているだろう。幾らアーマーをスキルで底上げしていると言っても、あれだけの弾丸を喰らい続けながら火力底上げの施された手榴弾は辛い。ゲーム時代では弾切れで何十人もの敵に囲まれる事など多々あった、そういう時充嗣はいつも戦車の如く特攻し、隊員を殴り倒して武器を奪っていたのだ。


 しかしこの世界はゲームであって現実リアルだ、この世界で眉間に弾丸を受ければどうなるかなど、考えるべくもない。


「し、死んで……」


 たまるか。

 充嗣は胸の内で独り叫び、ハウンド・ドッグへと突進する。充嗣の奮闘を見てチトゥイリとアジンを狙っていたRWSが矛先を変え、充嗣の側面に弾丸の雨が飛来した。地面を抉りながら充嗣を正確に射抜く鉛の嵐、装甲と繊維が悲鳴を上げ派手に火花を散らす。


 連続で迫る衝撃は充嗣を地面に押し付けんと横合いから凄まじい力を加えるが、ここで地面を這えば一巻の終わりだと理解していた。

 故に充嗣は拳銃を乱射しながら突っ込み、隊員を巻き込む。


「嘘だろッ」


 ライフルを間近で連射する隊員に手を伸ばし、充嗣は無理矢理引き寄せた。充嗣は隊員を肉壁としてRWSの射線上に押し出したのだ。充嗣のように重厚な装甲を持たない隊員のアーマーは容易く弾丸によって引き裂かれる。幾つもの弾丸が肉体を突き破り、ものの数秒で屍と成り果てた。弾丸が顔面を吹き飛ばし、被弾の衝撃が充嗣の腕を震わす。


「チトゥイリッ!」


 後方でトリが叫ぶ、そして次の瞬間、装甲車付近のブッシュが弾け飛び、凄まじい速度で尖った何かが突き抜けた。ソレはRWSのカメラ部分を覆っていた強化ガラスを突き破り、そのまま操作カメラを貫通、内部で小爆発を起こした。ガチャンと、重々しいコッキング音が鳴る。


「敵RWS沈黙……っ」


 対物ライフルを構えたチトゥイリがトリに親指を立て、アジンが隣のブッシュから飛び出す。そのまま地面を滑るように走り、MP5で近くの隊員を掃射。三人の隊員が体のどこかしらに弾丸がめり込み、その場に転がった。


「マルドゥックなら何とかしてくれる! 耐えろ、今はただ生き残るんだッ!」


 MP5を投げ捨て、地面に転がった隊員のライフル―― M16を拾い上げ、周囲の隊員目掛けて連射する。トリも充嗣の近くに居た隊員を射殺すると、ライフルを拾い上げて戦線を押し上げた。


 充嗣は腕の中で既に息絶えた肉壁を放り捨てると、拳銃―― M11を手に数十メートル先の隊員目掛けて射撃。周囲には二十以上の死体が転がっていた。


「へへ、ドヴァ、お前やっぱスゲェよ、前もヤバかったが今回のはマジでイカしてたぜ、実は従軍してたとか、元特殊作戦群だとか無いよな?」

「そんな訳ないだろう……けど、流石に疲れた」


 充嗣の傍にやって来たトリが、トリガーを引き絞りながら充嗣を称賛する。充嗣としてはゲーム時代と同じ行動をとっただけなので、特に思う事は無かった。


 先程と比べると宙を飛び交う弾丸の数は雲泥の差だ。充嗣達が装甲車二台分の隊員を始末したからだろう、残り四台分の隊員は遠めから射撃するに留まっている、流石にあの混戦を見て突っ込む勇気は無い様だった。それはそれで好都合だ、充嗣はその場に転がっている隊員の死体からマガジンを回収する。拳銃を投げ捨ててM16を拾い上げると、弾丸の詰まったマガジンを嵌め込んだ。


「トリ、取り敢えずそこらの死体から弾薬を集めてくれ、援護する」

「了解相棒、ありったけ集めてやるよォ」


 トリがライフルを片手に死体を漁り出し、充嗣は手でアジンに合図を出す。アジンはその合図を見て頷くと、チトゥイリに二、三言話し、バンに突っ込んだ装甲車の裏へと回った。途中死体を漁ってマガジンを確保し、充嗣は断続的に威嚇射撃を行いながらトリと後退する。

 アイアンサイトの向こう側に居る隊員が、一人頭を跳ね上げて逝った。運よく当たったらしい、ナイスショット。


「ドヴァ、持てるだけは持ったぜ」

「よし、後退しよう」


 充嗣はマガジンにある分だけの弾薬を吐き出すと、そのままトリに続き装甲車の裏側に滑り込む。身を隠す瞬間フロントに何発もの弾丸が撃ち込まれ、それからピタリと射撃が止まった。


「皆、怪我は無いか?」


 アジンがM16にマガジンを嵌め込みながら聞いて来る。チトゥイリは「大丈夫」と頷き、トリは「かすり傷だ」と笑った。二人ともアーマーが凹んでいたり、服が裂けていたりするが怪我は無い様だ。アジンもマスクに罅が入っていたが、声には力が籠っている。


「ドヴァ、お前は?」

「……多分、全身痣だらけだ」


 僅かに冷汗を掻きながらそんな事を言うと、「……鉛弾がぶち込まれなかっただけ、マシだと思うべきか」と彼は苦笑した。充嗣は無数の弾丸を受けた為、正直言うと少しつらい。無論本当に弾丸が貫通するよりは百倍はマシなのだけれど。


「取り敢えず、ほら、拾ってきたマガジン」


 トリが両手一杯に抱えたマガジンを地面にバラバラと落とし、一人一人に配る。しかしチトゥイリは抱えた対物ライフルを見せ、「私にはコレがあるからいい」と首を横に振った。普通は人間に向かって撃つモノではないが、生死の前に倫理や道徳などクソくらえだ。


「そうか、じゃあチトゥイリには後方支援を頼む」

「けど、これからどうすンだよ、マルドゥックに連絡も付けられねぇし、このままぼうっとしてたら増援が来るンじゃねぇか?」


 トリがアジンを見てそう問いかけ、耳元の無線機をコツコツと叩く。未だにマルドゥックとの通信は回復しておらず、砂嵐が聞こえて来るだけだ。充嗣も十中八九、このままでは数に押し切られると思っている。増援は来るだろう、連中はBANKERを潰す為ならば何人でも送り込んでくる筈だ。


「……敵の装甲車を盗んで、回収地点まで自力で走るって手もあるわ」


チトゥイリが自身の考えを提示し、アジンが押し黙る。確かにその手もあるなと充嗣は納得した、何もマルドゥックの救援を待つ必要は無い、走行可能な装甲車を頂戴してさっさとホットゾーンを離脱してしまうのも手だ。


「コイツ、動かねぇかな?」


 トリが自身の背を預けている、バンに突っ込んだ装甲車を叩いた。全速力で突っ込んだ為、フロントは大きく凹んでしまっているが、タイヤは無事だ。エンジンが動くならチャンスはあるかもしれない。


「アジン、どうする?」


 充嗣が問いかける。アジンは俯き、何かを考えている様だった。全員の視線が彼に集中する、如何に策を挙げようと採用するかどうかは彼次第だ。BNKERの実行部隊に於いて彼はリーダーであり、司令官なのだ。決定はアジンが下す。


「……この場で粘ろう」


 アジンはこの場所で持久戦に望む決断を下した。


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