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壊滅的打撃

この作品はFPSで銀行強盗をするゲームを題材にしていますが二次創作かと言われると多分違うと思います。VRゲーム転生ものでも実際のゲームを元にしていたりしますし、ダイジョブダイジョブ。

単語とかかなり使ってるけどイケルイケル。

困ったときはコレ。


この物語はフィクションであり実在の人物団体ゲームとは一切関係ありません。


これで一安心なんだぜ。


 無線機から怒鳴り声が聞こえた、マルドゥックの声じゃない。今回マルドゥックが雇ったバンのドライバーだ、彼が無線機越しに口汚く怒鳴っていた。

 充嗣の体は瞬時に反応し、マスクを素早く身に着け銃を手に取る。ソードオフ・ショットガンの弾薬を確認し、銃身を跳ね上げる。「エネミー!」とミル―― アジンが叫んだ。トリとチトゥイリがマスクを被り、バンの後部扉を開け放つ。


 そこで目に飛び込んで来たのは私兵隊のエンブレムを掲げた戦闘ヘリ、ソレが超低空飛行で森林スレスレを此方に向かって飛んできていた。後退角のメインローターが四枚、細長いシルエットが白く霞んだ空に栄える。


「AH-64、アパッチだッ! M230 30mmチェーンガンを積んでやがるッ!」


 一番行動が早かったのはトリ、腰のホルスターから拳銃を取り出すとアパッチに向かって射撃を開始する。しかし9mm弾ではボロン・カーバイト製の装甲板を貫けない、それどころか弾丸が届いているのかすら怪しい。


「何で接近に気付かなかった!?」

「そんなの後で良いッ! アイツを落とせ、これじゃ逃げ切れねぇぞ!」


 弾を撃ち尽くしたトリがマガジンをリリースしながら叫ぶ、アジンも後悔よりも対処が先だとばかりに、MP5を持って応戦する。パパパパッ! と連続した破裂音が車内に響き、薬莢が次々と地面に転がった。しかし弾丸は装甲板の上で踊り、弾かれる。

 充嗣もソードオフ・ショットガンを構えて引き金を引くが、着弾した装甲板に黒ずみを付けるだけに終わった。距離による威力減衰が凄まじい、もともとHE弾の有効射程距離は50mが精々なのだ、近距離では強い威力を発揮するHE弾でもこの距離でハードスキン相手では歯が立たない。


「こんな豆鉄砲で落とせるかッ!?」

「どいてッ!」


 アジンが悲鳴に近い声を上げると、背後からチトゥイリが進み出た。見れば手に大きなライフルを抱えている。布で覆われたソレは見た事のあるシルエットだ。


「コレなら堕とせるでしょう!?」


 チトゥイリが布を取っ払うと、その下からPMGヘカートⅡ―― 俗に言う対物ライフルが顔を出した。700mmの銃身長を持つスナイパーライフル、チトゥイリが50BMGの弾丸をマガジンに詰め込み、それを嵌め込んだ。コッキングレバーを引くと重々しい金属音が鳴る。なるほど、確かにこの大口径ならばチタンの装甲板でも抉るだろう。強化ガラスなど容易く撃ち抜く。


「アンチマテリアルか、用意が良いなチトゥイリ!」


 トリが手を叩いて喜び、チトゥイリが「喜ぶ暇が有ったら肩でも貸しなさいッ!」と怒鳴る。そうこうしている内にアパッチが唸りを上げ、30mmチェーンガンが火を噴いた。地面が次々と破裂し、バンへと迫る。30mmの弾丸など、この身に受ければひとたまりも無い。恐らく直撃すればミンチ待ったなしだ。

 HERの直撃を耐えられる対爆防弾スーツにスキルで数値を上乗せしたとしても、恐らくものの数秒でアーマーが逝く、その先は死あるのみ。


「うぉぉぉおお!?」


 迫りくる30mmの洗礼に充嗣は叫び声を上げた。トリが膝を着き、その肩にライフルを乗せたチトゥイリがアパッチと対峙する。そして二発の巨大な弾丸がバンの天井を抉った瞬間、対物ライフルが火を噴いた。

 凄まじい反動とマズルフラッシュが充嗣達を襲い、臓物が一瞬持ちあがる。その先に低空飛行でこちらを追跡していたアパッチ、搭乗者を守る強化ガラスがピシリと円型に割れた。


ッた!」


 トリが叫び、瞬間アパッチが大きく後退する。ガラス越しに操縦者パイロットの血がべっとりと付着しているのが見えた。機首が上を向き30mmチェーンガンが真っ直ぐ弾丸を吐き出す。バンの天井から更に先の道まで、次々と破裂し遂にアパッチが森林に堕ちる。メインローターが宙を舞って、折れたテイルローターが木々に突き刺さった。充嗣は30mmチェーンガンの猛威に目を瞑っていた、アパッチが墜落し盛大に土ぼこりを巻き上げる様を確認して、「皆無事か!」と叫ぶ。


「あぁ、ピンピンしてるぜ」

「っ、随分風通しが良くなったな……」

「ほんと、戦闘ヘリは嫌いだわ」


 三者三様、どこか安堵した声で返事をする。充嗣は全員無事である事に胸を撫で下ろし、次いで未だ自分達は窮地を脱していない事を知った。

 充嗣達の乗ったバンが急ハンドルを切り、横に並ぶ木々へと突っ込んだのだ。

 

 金属板の拉げる音とエンジンの砕ける音、慣性の法則で充嗣達はバンの奥へと吹き飛ばされ、後頭部を強く打つ。頭部保護のヘッドギアが無ければ出血してもおかしくない衝撃だった、充嗣に覆い被さる様にしてチトゥイリが突っ込んでくる。すぐ横にアジンとトリが転がった。

 一体なんだ、充嗣はチトゥイリを受け止めながら叫ぶ。アジンがトリの巨体を退かしながら「車が止まったぞ!」と焦燥した声を上げた、充嗣はチトゥイリに怪我がないかを確認し、すぐに飛び出す。幸いにしてチトゥイリに怪我らしい怪我は無かった。


 もはや跡形も無く吹き飛んだ扉を潜り、充嗣は車両の横に回り込む。充嗣の目に無数の弾丸に抉られた運転席が飛び込んできた。運転手ドライバーは即死だ、脳天から下半身に掛けてバックリと裂けていた。ハンドルも粉々になっている、これではもう動かない。アパッチのチェーンガンが運悪く直撃したのだと分かった。


運転手ドライバーがやられた、車も動かない」

「クソッ! マジかよ、マルドゥック、おいマルドゥック!」


 充嗣に続いてトリもバンを降り、惨状を確認するや否や無線機に向かって叫ぶ。しかし無線機からは何の応答も返ってこなかった、無機質な砂嵐が繰り返されるだけ。そう言えばアパッチ襲撃の時もマルドゥックは何も言わなかった、否や汗が充嗣の背を伝う。


「おい、どうなってやがんだ!? 無線機がイカれたか!?」

「違う……」


 トリの言葉に充嗣は首を横に振った。充嗣は自身の無線機に耳を澄ませた、けれど何も聞こえてこない。マルドゥックがこんな窮地に何もしないだなんて、そんな事はあり得ない。そしてトリのモノだけじゃない、充嗣の無線機も沈黙を貫いている。恐らくチトゥイリとアジンのものも。


通信妨害ジャミングだ……!」


 結論は一つ、誰かがここら一帯の通信を妨害しているのだ。


「冗談だろ」


 トリが無線を手にしたまま呆然と呟く、そしてこの状況に追い打ちを掛けるべく、最悪の展開が充嗣達を襲った。バンを降りたアジンが遠方を見て叫ぶ、その声色は多分に焦燥を含んでいた。


「何か来るぞ………あれは、ハウンド・ドッグの装甲車だッ!」



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