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ノーアラート・ラン

 明日、明後日はテストなので投稿出来ないと思います。

出来たらラッキー程度で。

 時計に視線を落とせば、もうすぐ突入が始まる。恐らくもう一分と無いだろう。

 充嗣はバイザーをマスクの上に被り、通信機能をオンにした。


《時間だ、通信妨害ジャミングを開始する! さぁ舞踏パーティーを始めよう!》


 マルドゥックからの通信が丁度入る、充嗣は両手にグロックを握りしめ「おう」と答えた。


「まぁ、精々静かに、後は派手にやろう」

「全員ぶっ殺す、んで、報酬で豪遊だ!」

「楽に済むのが一番よ」


 クルー達の言葉を耳にしながら、充嗣は部屋を勢い良く飛び出す。先程とは違い速度は然程ないが、威圧感は段違いだ。半ば蹴り破る様にして書斎から駆け出した。書斎の前を巡回中だったのだろう、警備が音に気付いて振り向く。そして対爆スーツに身を包んだ充嗣をみるや否や、表情を恐怖に染めた。

 二メートル近い巨躯が有り得ない速度で迫ってくるのだから、それは恐怖に違いないだろう。それもこんな暗闇では。


 パシュッ! と空気の抜ける音が響く、それは充嗣の手に持ったグロックから。吐き出された弾丸が警備の眼球を射抜き、頭部を勢い良く振り回した警備は絨毯の上に崩れ落ちる。赤い色の絨毯が、瞬く間に黒ずんだ。


《急げ、急げ、急げよ、制限時間タイムリミットは十分だ、十分で奪って逃げろ、でなければ面倒になる》

「分かってるさ!」


 侵攻ルートは既に頭の中にある、直進し突き当りを右、そこを更に真っ直ぐ行くと離れへの廊下がある。絵画は屋敷内の離れ、その地下金庫。運び出す為に今、その金庫の扉は開け放たれている筈だ。恐らく侵入者対策のアラームも解除されている、その最高の状態で絵画ブツを掻っ攫う。


 充嗣が離れへの廊下に到着すると、アイアン・アーマーに身を包んだトリと鉢合わせになった。一瞬銃を構えかけるが、相手がトリだと分かった瞬間に下げる。


「おいドヴァ、その装備でどんだけ速く走ってきたんだよ、まだアジンとチトゥイリが来てねぇぞ」

「最近、脚力を中心に筋トレをしているんだ」

「筋トレでどうにかなるレベルなのか、それ」


 凄ぇな、と口にするトリと共に離れへと駆け出す。途中見えた警備は全て撃ち殺し、両開きの豪華な扉を蹴り破れば、広い広間に地下への階段を見つけた。その周囲には四人の警備の姿、充嗣達の姿を見るや否や驚愕を張り付け、同時に凄まじい反応速度で銃を抜き放つ。


 だが最初に敵がいると分かっていた充嗣達の方が一手速い、掴んだ銃口が向けられる前に、充嗣とトリの拳銃から弾丸が吐き出された。右側の二人を充嗣が、左側の二人をトリが射殺する。頭部を撃ち抜かれた四人はバラバラのタイミングで地面に崩れ落ちた。


「こちらトリ、ドヴァと合流、離れに到着したぞ!」

《分かった、そのまま絵画の確保を頼む! アジン、チトゥイリ、そっちは!?》

「こちらアジン、チトゥイリと合流、今向かっている! 警備が多くてな、たった今八人目を撃ち殺した!」


 ルート距離は大して変わらない筈だが、警備の数は向こうの方が多いようだ。なるべく発砲させない様、機を見て進んでいるのだろう。アジンは何事に於いても慎重になる傾向がある。


「ドヴァ、俺達はこのまま絵画ブツを奪っちまおう!」

「了解、マルドゥック、まだバレてはいないな?」


 充嗣がそう問いかけると、マルドゥックは肯定の返事を寄越した。


通信妨害ジャミングで連中は今連絡が取れていない、監視カメラも全部無効化だ、だが妨害効果が切れれば直ぐに警報が鳴る、あまり余裕はないぞ!》


 それだけ聞ければ十分だ。

 充嗣がグロックの残弾を確認し、トリに向かって一つ頷いた。トリは正確にその意図をくみ取る、二人で同時に階段を駆け下り、白いライトで照らされたコンクリートの一本道へと向かった。

 

 階段を降り切ると、正面に何かを抱えた警備の人間が二人、護衛らしき人間が三人。充嗣がそう認識した瞬間、トリの銃口が火を噴いた。三発の弾丸が正確に、素早く吐き出され三人の護衛を撃ち抜く。恐らく三人は充嗣達を認識する間もなかっただろう、撃ち抜かれなかった運搬員の二人は目を白黒させ、充嗣とトリを見ていた。


 そして充嗣は両手の拳銃を運搬中の二人に突き出し、「下ろせ」と命令した。

手の塞がっている護衛は互いに顔を見合わせ、恐る恐る絵画を地面に下ろす。絵画の大きさは持った人間が全て隠れてしまう程で、絵画の為か地下の道はかなり幅に余裕が持たせてあった。


「ご苦労様」


 絵画をゆっくりと床に下ろした事を見届けた充嗣は、二人の頭部に感謝の印として鉛弾を贈呈する。跳ね上がった頭部が脳髄を灰色のコンクリート壁にぶちまけ、二人は物言わぬ屍と相成った。


「ヒュゥ、こいつがマルドゥックの言っていた奴か、デカイな」

「確か固定具はアジンが持っていたよな」


 充嗣とトリがそんな会話をしていると、背後から「待たせたな」と声が響く。振り返ればアジンとチトゥイリが地下の階段を降りている所だった。 


「アジン、運搬用の固定具は?」

「勿論ある、ドヴァ、トリ、先行して敵の排除を頼む、チトゥイリは俺の護衛、時間内にここを脱出するぞ」

「任せろ」


 短いやり取り、それだけで行動を開始する。充嗣とトリは手に持っていた拳銃をそれぞれ投げ捨てると、騒乱オープン用の銃を取り出す。充嗣はソードオフ・ショットガンとpigを両手に持ち、階段を駆け上がる。その背後にトリが続いた。


「コンタクトォ!」


 階段を上がった先には警備の連中がこちらに向かって駆けて来る所だった、恐らく道中の死体を見たのだろう。充嗣達の姿を見るや否や発砲、閃光が瞬き9mm弾が対爆スーツの表面を抉る。だが弾丸が貫通する事はなく、その堅牢な守りの前に火花を散らした。


「温い温い」


 充嗣は9mmの洗礼を物ともせずに飛び出し、警備に向かってソードオフ・ショットガンを突き出す。そしてトリガー、ボォン! と爆音が鳴り響き、無数の鉄球が警備の体を突き破った。


「うぶッ!」


 点では無く面で攻撃を受けた警備は吹き飛び、薄いバリステックベストが引き裂かれる。絨毯の上を何度も転がって血を撒き散らした警備は胸にぽっかりと穴を空けていた。碌なボディアーマーも着用していないソフトスキンでは良いカモだ。


「オラァ! 全員ハチの巣にしてやるよォ!」


 トリがその場に片膝を着き勢い良く銃を突き出す、瞬間折り重なっていた銃身が弾かれ一メートル近いバレルが顔を出した。折り畳み式のソレはトリが愛用するライトマシンガン、恐らくこの依頼用にコンパクトカスタマイズを施したのだろう。それを見た警備の連中が、サッと顔色を悪くした。トリが引き金を引いた瞬間、ドドドドッ! とはらわたを震わせる轟音が鳴り響いた。


 充嗣達に向かって殺到していた警備の足が止まり、ライトマシンガンから吐き出された銃弾が警備の体を抉る。手足が飛び散り、顔面が弾け、その様は硝子人形を砕いているみたいだ。充嗣もソードオフ・ショットガンで手前の警備を吹き飛ばし、リロードしながらpigの引き金を引き続ける。

二人の銃器が唸りを上げ、瞬く間に屍の山を作り上げた。


「トリ、お前それ、室内じゃ振り回し難くないか?」

「あぁ! だからドヴァ、前衛は任せるぜぇ!」

「……頼むから、俺に向かって撃たないでくれよ?」


 元より装甲値の高い充嗣は前に出るつもりだったが、背後から機関銃ライトマシンガンで撃たれては流石に痛い。二十人近い警備をハチの巣にした充嗣とトリは、それぞれリロードを行いつつ前進する。バラバラに砕けた警備の屍から夥しい量の血が流れ出て、真っ赤な絨毯が赤黒く染まっていた。


「敵の姿は無いな、アジン、前進だ」


 充嗣が廊下の先まで見渡し、そう口にする。充嗣とトリの後に続いてアジンとチトゥイリが階段を登り切り、絵画を背負ったアジンが頷いた。


「オーケー、逃走車は正面玄関に突っ込んでくる、そこまで突っ切るぞ」

「頼むから絵画に弾丸ブチ込まれないでくれよォ?」

「誰にモノを言っている」


 アジンがライフルを掲げ、自信満々に笑って見せる。アジンに限ってそんなミスはしないだろうと充嗣は肩を竦めた。兎にも角にもこのまま正面玄関まで突っ切ればBANKERの勝利だ、時間制限もある、精々急ぐとしよう。


Мой любимый вид спорта бокс.


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