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純潔のLily ~絆、そしてHydrangea~  作者: サンドリバー
7/12

生か力か

夏休みのお盆も過ぎたあたりです。あの日からほぼ毎日津由の戦闘の夢を見ます。おそらく、津由は夜に必死に悪霊の浄化の作業をしているのでしょう。ところで浄化ってどうやってるんだろう?などと疑問に思いましたが、まぁ特別な方法なのでしょうと勝手に推測して終わりました。ですが、津由がこんなにも夜に頑張っているのに私は何も手伝ってあげれていません。何か力になるためには、もう少し精霊について知っておかないと・・・というわけで、ダメもとで図書館へと向かいました。お盆明けでおそらく夏休みの宿題の消化をしている学生や、受験勉強をしているらしき学生などが大量にいました。


智佳 「うわぁ・・・精霊について調べるために図書館に来てるの私くらいだろうなぁ・・・」


などと思いながら適当にうろうろしていると、入学式以来でしょうか、薄紫髪のショートカットの少女が何やら本を探していました。


智佳 「雪菜さん、こんにちは」


雪菜 「あ、白百合先輩。お久しぶりです」


と、雪菜さんはぺこりとお辞儀をしました。礼儀正しい子だなぁ、と思っていると、


雪菜 「白百合先輩は何か本を探しに来たんですか?」


智佳 「ちょっと精霊についての本をね」


雪菜 「・・・・・・」


あ、つい正直に話してしまいました。雪菜さんも何とも言えない表情でこちらを見ています。


雪菜 「ちなみに、ファンタジーな感じのものでしたら、こちらのコーナーではありませんよ」


智佳 「う~ん・・・そうじゃなくて、精霊の歴史書みたいなのがいいかな~って。これこそが事実!って感じの」


雪菜 「はぁ・・・」


完全に呆れられてる感がありますが、なんだかんだで一緒に探してくれました。


雪菜 「そういう本を探すってことは白百合先輩は精霊を信じているんですか?」


智佳 「え!?・・・っと~・・・昔見たことあるかな~って感じ」


適当にごまかしました。でも、間違ったことは言ってません。とりあえず怪しまれないように、聞き返してみました。


智佳 「雪菜さんは信じてないの?」


雪菜 「私は幼いころに真実を知ってしまったので・・・」


智佳 「そっか・・・」


そうして探していくと、ふと一冊の本が目に留まりました。見た感じ、とても古そうな本ですが、その表紙に描かれている精霊はまるで津由の精霊姿のような精霊が描かれていました。これだ!と思い本を手に取り、開いてみると・・・


『Il contenuto dello spirito di questo libro è la verità』


智佳 「?」


だめだ・・・読めない・・・すると、それを見た雪菜さんは


雪菜 「えっと・・・『この本の精霊についての内容は真実である』ですか?」


智佳 「すごい!何語かわかんないけど読めるの!?」


雪菜 「イタリア語ですね。ちょうどよかった。私は何か翻訳の練習ができる本を探していたので訳した後メールで内容を送りましょうか?」


智佳 「うん!お願い!」


そうして私は雪菜さんとメールを交換し、雪菜さんが本を借りて帰宅しました。その夜、一通のメールが届きました。


雪菜 「ある程度訳せたと思うので内容の要約を送らせていただきます」


その下にはその本の要約と思われる文章が続いていました。


―――――――――――――――――――――――――――


この本の精霊についての内容は真実である見る者のほとんどが信じないかもしれないが、これは実際にあった出来事だ。私は一度死んでいる。だが、精霊によって助けられたのだ。その精霊は人の形をしているが、光る翼を生やしていて、人々を悪魔から救っているらしい。その精霊は私を救うまでは元気に暮らしていたが、私を助けてからというもの、めっきり弱ってしまった。心配になり問いただしてみると、自分の力のほとんどを私を助けるのに使ってしまい、今は存在を固定するだけで精いっぱいだと言っている。私は悲しかった。自分を犠牲にしてまで私を助ける価値があったのかということ。そして、精霊は悪魔に食われて死んでしまった。その仇を打つために私はシスターになり、人々を自分に残してくれた精霊の力で人々を悪魔から救うと決めたのだ。シスターになりわかったことは、悪魔の支配の浅いものは治る。だが、心を奪われてしまったものは殺すしかない。そんな生活を初めて一か月。とうとう私も体の自由が利かなくなってきてしまった。おそらく、生命力として残された精霊の力を使いすぎたのだろう。私はもう長くは持たない。故に今はこの文章にすべてを注いでいる。この出来事が後の世に生かされるように。

by精霊タルウィスとそのシスター


―――――――――――――――――――――――――――


この文章を見た瞬間、私は震えが止まりませんでした。なぜなら、この出来事が信憑性がありすぎたからです。自分で体験したような出来事があちらこちらに書かれていました。この筆者は私と同じように精霊に命を救われていたり、完全に取りつかれたものは殺すしかない点では、現に私は津由に殺されました。そうして、一番震えの原因となったのは・・・

『その精霊は私を救うまでは元気に暮らしていたが、私を助けてからというもの、めっきり弱ってしまった。心配になり問いただしてみると、自分の力のほとんどを私を助けるのに使ってしまい、今は存在を固定するだけで精いっぱいだと言っている。』

つまり、津由も今同じような状態ではないのでしょうか。そう考えると、いてもたってもいられなくなりました。私は雪菜さんに「メールありがとうね。とってもわかりやすかったよ!」と送り、津由の居そうな所へと向かいました。この体に津由の力が流れているので何となくわかるのです。


私はとある道で津由を見つけました。ちょうど悪霊を退治した直後のようでとても疲れた様子です。


智佳 「津由ッ!!」


津由 「あ、智佳。どうしたの?」


いきなりこの文章が事実かどうか聞くのも多分疑われてごまかされる気がしたので、まずはタルウィスという精霊がいたのかどうかから聞いていきます。


智佳 「精霊って、世界中にもいるの?」


津由 「え?そんなことのために走ってここまで来たの?」


智佳 「あはは・・・ちょっと気になっちゃってね」


津由 「うん、精霊って名前じゃないかもしれないけどいるね」


智佳 「イタリアとか昔にすごい精霊っていた?」


津由 「・・・うん、今回の智佳を蘇生するのに参考にした精霊がいたね」


智佳 「その名前って『タルウィス』だったりする?」


すると、津由の表情が曇ったのを確認しました。


智佳 「そっか、実在の精霊でその精霊の契約主はシスターだったりしたんだよね?」


津由 「うん・・・ということは彼女が残した文章を読んだんだ・・・」


つまり、この文章は事実ということがわかりました。だとすると・・・津由は私のために自分の力のほとんどを失ってしまったの・・・?そう考えると本当のことを言ってくれなかったことに対して怒りを覚えました。


智佳 「どうして自分の大切な力を使ってしまったことを言ってくれなかったの!?津由の命が縮まっちゃうんだよ!!」


津由 「大丈夫だよ・・・これでも普通の精霊よりも強いから」


智佳 「でも、無理をしてるのには変わりはないんだよね?」


津由 「・・・そうだね」


智佳 「だから・・・少しでも津由の負担を減らせるように何か手伝わせてくれないかな?」


津由 「智佳はやっぱり優しい・・・」


そして津由は私に戦闘しているときは安全なところで祈っていてほしい、とお願いされました。そのことが津由の力に還元されるらしいのです。ですが、本当にそうなのか・・・津由は私だけでも戦闘に関わらず安全にいてほしいからこのように頼んだのではないでしょうか?まぁ、戦闘の邪魔になったり、無駄に命のために使われた精霊力を使うことの防止だと考えるとこの方が正しいと思ったので了承しました。

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