精霊の消えゆく時、魂の消える時
スピリットユーザーになってはや一週間
一通りの霊力の使い方を教えてもらい、飛び方も様になってきたころです。
智佳 「そういえば、私以外にもスピリットユーザーっているの?」
エビル 「いるよ。でもどこにいるかは知らないけど」
智佳 「もしかして、似たような石を持ってたりする?」
エビル 「うん。もしかして心当たりあるの?」
智佳 「私の友達なんだけどね。津由っていうんだ」
エビル 「へぇ~、でも精霊の規定の中に一般人にばれてはいけないっていうことがあるんだ」
智佳 「・・・もしばれちゃうと?」
エビル 「ユーザーや関わった人もすべて関連した記憶を消され、僕たち精霊も消滅へと向かうだろうね」
智佳 「そっか・・・じゃあ確信がないとむやみにばらさない方がいいんだね」
エビル 「仲間ができると思って希望を持たせちゃったね、ごめんね」
智佳 「大丈夫だよ。」
そんな会話をしている最中です。
エビル 「!?悪霊が出た」
智佳 「え!どこで?」
エビル 「探査するためにも、ユーザー認証をよろしく!」
智佳 「おっけー!『我、汝との契約を交わし、霊力使用者~スピリットユーザー~の能力を使用ス』」
もう、変身にも慣れました。
エビル 「それじゃあ、サーチモードを起動するよ」
そういうと、目の前に半透明なモニターが出てきました。そのモニターの中に、光る点が一か所あります。
エビル 「その点のところに悪霊がいるよ!悪さをする前に、急いで!」
智佳 「うん!とばしていくよ!」
その現場に着くと、エビルのような光る球体が浮かんでいました。
智佳 「これが、悪霊?」
エビル 「そうだね、まだ未成熟なものだから初心者の智佳にとってはちょうどいいんじゃないかな?」
智佳 「そうなんだ、それじゃあ練習の成果を発表といきますか!」
私は正面に両手を出し、手を開き、気を集中させます。そして、掌に霊力が集めってくるのを感じ、
智佳 「スピリット・ファイア!」
そう叫ぶと、掌から炎のような黒紫の光線が発射されました。その異変に気付いたのであろう悪霊は逃げ出しましたが、エビルが追跡モードをオンにしてくれていたため、直撃してあっさり倒すことができました。
エビル 「追跡モードは威力が下がっちゃうから大物相手には使わない方がいいよ」
智佳 「は~い、コントロールにも気を付けま~す」
そして、私の初陣は勝利で幕を閉じました。
8月5日 夜10時頃
明日は津由とプールに行く日です。天気予報も私たちに味方をしてくれています。早く明日にならないかなぁ、と鼻歌交じりに準備をしていました。ですが、こういう時に限ってよくない知らせが来るものです。私の石からエビルが飛び出し、
エビル 「悪霊が出た・・・しかも前より強い奴」
智佳 「なんで今日・・・でもまぁ、明日もあるし、ちゃちゃっと片づけようか!」
エビル 「・・・気を付けてよ」
智佳 「大丈夫!ちゃんと覚えてるよ!追跡モードじゃなく、普通に当てたらいいんでしょ?」
そして、私はいつものように変身し、現場に向かいました。すると、今度は光る球体ではなく・・・
智佳 「女の子・・・?」
その女の子はエメラルドグリーンの翼をもった、私と似た姿の女の子でした。するとエビルが説明をしてくれました。
エビル 「あれは多分、悪霊に取りつかれた女の子だね」
智佳 「え、見た目は私と同じなのに・・・」
エビル 「悪霊と精霊は瓜二つなんだよ。違いを示すのはお互い体内に持っている磁石みたいなものがセンサーになってて、同類同士か、敵対同士か判断できるんだ」
智佳 「それって、敵対同士が引き合うんじゃ・・・」
エビル 「あくまでも、センサーとして使ってるだけだから。あと、こっちが気づいてるってことは、向こうも気づいてるんじゃないかな?」
その言葉に、女の子がいた方向を見ると、すでに姿を消していました。私はあわててセンサーモニターを起動すると。
智佳 「上ッ!!!」
その女の子は私の真上に位置し、スピリット・ファイアと同じ要領の攻撃を仕掛けてきました。しかも、私よりも弾数が多く、スピードも威力も相手の方が格段に上です。正直、避けるだけで精いっぱいです。
エビル 「こうなったら、『コンビネーション・スピリット』をするしかないよ!」
智佳 「なにそれ?」
エビル 「智佳の体をいったん完全に僕に預けて、霊力を最大限に使えるようにする技のことだよ」
体を貸すということは私の魂はいったいどこへ・・・などと頭をよぎらしていた時です。
智佳 「痛ッ!!!」
私の肩を相手の攻撃が貫いたのです。
??? 「外したかッ!友達?仲間?余計な感情が邪魔をッ!相手は私の敵だ・・・それにすぎないのにッ」
相手の女の子が何やらつぶやいている時です。
エビル 「今はあいつを倒さないと、明日の君の約束も果たせなくなるんだよ!リスクなんて考えちゃだめだ!」
智佳 「そっか、ここであの子を倒さないと帰れないんだよね。わかった、やろう!」
二人 『コンビネーション・スピリット』
その瞬間、私の体の中に、黒紫のオーラのようなものが流れ込んでくるのを感じました。
痛い、怖い、熱い、嫌だ・・・
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あれ、私、今何してるんだろう・・・?夢でも見ているのかな・・・?体も自由に動かないし・・・私と戦っているあの子は誰なんだろう・・・無意識ながら、私が戦っているということは理解できました。相手の女の子は多少焦った様子で、おそらく遠距離よりも高威力なのであろう霊力の刃を構え、こちらに飛んできました。それに合わせ、私の体はその刃を片手で受け止め、もう片方の手で砲撃を横っ腹に当てました。その衝撃で、相手の女の子は悲鳴を上げ、こちらに倒れこんできました。私の体はとどめを刺しに、もう一度霊力を手に集めているとき、相手の女の子がこちらを見上げました。近距離なのでわかる、相手の顔
智佳 「津・・・由・・・?」
その瞬間意識は戻り、体の自由が戻ってきました。
エビル 「なんだってッ!僕のコンビネーション・スピリットが解かれただとッ!」
津由 「ごめんね、智佳、私は悪霊を倒さないといけないの・・・」
智佳 「え・・・悪霊って・・・」
津由 「智佳に取りついてる、そのエビルこそが悪霊なのッ!」
そう叫ぶと、津由は空間に固めていたのであろう霊力を使い、それを氷に変形させて、私の手と足を固めました。そのときの津由は、うつむき、決してこちらを見ないようにしていました。
津由 「智佳、さようなら」
感情を殺したような声で言うと、私に向かって刃を振りかざし、
首を一撃で・・・・・・
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ピピピピ ピピピピ
8月6日 朝
私が意識を取り戻したのは、部屋のベッドの上でした。
あれ・・・?
正直、とても混乱しています。鞄を見てみると、プールのセットが準備されています。カレンダーを見ると、今日は津由とプールに行くと書かれています。
もしかして、夢?
そう思い、自分の左手に付けていた石に目をやると
智佳 「こんな色だったっけ?」
石は暗緑色をしていました。しかも、前より心なしか小さくなったような・・・そして、夢なのか本当にあったかわからない出来事を思い出そうとすると
智佳 「ッ!」
頭に激痛が走り、思い出せそうもありません。でも、まぁ約束の時間が近づいてきたのでいったん考えるのをやめ、プールに向かいました。約束の場所に着くと、すでに津由が来ていました。
智佳 「あ!津由!待った?」
津由 「ううん・・・今来たところ」
そうして、津由は一回あくびをしました。よく顔を見ると、目の下にクマができていることに気づきました。
智佳 「あれ?もしかして寝不足?」
津由 「え?まぁ、ちょっとね」
智佳 「もう!夏休みだからって浮かれて夜更かしばっかりしてたらダメだよ!」
津由 「はいはい・・・」
そしてプールに向かいました。
更衣室
智佳 「そういえば津由、これ見て!」
そして、私はあの石を見せました。
津由 「ッ・・・」
なにやら津由は動揺した様子を見せました。
智佳 「津由もこれに似た宝石持ってたよね?お揃い!」
津由 「そ、そうだね・・・」
そのとき、よくよく津由の宝石を見てみると、欠けていることに気づきました。
智佳 「あれ?その宝石ちょっと欠けてない?」
津由 「・・・この前に落としちゃったから」
智佳 「そっか」
その後、二人でプールを二時間ほど堪能しました。津由は頭がいい他、運動もできて改めてすごいなぁと思いました。さて、着替えの時間です。着替えの途中ふと津由の方を見てみました。やっぱり容姿もすらっとしてていいなぁ~そう思った瞬間、タオルの隙間から津由の横っ腹が見えました。そこには大きな火傷の跡のような蚯蚓腫れがありました。
智佳 「あれ?津由、その傷どうしたの?」
そう聞いた瞬間、まるでパンドラの箱を開けるのを防ぐかのように私の頭に激痛が走りました。
津由 「智佳さん!大丈夫?」
智佳 「ッ!!まただッ!!!昨日の夜のことを思い出そうとするのと感じる頭痛と同じだッ!!!」
津由 「・・・そこまで痛むならそのことには触れない方がいいんじゃないかな?」
そうした方がこの苦しい思いをしなくて済むので、一瞬考えるのをやめようかとも思いました。ですが、傷を見た瞬間、津由に酷いことをしたような気がしてたまりません。ですので、そう簡単に引くわけにはいかないのです!
智佳 「昨日の夜ッ・・・私、津由に何か酷いことした気がするのッ!だから、謝りたいのに何をしたかが思い出せないッ・・・」
そのあと、数分時間が経過し、津由が真面目なトーンで話し始めました。
津由 「その様子だと、思い出すまで諦めないんだね。わかった、帰り道に真実を話すよ」
そして、着替えを済ませ、津由はあえて人通りの少ない帰り道を選びました。
智佳 「それで、真実っていったい・・・」
津由 「このことは智佳さん・・・智佳にとっていいことじゃないよ。それでも知りたいの?」
智佳 「もちろん。津由に謝らないといけないから」
津由 「そっか・・・気持ちは揺るがないんだね・・・わかった、すべてを話すよ」