奇跡の出会い~そして学生の戦い~
ある日の朝のショートホームルームにて
先生 「えー、今日はみんなの新しい仲間を紹介する、入ってきなさい」
そこに入ってきたのは空色の肩ほどまである髪の一人の女の子でした。
津由 「紫陽花 津由です。今日からよろしくお願いします」
雰囲気はしっかりして、真面目そうな人です。
先生 「中途半端な時期にやってきたから不安なことも多いだろうからみんなも仲良くするんだぞ!」
そして先生は続けます
先生 「紫陽花の席は一番後ろのところだ」
津由 「はい、わかりました」
こんな時期に転校生なんて珍しいです。なので、津由さんは休み時間中案内してあげるよとか、昔はどこに住んでたの、とか引っ張りだこでした。そして、私も興味あったのですが、話しかけるタイミングがつかめませんでした。
そんなこんなで日数は過ぎていき、ある日、
先生 「えー今日からテスト一週間前だ、部活も今日から活動禁止になるから、勉強に集中するように」
完全に忘れてた・・・私の戦績は中の中、まぁよくもなく悪くもない感じです。ですので、普段通り勉強していてもよかったのですが、なんとなく津由さんも誘って勉強したいと思いました。流石に日数もたっているので、津由さんを取り巻くギャラリーも減っています。
むしろ、ほとんど喋ってないような・・・?
まぁ、気のせいということにしておいて、勉強に津由さんを誘いに向かいました。
智佳 「初めまして、津由さん」
津由 「えっと、あなたは?」
智佳 「私は白百合 智佳っていいます」
津由 「私に何か用ですか?」
智佳 「実は、今日の放課後一緒に勉強しようと思ったんだけどだめかな?」
津由 「ごめんなさい、今日はちょっと用事があって・・・」
・・・思ってた以上にあっさり断られました。流石に断られてまで無理強いするわけにはいかないので、
智佳 「そっか、じゃあまた別に機会に誘うね」
津由 「はい、ごめんなさい」
私はその場を立ち去りました。立ち去るとき、ボソッと聞こえてしまいました。
生徒A 「紫陽花 津由さんっていっつも誘っても断るのね・・・」
生徒B 「前にどこに住んでいたかも、家の場所も全部隠してるのっておかしくない?」
生徒C 「あたしたちと関わろうとしてないだけなんじゃない?」
・・・・・・
実は用事っていうのは嘘なんじゃないか?まだ、新しい環境に慣れていないだけであって、人との接し方をわかってないだけなのか?などと、想像を働かせます。よし、勉強じゃなくてもいいからとりあえず津由さんと話をする機会を作ろう!
そうして、私は放課後に行動に出ました。
智佳 「ねぇ、津由さん。今日一緒に帰らない?」
津由 「智佳さんの家って、私の家と反対方向だから無理だと思う」
と断られそうになったので、一緒に帰ることよりも、話したいということをあらわにしました。
智佳 「大丈夫だよ!私が津由さんと一緒に帰りたいだけだから!話をしてみたいだけだから!」
津由 「・・・・・・」
どうやらこれは断りきれないようです。と、思った矢先
津由 「テスト近いけど大丈夫なの?」
正直、かなり痛いところを突かれましたが、今は勉強よりも友情を優先するべきなので、
智佳 「大丈夫だよ、一日くらい!だから一緒に帰ろう!」
津由 「・・・わかった」
そんなこんなで私の策は成功し、一緒に帰るところまで誘導することができました。
帰り道
智佳 「ねぇ、津由さん、新しい学校には慣れた?」
津由 「教室の場所の把握はだいぶ済んだから、まぁ慣れたんじゃないかな?」
智佳 「人間関係的にも?」
津由 「・・・・・・」
ついついストレートに気になっていることを聞いてしまいました。案の定津由さんは黙ってしまいましたが。こうなってしまった以上、私が切り込んでいかないと!
智佳 「やっぱり転校したてだったら人間関係がある程度できちゃってるから友達も作りづらいよね」
津由 「私は一人でも大丈夫だから」
智佳 「高校の友は一生の友って言うでしょ?だから一人よりも友達はいるにすぎないよ」
津由 「・・・・・・」
さて、そろそろ私の本音をぶつける時が来ました。
智佳 「もしよかったら、私と友達にならない?私じゃ頼りないかもしれないけど」
すると津由さんは何故か悲しそうな表情を浮かべ、
津由 「ごめんなさい、私はあなたと友達にはなれない・・・」
智佳 「え・・・」
流石に友達になろうって誘って断られたら精神的にショックです・・・すると、津由さんは申し訳なさそうに
津由 「私、友達作っちゃいけないから・・・じゃあ、また明日」
智佳 「あ!津由さん!」
その瞬間、津由さんは駆け出していき、曲がり角を曲がっていきました。私もすぐに追いかけたのですが、曲がり角のところで見失ってしまいました。もっと、色々詳しく聞きたかったな。ですが、収穫もありました。理由まではわかりませんが、彼女は友達を作っちゃいけないという勝手な思い込みに囚われているだけだと確信しました。これは、その概念を打ち砕き、友達の大切さについて知ってもらう必要がありそうです。そのために、私が友達第一号にならなくちゃ!よし、これから積極的に話しかけて見よっと!
翌日
朝に津由さんを見つけたので、
智佳 「津由さん!おはよう!」
津由 「あ、おはよう」
智佳 「昨日はごめんね、なんか強引に誘っちゃって」
津由 「私こそごめんなさい。智佳さんは友達になろうとしてくれただけなのに」
智佳 「ううん、気にしないで!私はいつでもいい答えを待ってるからね!」
津由 「・・・・・・」
あまり強引に誘い込みすぎるのも得策ではないので、私は手を差し伸べたまま受け取ってくれるのを待つことにしました。そうしていると、いつかはつかんでくれると信じていました。まぁ、その面はいいとしましょう。問題は数日後の・・・
先生 「よし、テストを配るぞ」
智佳 (うわぁ・・・これは半分近くがわからない・・・)
そして、数日後に帰ってきた結果を見て、絶句しました。案の定悲惨な結果でした・・・よほど落ち込んでいたのか、その様子を見たのであろう津由さんが
津由 「智佳さん・・・大丈夫?」
智佳 「うん・・・多分・・・」
津由 「私なんかに関わろうとするから・・・でも、心配かけた私にも責任があるわけだし、勉強付き合ってあげる」
智佳 「本当!?」
その言葉に私は喜びのあまり、飛び上がってしまいました。その後、津由さんに丁寧に教えて貰って、何とか勉強に追いつくことができました。勉強を教えてもらってる時に、あることに気づきました。そういえば津由さんの左腕にいつもきれいなエメラルドグリーン色の宝石のようなものをつけてるんだ。
魔除けかな?
と、まぁ特に聞かず、その時はスルーしました。今はそんなことよりも、初めて津由さんの方から手を差し伸べてくれたことに対しての喜びが勝っていましたので。
智佳 「ありがとうね、津由さん・・・ううん、津由!」
津由 「もう、今回だけだからね・・・」
テストの結果を犠牲にしてしまいましたが、結果オーライかな?