『クロマ』
ソラが素っ気ない態度をとった人物、『部活潰し』これは通り名である。名前はクロマ。探偵部の部長でもある。
「ソラ君さぁ、ちゃんと名前で呼んでくれないかなぁ?」
クロマは無邪気に笑いながらソラに返事をした。
ソラはこの態度に異常なほどに腹が立った。
「わかりましたよクロマグロさん。」
「誰がクロマグロだ。まぁいいや。今回はよくやってくれたよ。これからもよろしく☆」
クロマはソラに指を指しながら言った。
ソラはその指を折ろうと思ったが、なんとか思いとどまった。
「というか本名教えて下さいよ」
「ヤダ」
ソラはだんだんとクロマの相手をするのが面倒になっていた。
「だいたい、お前が部活潰しなんてするからこうなったんだろうが。」
ソラは思ったことをストレートに聞いた。
「違いますよー、遊んだだけですよー☆」
クロマがとてもウザイ言い方をし、ソラは半分キレていた。だが、ソラはまた、思いとどまった。何故ならこの青年、クロマがとても恐ろしい人物だからである。部活潰しはもちろんだが、異常なほどに人を騙すことがうまく、ソラが探偵部に入ったのはクロマに騙されたからである。クロマによって、何人精神科に送られたかもわからない。とにかく恐ろしい人物である。
クロマは一瞬視線をそらし、再び、こちらに視線を戻した、そしてクロマは言葉を放った。それは、ソラを驚かせた。
「もう一度言おう、今回はお疲れ様、君の中の彼にもそう言ってくれ。」
ソラは驚きを隠せなかった。ソラはある決断をした。
この場から去ることを、
「すみません、今日用事があるので帰ります。」
「ああ、わかった。」
クロマの返事を聞かず、ソラは走って部室を出て、第三校舎の廊下まで走り、廊下の壁に持たれかかった。何故、ソラがこんなにも驚いた理由、それは・・・・・
ソラが二重人格だからである。
しかし、普通の二重人格ではなく、後付けされた二重人格である。元々は、ソラのもう一つの人格は、データであった。初めは、スタンガンを経由して、人格を交換していた。普通ならこれを一回すれば、データの人格は確実に自分に入ってくる『はず』だった。しかし、このデータの人格は少々特殊なものである。名前はPALO、このPALOは、人格の力が強過ぎて、このデータを使った人間に、ある副作用を残す、これがいわゆる超能力である。
ソラの副作用は、「リカバリー」異常な回復力である。この力のおかげでソラはPALOが自分に入ってこなかった。しかし、ソラはこの人格交換を頻繁にしたため、「リカバリー」が『PALOがソラの一部』と認識し、PALOにリカバリーが効かなくなったのである。また、何故あれほどPALOが強いのか、それはPALOが脳のリミッターを外せるからである。しかし、脳のリミッターを外して戦うと、体はボロボロになり、脳も機能しなくなる、つまり死んでしまうのだ。だが、ソラの副作用はリカバリー、ほぼ瞬間的に体は修復されるため、『死』という恐怖もないのである。なので、『PALOを持つからソラは最強』ではなく、『ソラがPALOを持つから最強』なのである。
だから、クロマに言われたあの一言で、ソラが驚いたのだ。ソラはそのまま床に座り込み、溜息をついた。
「ホント、怖ぇなあの野郎」
ソラはそう言いながら、天井をみた。