『部活潰し』
五月、だんだん日差しが強くなっていくこの季節、部活に入っている高校生達は、必死に練習に励んでいるのだろう。汗水流し、時に涙を流し、友情を深めていき、青春を満喫するのだろう。ここ、シンノウ高校も他と変わりがなく、どこにでもあるような学校であった。だがこれは過去形になった。シンノウ高校は40の部活があり、とても部活が盛んであった。しかし、この四月に32の部活が廃部となった。決して人数がいなかったという理由ではなかった。何故なら体育会系の部活のほとんどが、廃部となっているからである。廃部となった部活に入っていた部員は口々に言った。
『部活潰しがやってきた』と・・・・・・・・・・
第五校舎二階、ここに探偵部の部室、社会科室がある。
とてもシンプルなつくりだが、ほとんど何もないため、広々としている。この部室で、宇堂宙、ソラは対応に追われていた。しかし、依頼ではなかった。ソラはクレームの対応に追われていたのである。何故、探偵部にクレームがきているのか、それはある噂が広まったからである。
『部活潰しが探偵部にいる』
この噂のおかげで探偵部にクレームが多くきたのだ。
更に最悪なのは、クレームと一緒にクレーマーまで来たのである。静かな探偵部部室に怒号が鳴る。
「部活潰しはどこにいる!」「早くだせや!」「おらぁ!」
とても気持ちのこもった言葉にソラは対応していった。
「申し訳ございません、この探偵部に部活潰しなどおりません。」
ソラは自分が考えた最上の答えで対応した。クレーマー達が黙り込んだ。ソラはそれを見て、安心したが、クレーマーの一人の男が突然、ソラの襟首を掴み、怒鳴った。
「るっセぇんだよボケェ!早く出せっていってんだろが!」男は息を荒くして言った。
ソラはとても呆れた。
この男、頭に血が上りすぎて話が理解できてないのかな?はぁ・・・・めんどくさ。
ソラはそう思いながら左手で、自分の首筋を押した。
「おい、お前!何してんだよ!あ、もしかして怖いのか?チビりそうなのか?だいじょうぶでちゅか?」
男は調子に乗っていた。この時点で男は気づくべきだった。ソラの目が変わっていることを。
「・・・・・るせぇよ」
「あ?」
男は突然変わったソラに少々怯えた。ソラはその瞬間、男が襟首を掴んでいた手を振り払った。そしてソラは叫んだ。
「るっセぇのはお前の方だよ!いねぇつってんだろが!わかんねぇのかよ!」
そう叫ぶと同時に、腕を振りかぶっていた。そして
「テメェら、うぜぇんだよ!」と叫びながらその男にパンチを食らわせた。男は開いたドアから飛んでいき、2km先にある第三校舎に激突した。それをみたクレーマー達は恐れおののき、逃げさった。そしてソラはまた、首筋を押した、ソラは近場にあった椅子に座り呟いた。
「・・・・・やり過ぎた。」
そう言って椅子に座っていたソラの後ろから拍手が聞こえた。しかし、ソラは振り向こうとはしなかった。後ろには一人の青年がいた。
「ブラボーブラボーいやーよくやってくれたね。」
青年はソラに賞賛を送った。ソラはそれに反応せず、ある言葉を青年に言った。
「やあ、こんにちは探偵部部長さん、いや『部活潰し』さん。」
ソラはそう言いながら、青年のほうを向いた。
ソラの目は、元にもどっていた。
青年は不気味な笑顔を見せた・・・・・・・・・・