代役なんて、まじめに務めません。
「……何で?」
みなさん、こんにちは。今私はかなり機嫌がぐずついています。日本語がおかしくなる程度に、です。えーっと、機嫌が悪いです。かなり斜めです。
「だから、坂下さんが骨折しちゃったから、クラス企画の劇で白雪姫の代わりが必要で。一番適役じゃないかって……」
「いや、何で?」
「えーと、その、だから、んーと……」
「洸が骨折したのは知っているよ、私がさせたんだもん」
「え?」
「そこ、驚くところじゃない。で、何で私?」
「あの、だから……」
あーもう。もたもたしないでよ。
「皐? いいじゃん、やってあげなよ。当日暇なのって皐くらいなんだよ。それに、練習期間三日で出来るのって、他にいないと思うよ」
「だって、睦。せっかく楽しい楽しい文化祭の場で、双子の兄妹でチューして、それを見て何が楽しいの?」
「見どころはそこじゃないし、いいじゃん。楽しくはないけど寸止めだし、それにもし当たっても気まずくないでしょ」
「当てるつもりだったの?」
「ちがうでしょ」
「それなら明弥ちゃんの方がいいんじゃない?」
「明弥ちゃんはすでに大役を任されているし。そっちの方が何で、ってなるよ、皐」
「何で?」
「何でも」
「……ふーん、まあいいや。で? 他の全員は完璧に出来るんだよね? 少なくとも私よりは」
横の方でみている限り全然の出来であることを知っていながら言った。そして、ぱっと周りを見渡すと、みんな私の方を見ていた。ん、何か、虫が肩にでも止まっている?
「皐、えっと、とりあえず練習しようか。みんなが皐の視線と言葉に恐怖しているから」
「何で?」
「何でも」
「分かった」
そして練習を始めたのだが、やっぱり最悪。
台本なしでやってみたんだけど、セリフすら覚えてない輩がほとんどって何。ありえん。木の役の私が全部覚えているって言うのに。
ちなみに、木の役は私が力ずくで奪取した。野球部の男子から。あんな人間なんかに譲るものか。楽なんだよ、木は。
それなのに白雪姫って。継母が明弥ちゃんて。でも、明弥ちゃんはいいんだよ。演技力がすごいから。迫真の演技だから。もう、魔女そのものだから。信じられないけど。
「……さあ、私たちの小屋へ、どうぞ、姫」
「そこの三番目の小人、今日限りの代役とはいえ、わざと間違えるな!」
「すみませーん! 皐さん、謝りますから殴らないでー! 痛い痛い、いやー!」
「……仲、いいねえ」
「睦、何か言った?」
「いや、何も」
ふう。これで本番に間に合うのか?




