ロリッ娘萌え。ません。
「かわいいねえ」
「そうですねえ」
まったくもって分からない。それ以前に理解しようとする気すら起こらないけど。
「あれ? 皐、どこに……いた。え? あー、そういうこと? ふーん。寒そうだね、その脚はさすがに」
「睦、何言ってんの。それが健全な男の子の言うこと? ロリータを着た女の子だよ?」
「ちょっと、洸、兄妹に、しかも二卵性のくせに顔がそっくりな妹に萌える兄って、どうなんだろうね。……あー、まずい。吐き気が」
「でも、とってもお似合いだと思いませんか?」
「日向君も! 健全じゃありません!」
どういうことなの。健全とか健全じゃないとか。
「ちょっと変態なくらいが健全な男子です」
「洸、こっちは確実に変態野郎だから。これ以上変態にしないでいいから。そして、そろそろ脱いでいいかな。せっかく暖房をきかせてくれているのに、こんなに寒い格好していたら意味ないじゃん」
「脱いだらそれも意味ないじゃん! あの、すみません! この子が着ているの、一式買いたいんですけど、このあと着たまま出かけたいんです。着替えるのが面倒とかいうのですが、お会計、できませんか?」
「あ、大丈夫ですよ。では、こちらへ」
……もはや絶句。
合格発表を見に来たはずなのに。そしてそろそろ行かないと、見えないよーって洸が騒ぐのは目に見えているんだけど。あんた視力0.7でしょ。遠くからじゃ見えないんでしょ。……自分のことは自分で面倒見なさいよ、いい加減。
「ねえ、睦」「ねえ、皐」
『…………』
まさかここでハモるとは思わなかったよ。嬉しくない。
「じゃあとりあえず、明日に日向君がするであろう告白を再現してあげるよ」
「やめてよ。今、会計中。ピッてやってもらっている最中だから。めちゃくちゃ途中だから。店員さん、ようやく値札を見つけてピッてしたから」
「そんなことはどうだっていい。僕と、結婚……してくれないか?」
「あーそう。それ、されたことあるなあ。そして顔が近い。あのときほどじゃないけど、十センチしか離れていません。気持ち悪い」
「……なんだ、すでにやっていたか。あーあ、残念。そして、そうだね。気持ち悪い」
「あのう、皐さんに睦さん? 店員さんが……」
『あー、すみません、邪魔でしたよね』
「そうじゃなくて」
『ん?』
「おっ、お似合い、ですね。あのっ、サービスしますね。一割でいいです」
「え? あ、ありがとうございます。買うの、私じゃないけど」
「大丈夫ですか? そんなに安くしてしまって。買うの、僕でもないけど」
「大丈夫です。足りない分は私が見物料と思って払いますから、安いものです」
『あー、はい。よく分からないけど、ありがとうございます。……さ、行くよ。洸』
「坂下さん?」
「……店員さん。分かってくれましたか、あの二人の、似合いよう! あたしもかねてから押しているんですけど……えうっ?」




