表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
596日目の告白  作者: ゆか
新年、いよいよ
20/30

ひとまず、一休止


 商店街を歩き回って、ネックレスを一つ買い与えられ、ようやく休憩できることに。はあ、喫茶店ほど落ち着く場所はないよ。あったかーい。

「ただいま帰りましたー。まだ、運ばれていませんか? よかった」

 トイレに行っていたのか。どうりでいないと思った。まあ、いてもいなくてもまったく気に留めることはないんだけどねえ。

「あ。来たよ、皐。ココアでしょ?」

「言われなくてもわかります、洸」

「いいじゃん。優しさだよ、ありがたく受け取って」

「あーはい。ありがとねー」

「もうっ。心がこもっていないんだから」

 まあいいじゃん。

さてと。大好きなココアがようやく味わえるからねー。この至福のときは、誰にも邪魔させませんよー。…………。

「皐? ずいぶん乱暴に混ぜたね。そんなにぐるぐるしなくても、ちゃんと混ざるよ?」

「え? ああ。うん、これでいいんだ、洸。これくらいがちょうどいい」

「ふーん? 分かった。こんどからあたしもそれくらい混ぜるね」

「僕は洸がどれだけココアをかき混ぜようと気にしないけど、皐、それはちょっとひどいよ。もう少し優しさを見せてあげたら? 店員さんも頑張ったわけだし、何より、目の前の彼がひどい顔になってしまっているよ」

「私の自由でしょ。それに、私がこんなプロポーズを望んでいるとはどう考えても思えないし。私にはその顔が見えていないし」

「明らかに見ないようにしているけどねえ。まあ、そうだけど。皐はそんなロマンチストじゃ……ぶふっ。まあ、そうだねえ」

「そこ、否定してくれて構わないよ」

「ごめん、ロマンチストじゃ……ふはっ、あははは、うん。まあいいや」

 何で否定してくれないのか、まったく分からないんだけど。構わないけどね。

「皐、ココアに何かあったの? あたしにも見せてー」

「はい、いいよ。どう考えても、さっき混ぜたからもう見えないってことは分かっているよね。ただのココアでしょ」

「あー、ずるーい! 何が書いてあったの?」

「ハートマークが、二重になっていた」

「なるほど。そしたら、日向君はなんて言うつもりだったの」

「いや、私に聞かれても。多分、あれだよね。……」

「僕が思うに、結婚、してくれませんか? って寄り道せずに真っ直ぐ、こう、決め顔して言う予定だったんじゃないかな」

 そう、それ。でも、私はそんなものは求めちゃいません。

 と考えたところで、洸がニコニコ笑って口を開いた。

「あー、いいね。いい線いっているよ、おそらく」

「坂下さん。それ、本当ですかっ?」

 食いつき、半端ないな、お前。

「ん? あー、えーと、どれのこと?」

「そんなに大して話していませんよね。いい線いっている、ということです」

「あれ、そんなこと言ったっけ」

「言いましたよ」

「ごめん、記憶になくって。でも、あたしが言っていたならそのはずだよ。聞き間違いじゃなければね。うん。きっとそう。何のことか分からないけど」

「ありがとうございますっ」

「いやどういたしましてっ」

「はい、そこ。手を握り合わない。そして皐。なぜココアじゃなくてお冷を一気飲みしているの」

「……今、この状態で甘いものを飲めるかって。あー、足りない。ねえ、そこの。まだ一口も飲んでないよね、お冷は」

「え、あ、はい」

「よし」

「皐、そんなに慌てなくても大丈夫だと僕は個人的に思うけど」

「ああ、ようやく流れていった」

「何が?」

「ここら辺のモヤモヤした気持ちの悪いもの」

「……あのさあ。せめて隠してあげたら? 彼、馬鹿ではないから気づいているんだよ、百パーセント」

 構わない。私の気分を害すものは、すべて排除するのみ。……もう少し飲もう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ