表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
596日目の告白  作者: ゆか
新年、いよいよ
19/30

あれ、もう? はい、そうです


「皐ー! さっさと降りて来ーい! 待ちくたびれたーっ」

 二階の自分の部屋から、洸の元気な声が開きかけの玄関からと、直接窓を揺らして、聞こえてきた。うるさいし、勝手に人のことを待っていて催促するって、人間としてどうなの。ちょっとどうかな、と思うんだけど。

 今日は高校の合格発表を見に行くらしい。一番近い、公立の高校だ。それはかまわないのだけど、別に朝早くから行く必要はないよね。せっかくゆっくり寝ていられる日なのに、わざわざ早起きするなんて、だるい。

「おーい? 皐、置いていくよ。……いってきます。洸、お待たせ。行こうか」

「あれ、睦だけ? おっかしいなあ。日向君が来てくれているって言うのに」

 それは本当なのか。

「あー、洸。私急に気分が悪くなってきた。見てきてよ、私の分も。お願いねー」

「え、大丈夫? 分かった。横になっていたほうがいいよ」

「洸、何言ってんの、仮病に決まっているでしょ。ほらあ、皐。行くよー?」

「はいはい、待たせたねえ」

 うー、寒い。だから外には出たくなかったんだよ。もう三月だよ? いい加減あったかくなってきてもいいじゃん。寒い、寒い。

「皐、さん? おはようございます」

「あー、はいはい。本当にお早くてございます」

「早くに起こしてしまって、すみませんね。まだ、眠いですか?」

「まあ、眠いけど。それに、こんなに早いのはあんたのせいじゃないでしょ。何で謝るの」

「あ、そっか。いやそれでも、八時前に来るとは思っていませんでしたから、僕も驚きましたよ」

「はあ? あの子、八時前に来たの? 信じられない。発表されるのいつだと思っているの。正午だよ? ありえないわー」

「ですよね。ちょっと早すぎだと、思いました」

「ちょっとじゃないよね」

「そうですねー。……あ、そういえば。皐さん、第一志望は受かったんですよね」

「何でそこ、受かったんですか? じゃないの」

「だって、受かったんでしょう?」

 まあ、そうだけど。

「もし落ちていたら、どうフォローするつもりで聞いた?」

「そんなはずありませんから」

 素敵な笑顔をありがとう。ちょっと前だったら即刻で気色悪いって言われているよ、その顔。うん、絶対言った。

「今八時半だから、学校に着くのって九時十分くらいですよね。どうするんだろう」

「日向君、いい事を聞いてくれたね!」

「あー、いえ。坂下さんに聞いた覚えはないのですが、教えてくださるなら嬉しいです」

「あれ、そうだったの。なんかごめんね。あのねえ、あたしの大好きなお店に行くの。それで、皐に似合う洋服を探してー、着せてー、街を歩いてー、喫茶店でおしゃれにランチ! 夢だったんだー、実は」

「素敵な夢ですね」

 これからかなえてやる気ゼロのような返答だな。まあ、それだけこいつも迷惑を被ったということだ。

「日向君なら分かってくれると思ったんだけど、この子にかわいい服を着せたら、ものすごい輝くよね」

「そんなの、当たり前じゃないですか」

「そこの二人。人の妹を勝手に遊び道具にしないでよー?」

「え、睦は分からないのっ?」

『まったくもって理解不可能です』

「そこ、双子でハモるところ?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ