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596日目の告白  作者: ゆか
夏休みも明け…
17/30

一人のときは、素直なんです。


 …………

「……。……あー、寝てたか」

 目の前に置いてある、小さな紙切れを見つめながら思った。つい眠ってしまっていたらしい。おはよう。

 毛布が、かかっている。あったかいから、このままでいよう。

 んーと、あれ。この紙、なにやら文字が書かれているな。うんと、とりあえず読んでみよう。

──皐さんへ

ちょっと出かけてきます。すぐに帰りますからね。

日向夏斗──

 内容を理解するまで待ってね。えーっと、うーんと、うー、はい。分かった。

「客人を置いて家を留守にする奴がこの世にあったとは」

 たった今知りましたよ。ところで何時だろ?

 壁にかけてある時計を見ると、四時四十五分。そろそろ帰らなくてはならない時間帯じゃん。どうしようか。

 ……あ。時計が止まった。ぱったりと動くのをやめたよ。すごい。今までは正常に動いていたのだろうか。止まりかけていたら心配だから、携帯電話で確認。……ちょうどだ。これはもはや奇跡だよ。そしてその瞬間を目撃した私ね。すごい確率だよ。

 それにしても、どうしよう。勝手に家を出て、鍵が開けっ放しだと防犯上よくないしねえ。まあ、しばらくはお留守番していよう。仕方ないから。

 でも、もう勉強する気もないし、何しようかな。あー、暇。

 ……あの人、何をしに出かけたんだろう。散歩かな。こんなに寒いのに。元気だねえ。散歩をしているとは限らないけど。変人だからありうる。

 だけど時々思うのは、あれは変態なのに、私は何でずっと一緒にいるのだろうってことだよね。まあ、顔も悪くはないし、バカでもないし、それなりに空気読めるし、自分の意見を持ってはいるけど。だから別に毛嫌いするタイプじゃないのは分かるんだけど。でも、変態だよ? 不思議だよなあ。しかも、結婚してもいいという約束までしちゃっているし。

 はあ……分かってはいるんだよ、素直じゃないのは。確かに惚れていると思うもん、あの人に。それは間違いないと思う。優しいからねえ。でも、それだったらもっと別の人に惚れこんでいてもおかしくない。あんな変態じゃなくて、もっと普通な人もいるし。何でよりによって変態を好きになったのか、だよ。分からないなあ。

 あー、まだ帰ってこないのかな。そろそろ来てもらわないと困る。帰れない。どうしよう。

「ただいま、帰りましたあ……」

 小さな声。これは、聞き間違えようもない、奴のものだ。

「皐さん、起きているかな……あ。おはようございます。すみません、勝手に留守にして。よく眠れましたか?」

「当たり前のような顔で謝られても嬉しくも何ともないのだけれど」

「いえ、だからごめんなさいって……」

「いっぺん、深ーい眠りにつきますか? 一瞬にして意識がなくなりますけど」

「ぜひとも、やめてください」


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