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596日目の告白  作者: ゆか
夏休みも明け…
15/30

受験生の冬休み

 ふあー、あったかい。

 寒い日は、暖房の良く効いた部屋にこもるに限るよ。とっても気分がいいからねえ。

「皐さん、寒くありませんか?」

「まったくもって問題なし」

 今日は、こ奴の家にてお勉強会。受験直前の冬休みですから。なぜ自宅でやらせてくれないのか、ものすごく不満に思うけれど、まあいいや。教えてほしいって、ものすごい形相で言われたから。

「ココア、ここに置きますね」

「あ、どうもねー」

「さて、何をしましょうか」

「そうだね、英語じゃない?」

「え、いきなり勉強ですか」

「緊張感ねえな、お前」

「はい。やる気もありません」

「じゃあ、何のために私を呼び出したりした?」

「もちろん気分で……ぐはっ。い、痛いじゃないですか、急に殴ったりしたら!」

 しかもぐ、グーでなんて、とか言っている阿呆は放っておいて、ノートを開いてみる。どこをやろうかな。あー、関係代名詞がちょっと危ういな。

「きれい、ですね」

「……ん、何が」

「ノートです。字もきれいだし、まとめ方も上手です」

「きちんと見てもいないのに、まとめ方とか分かるの」

「ぱっと見ですよ。見やすいじゃないですか」

「別に、普通だけど」

 問題集を開きながら返す。あれ、判別法のところってどこだっけ。確かこの辺だったと思うんだけど。

「うわあ、それもすごい」

「……どーゆう意味ですか」

「分厚い」

「一センチもないけど」

「薄くない」

「比較的薄いけど」

「全部、解いたんですか?」

「まあ、二回は」

「えー? すごい」

「だから何で。……あー、分かった。あんたのやる量が少なすぎだ。はい、これを貸してやるから、今すぐやれ。全部」

「え、これですか? そんなに多くはないですけど、一日で終わる量じゃないんじゃ……」

「出来るから。私が三日で一通り終わらせたんだから」

「なおさら不可能ですよ」

「あー、無理ならいいけどねえ。中学校の勉強くらいは出来ないと嫌だなあ、私」

「やりますっ」

「それでよろしい。男に二言はないからね」

「そう言われると、ちょっと……」

「何?」

「いえ……」


 静かなときが流れた。ほう、意外と真面目な顔もするんだな、こいつ。よかった、集中してできそうだ。

「分からない……。皐さん、これ、何ですか?」

 安心したのもつかの間、声をかけられた。開始から一分と経っていないと思うけど。十秒かそこらだよね、まだ。

「答え、見たの」

「はい」

「解説は」

「見ました」

「分からないの」

「まったく」

「バーカ」

「真っ直ぐな言葉ですね」

「カーブをかけたほうが良かったか」

「いえ、ストレートで構いません」

「それで? どこ」

「これ、です」

 どれどれ? えーと、うーんと。

「……ありえない」

「え?」

「これも知らないで今まで生きていたのか」

「そんなにまずいですか?」

「だって、It is didn’tって。一年生に帰れ」

「それはちょっと、ご勘弁ください」

「せめて今の一年生に土下座しろ」

「それも、辞退させてください」

「できるでしょ、あんたなら」

「あ、いや……」

「それとも何。先輩としての威厳とか、気にする? ないでしょ、そんなもの。あるわけないね。冬休みが開けたら、全校の前でやって」

「えー?」

「もういいから、どーでも。それで。過去の否定文の書き方、記憶にないの、皆無?」

「……覚えてます。ちゃんと。ごめんなさい」

「どういう意味ですか」

「皐さんにかまってほしかっただけです」

「あーそう」

「ごめんなさい」

「いいよ、別に。じゃあ、オセロしようか」

「えっ……?」

「その問題集、三分の一まで終わったらね」

「……鬼畜」

「はい? 何? よく聞き取れなかった」

「いえ。やる気、出ました」


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