悲劇と堕天使
キーンコーンカーンコーン。というホームルームの終了を告げるチャイムが鳴る。そして教師の話だ。
「あー。これから冬休みに入るわけだが、羽目をはずしすぎて死んだりしたら先生が地獄の果てにも赴いて説教するから。そんなことはないと思うけどねー。」
クラスの全員がひいた。この教師なら本気でやりかねないのだから。まだ話は続く。
「んじゃあ、あと質問あるやついるかー?いないよなー。じゃあみんな安全にすごせよー。解散。」
教師の話が終わった。そして教室がにぎやかになるのと和也たち3人が教室をダッシュで出て行くのはほぼ同時だった。
あのキス事件以降和也たちに変わったことは・・・・・・・特にない。それはなぜか。読者の想像にお任せしようとしたがめんどくさがりに思われるのもいやなので話そう。
それは、和也の反応があまりにも普段どうりすぎるからである。原因は・・・・・・知らん。では本編に戻る。
ダッシュして教室を出た和也たち一行は校門を出てそのままひと気のないところへ移動し、機体を呼び出しステルスモードで飛行していった。向かう場所は母艦ヘリオスであった。どのみち年末年始は暇な彼らであったし艦でのクリスマスパーティーの準備があったので急いでいた。
「こちらセレネ1、ヘリオス着艦許可願います。」
「了解。セレネ3とバルゴ1も続いて着艦してください。」
オペレーターの指示に従い格納庫へとはいると、すでに中はクリスマスモードとなっていた。
「ふあ~っ。疲れた~。」
半ば眠そうな和也。だがそれに容赦ないツッコミがはいる。
「こら、アンタまだ何もしてないでしょ。早く作業に取り掛かりなさい。」
「この程度で疲れているようではいざというときに何の対処もできなくなるぞ。」
「へいへい。」
おとなしく作業に取り掛かろうとすると、背後から声がした。
「わ、わわわわわー!どいてくださーい!」
「えっ?」
しかし振り向いたが時すでに遅し。
効果音があるならどっしゃーんという音を立てて和也は荷物のしたじきになった。
そのとき、何かが口の中に入ったが、誰も気づかなかった。和也さえも。
「わっ!すすすすいません!だだ大丈夫ですか!?」
「っつ~。俺はなんともありません。そちらは大丈夫ですか?」
「は、はい!私は大丈夫であります!天児少尉殿!」
「あれ?何で俺のこと知ってるの?」
「あなたは軍の中でも有名人ですから。あ、私の名前はアリサ・ウェストン軍曹であります。本日この艦に着任しました。」
「ああ、よろしくな!アリサ。俺のことも和也でいいよ。」
「はっ!了解であります。和也殿!では、私は用があるので失礼します。」
敬礼したあとアリサは大量の荷物を抱えてその場を去っていった。
「ああ。じゃあな~。」
そういって手を振っていると。両足にものすごい痛みがはしった。
「いってぇ~!!!」
なにすんだよという顔で両足を抑える和也。
「ふんっ!」
「自業自得だ。」
完全無視と超極寒の目で見下ろしてきた。お前ら鬼だな。
そうこうしているうちにクリスマスパーティの準備は進んでいった。
だが、このときは誰も予想していなかった。予知能力を持つ明さえも。まさか、あんなことになろうとは・・・。
ジリリリリリッという音とともに和也は起きた。そして大きなあくびをする。
(ふぁ~ねむ。昨日の疲れがまだ残ってるのかな~。体が重い・・・・。)
特に胸の辺りが。
ヘリオスにいるときは、いつも自室の水道で顔を洗ってから和也の朝ははじまる。そこで初めて悲劇に気づいた。
目の前にある鏡を見て。
「な、ななな・・・・・。」
なんじゃこりゃー!という叫びが艦内に響き渡り、それが全員の目覚ましになった。
「これは一体?・・・・・。」
「どうしたの和也その体。」
「あらまぁ。」
などと口々に聞こえる。
「どうしたもこうしたもない!というか見るな!」
と半泣きで訴える和也。だが、さっきからその声が少女のように高い。
髪はロングストレート、体は普段の和也に比べればずいぶん細く、その上背も低い。陽子と同じぐらいだろうか。
わかりやすく言うならGGO版のキ○トのような感じだろうか。
だが、それとは確実に違うところが2つ。
まず、ムネがあるのだ。サイズは陽子以上、香奈枝以下ぐらいだろうか。とりあえず一般女性並みにはある。
どうしてこうなったのかは和也にもわからない。
「はぁ・・・・・・。」
と海よりも深そうなため息がもれる。
「とりあえず、あんた着るものがないんでしょ。ならちょっとこっち来なさい。あたしの予備の制服貸してあげるから。」
「あぁ、そうするよ。」
相変わらず落ち込み度100%である。ともあれ着替えなければどうしようもならないので着替える。
「どう?きつくない?」
「えっとぉ・・・・・。」
ここでムネがきついというと本当のことを言おうとしたがちょっと考える。ここで本当のことを言えば陽子の右ストレートが飛んでくることは間違いない。ここは我慢だ。
「だ、大丈夫だ。ぜんぜんきつくない。」
もう和也は落ち込むことをやめて、前向きにすることにした。
「にしても、どうしてこうなっちゃたんだろうなぁ?」
「昨日のことを思い出してみればいいじゃない。」
「昨日のことねぇ・・・。」
艦に戻ってきたらメサイアから降りて、アリサとぶつかって、パーティを準備をして・・・・。
「ふあぁ。何の騒ぎでありますか~?」
うわさをすればなんとやら。アリサが起きてきた。というか今まで起きなかったほう不思議である。
こちらに向かってきたところで、ぽす。と、和也の胸に顔が埋まった。
「おーい、アリサー起きろー。」
「ふあぁ。了解であります。」
起きはしたがまだねむそうだった。
「って!誰でありますか!」
まぁ予想はしていた反応だった。
「俺だよ、俺。和也だよ。」
「かっっっ和也殿!どうしたでありますか!?」
「あ~なんか朝起きたらこうなってた。」
「うーむ。あっ、もしかして!」
「ん?」
何か心当たりでもあったのだろうか。なんだかあわただしくその場を去っていった。
待つこと数分後・・・・・・・・・・。
「お待たせいたしました。」
といって戻ってきた。だが、服装は寝巻のままだった。
「多分これのせいだと思うであります。」
「!?」
そういって取り出したのはビンに詰められた薬のようなものだった。だが、一般的な薬とは違って立方体の形をしている。一体これは何だというのだ。
「これは、性別を転換させることが可能な薬であります。この艦には、和也殿以外に男性がいないと聞いたので問題ないとおもい、男性から女性へと性転換させることのできる薬を研究用に持ってきたのですが・・・・・。」
「まぁ、たしかに性格的には男は俺しかいないな。」
「つっこむ所はそこじゃないわよ。で、昨日和也とぶつかったときに、その薬が間違って和也の体の中に入ったと。」
「そのとおりであります・・・・。」
小さいアリサが(俺が175で、陽子が160ぐらいだから、多分150あるかないかぐらいだろうか)いつもにまして小さく見えた。
「とりあえず、逆の薬はないのか?それさえあれえばこの体は元に戻るんだろ?」
「そうでありますが、逆の薬をつくるのに少なくとも3日はかかるであります。」
「「3日!?」」
2人の声が見事に重なった。
「3日もこのままでいなきゃならないのかよ。」
「ぐすっ・・・・。申し訳ないであります。」
「まぁ、3日我慢すれば戻るんだから頼んだぞ。アリサ。」
「了解であります。」
普通なら元気に返しそうなアリサでも、今回ばかりはそうはいかないようだ。
かくして、和也の女としての生活が始まった。せめて1日目ぐらいは平穏に終わってほしいと願う和也だったが、そんなのは訪れるはずはなかった。
12月23日午後8時。
戦艦ヘリオスシャワールーム。いつもなら午後7時ぐらいに入っている和也だが、女性陣(主に陽子と香奈枝と明)の目を避けるためにあえて遅くしたのだ。ちなみに女性陣のほとんどは5時~6時半の間に済ませている。
「誰もいない・・・よな・・・・・。」
おそるおそるシャワールームの扉を開ける和也。幸いにも今は誰もいないようだ。
ふう、と安堵の息をもらしてシャワーの栓を開ける。だが、その刹那・・・・。
「か~ず~や。」
「ひゃぁっ!」
いきなり現れた声に悲鳴を上げてしまう和也。だが時すでに遅し。
「部屋にいないと思ったらこんなところにいたのね~。ムフ。ムフフフフフフ。」
「お、おい陽子。まて、よく考えろ!俺は男で、お前は女だ。そのことをよく考えろ!」
「え~。でも、今の和也は正真正銘の女の子なのよ。そっちこそよく考えたら~?」
そういって陽子は近づいてくる。やばい、マジ怖い・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
その後、艦内中に声にならない声が数分響き渡った。
翌朝。
「はぁ・・・・・・・・。」
昨日はひどい目にあった、と心の中でぼやく和也。気のせいか、昨日より女度が増しているように見える。
いつものごとく顔を洗い終わると途端に、
「かぁ~ずぅ~君。」
「きゃあっ!」
ノックぐらいしてくださいといって、突然の来訪者香奈枝のほうへ視線を向ける。ちなみに今の和也の服装は下着にシャツ1枚(下着は借り物)というラフな格好なので、さらに異性(和也からしてみれば)に見られているので恥ずかしいことこの上なかった。
「何ですか?」
「パーティーのぉ~準備で足りないものがあったからぁ~買ってきてぇ~」
それはもう俺が行くの決定形ですね香奈枝さん!などと心に思ったが、暇つぶしにはちょうどよいので、
「わかりました。ところで、今ここはどの辺ですか?」
「ブラジルのぉ~大西洋側だよぉ~。」
「そうですか~。ブラジルの大西洋側・・・・・って!日本の裏側じゃないですか!」
いつのまにここまで来たんだ。というか地球の裏側まで飛んでけっていうのか!?
「だいじょうぶぅ~。メサイアの機動力だったらぁ、30分もあれば着くってぇ。それに和君。やることないでしょぉ?」
これはもう逃げられないと悟った和也はおとなしく行ってくることにした。そして、ポルトガル語ができない自分を深く呪った。
「ははは。それは災難だったな。」
「笑い事じゃないよ。」
メサイアで発進した和也は、まず最初にバルキリーに質問攻めにされたので、事の起こりを最初から話した。バルキリーにその間何をしてたのかと聞くと、「今はまだ言えない。」と言ってきたため、それ以上は追求しないようにした。
そうこうしているうちにもう日本の上空に来ていた。相変わらず速いことこの上ない。早く買い物を済ませてしまおう。
「どこか降りるのにちょうどいいところはないか?」
「そうだな、あそこがいいだろう。」
そういってバルキリーが示した所は、俺の地元でも有名なショッピングモールの駐車場だった。確かに一部空いているところがある。
「わかった。」
機体をヘリコプターの着陸のように地面へ下ろし、誰にも見つからないよう機体を降りて、そそくさ例の装置へとしまった。
「ええと、頼まれた買い物はと・・・・・・。」
「ずいぶん買うんだなぁ。」
「あぁ、そうらしいな。」
購入物は、ファ〇タ2本、コーラ3本と、飾りつけのモールを10本、さらに〇っちゃんオレンジ1本という内容だった。これ全部でどんくらいの重さになるんだろ。せめて1人は手伝いよこせ。
「ま、さっさと買って帰るか。」
すべてのものを買い終えて駐車場に戻ろうとしたとき、予想外の人物に絡まれた。
「あの~、そこのお姉さ~ん。」
聞いたことのある声に「誰がお姉さんだ!」と言い返しそうになったがやめた。今の俺は女なのだから。
「な、なんでしょうか!?」
なるべく平静を装って振り返ってみると、そこには声の主がいた。
時間はややさかのぼる。
ここは地元でも有名な某ショッピングモール。そこには和也の友人こと東屋将太がいた。なぜ彼がここに来たかは誰であろうと予想がつく。そう、彼はナンパをしに来たのだ。
(え~と、とりあえずいい女性はいないかな~)
周りをみる振りをしてよっそうな相手を探す将太。そこに、重い荷物を抱えた同世代っぽい女性を1人見つける。
(よし、あの子にしよう!)
そう心の中で決意し、声をかけに行く。相手が諸事情によって女になっている和也とも知らずに・・・・・。
ここは、ショッピングモールの中にあるとあるカフェ。何とかカフェに誘うまで行った将太だが、そこから先のことをまったく考えていなかった。また、和也のほうも、早くこの状態から抜け出して、帰りたかったのであった。
(・・・・どうしよう。誘うことまではできたけどその先を考えてなかった。マジどうしよう・・・・・・・。)
(どうしよう。早く帰んないといけないのに。とりあえず自然な流れで帰るしかないな・・・・・。)
「「あの。」」
「「どうぞ。」」
というようなぎこちない会話が先ほどから繰り返している2人だった。だが、将太が男らしさを見せようとしたのか、動きを見せた。
「あの~、よければお名前教えてもらえませんか?できれば、年齢も。」
「な、名前ですか?」
ここでよーく考える。今ここで本名を名乗って本当のことを話したら信じるか。否である。第一和也たちが超能力所有者というのを知っているのは学校の教師陣だけなのだから。
冷静な判断を脳内で約0.1秒で下した和也は、1つの結論に達し、行動した。
「私は天児美由と申します。あの、あなたのお名前は・・・・?」
「あ、すいません。僕の名前は東屋将太です。にしても偶然ですね。僕の友達にも天児ってい言うやつがいるんですよ。」
(おぉ~。キタァーッ!いいよこれいいよこれ!)
「あら、ってことはあなたがあの・・・・。」
(よし、この流れで何とか抜け出そう。)
「天児和也は、私のいとこです。」
「えぇっ!和也のいとこなんですか!?」
それから自然な形で終わらせるための雑談を数分続けたところで時計を見る。
「ヤダいけない!私行かなきゃ。すいません、時間なのでこれで帰らせてもらいます。」
そういって天児美由こと和也は席を立つ。
「わ、わかりました。また会えるといいですね。」
そんな将太の言葉に和也はやさしく微笑みを返す。あくまで、演技で。
ここは日本沖200kmほどのところ。現在ステルスモードで移動中の1機の機体があった。
「ふぅ。時間とられちまったよ。」
コックピットの和也はそうつぶやく。もちろん話し相手はバルキリーだ。
「ハハハッ。まさかナンパまでされるとはな。もういっそそのままでいたらどうだ?」
「やめてくれ。こんなのもうたくさんだ。」
そんな会話をしていた刹那だった。
メサイアの警報装置が鳴り響く。
「どうした!?」
「敵機にロックオンされてる。敵の場所は・・・・。2時方向、距離500。」
「何!?」
刹那、コックピットに衝撃がはしる。幸い結界をはるのが間に合ったため、たいしたダメージは受けていなかった。
すぐさま敵のいた位置を視認した。
「!?」
そこには、見たことのない黒い機体があった。しかもその形状はメサイアによく似ている人型のシルエットだった。そして、その手にしているのは巨大な大鎌。さらには左腕部装甲と一体化しているビーム砲らしきものがあった。先ほどの衝撃はビーム砲によるものだろう。
「おい、バルキリー。まさか、あいつか?お前の言っていたやつは。」
「ああ、間違いない。あれこそが」
漆黒の謎の機体。そのメサイアと似た姿から、神に最も愛され、神を裏切った者。その名前は
「ルシファー・・・・・・。」
お久しぶりです。あと、遅いですけどあけましておめでとうございます。谷内馬将改め木内マサヤです。え?なぜ名前を変えたかって?それは秘密です。最近はネタが出てこなくて困っています。なので、つぎの話を作りやすくするためにも今作初、続く・・・。という形をとらせていただきました。ようやく新キャラ登場ですが、描写的に(?)どう思いになりましたでしょうか。私的にはロリマッドサイエンティストです。ああ、今日も知り合いのロリコンが騒いでいる・・・・・・・・・・・・・・・・。
さて、まだまだこの話は終わらないので応援よろしくお願いします。
(主人公、ちょっとチートだ、どうしよう。マサヤ心の俳句)