恋する乙女の悩み事
外は華麗な星々と、優雅な夜景が見下ろせる。そう、ここは観覧車の中だ。そして、1人の男が1人の女に詰め寄っている。
「だ、だめだぞこんなところで。」
その声の主の顔は、やや赤く染まっていた。
「いいじゃないか。もう離さないぜ。マイエンジェル。」
そして、2人の唇が少しずつ近づいていく。もうすぐつきそうなところで、ピピピピッという音とともにその情景は消えうせた。その後のことは、誰も知らない。
「うぅ・・・。もう朝か。」
ここは、学校へ行く明のために軍(正確に言えば艦長)が確保した1人暮らし用のマンションの1室。夢から覚めたばかりの明の寝室だった。
目覚めたばかりでまだ寝ぼけているが、次第に目が覚めると見た夢の恥ずかしさに、顔を赤くするのであった。
(い・・・いかん。平常心を取り戻すのだ。瑛明蘭!忘れたのか、私は誇り高きエクスカリバーのエースパイロットの1人だ。そうだ。わたしは・・・・・・。)
しかし、どんなに平常心を取り戻そうとしても目に浮かぶのはあの夢のことであり、頭の中で考えてしまうのは
あの夢の続きである。
(私と和也が、そ・・・・その・・き・・キスなどというのは・・・・・。)
しかし、ありうるはなしである。だが今はどうしようもないのでそのことは頭の隅に押し込めて、朝食の準備にとりかかった。
キーンコーンカーンコーンという学校恒例のチャイムが鳴る。だが、それでも校内はあわただしい。今日は学園祭を2週間後に控えているからだ。各生徒は準備に追われている。ちなみに和也たちの所属する2年3組の出し物は演劇で、タイトルは「眠れる森の美女」である。
「そこの村人よ。この茨はいったい?」
この声の主はいわずと知れたメサイアを駆る高校生隊長こと天児和也である。
この演目の眠れる森の美女だが、クラスで演劇で何をやるか揉めるに揉めて挙句の果てに教師が決めたという(ちなみに最終候補にはシンデレラとロミオとジュリエットが残った)。また、配役だが、王子役は満場一致で和也に決まったが、姫役の生徒が一向に決まらなかったため、残りをすべてくじ引きで決めた。以下その配役である。
王子 天児和也
姫 瑛明蘭
魔女 水鳥陽子
村人 東屋将太
この配役で、陽子は不機嫌メーターが絶賛上昇中であったが教師の口車と和也の説得で、どうにか落ち着いた。
そして現在一通り通すという最後の仕上げに差し掛かっている。だが、明には気がかりなことがあった。
「ラストシーンいくよー!アクションッ!」
ラストシーンというのは最後の目覚めの口付けのシーンである。このとき明の心臓はかなり音を立てている。キスシーンなおまけに相手が和也なので明は心臓が跳ね上がりそうだった。そのためつい目を強くつぶってしまい、そのたびに失敗している。別にとおくからじゃわからないんだからいいじゃないかと和也と言ったが、これを仕切っている指揮官が、
「これには我がクラスの未来がかかってるの!これは、私個人のためとしても完璧にしたいわ!というわけでよろしくっ!」といった具合なので現在も最後のみなかなか進行していないのである。
「はぁ。」
わたしは、どうしたらいいのだろう。
今日はいつもよりやや帰りが遅いが、和也と陽子は衣装合わせなのでまだ学校に残っている。などと考えていると、もし効果音があればピーンという音が出そうなことがひらめいた。
(そうだ、あいつに相談してみよう。あいつならどうにかしてくれるかもしれん!)
そして明はある人物のところへ向かった。
扉を開けるとカランカランという音が店内に響く。そこに明の目的の人物はいた。
「あらぁ。明蘭ちゃんじゃないのぉ。1人でなんて珍しいわね。どうかしたの?」
そう。いわずと知れた店のマスターことカイ・シトーである。
「いえ、今日は私だけ早く帰ってきただけです。それで・・・あの・・・相談があるのですがよろしいですか?」
「えぇいいわよぉ。なぁ~んでも相談してちょうだい。」
「実は・・・・・・。」
それから明は自分の思っていることをすべて話した。
話を聞いたシトーはこう言った。
「うーん?それはあなたの年相応の恋の悩みね。」
「恋・・・・ですか。」
「そう。自分でも気づいてるんでしょ?」
それはわかっていた。だがそこから先が明にはわからなかった。
「他の子に負けたくないのなら、自分を信じて前に進みなさい。パイロットだってそうでしょ?作戦を成功させる前に、自分を信じきれなくなったら終わり。あなただって、十分可愛いんだから。自身持ちなさい。」
「自分を・・・・信じる・・・・。」
その時、今まで明の中で引っかかっていた何かがふっきれた。
「クハハハ、ハハハハハハハ!。なんだ、そうゆうことだったのか!。私は何を考えていたんだ。」
「どうやら悩みは解決したようね。」
「はい。ありがとうございました!」
「いいのよ。悩みがあったらいつでもいらっしゃーい。」
「はい!」
そう言うと明は外へ駆け出していった。
(私は今和也にこの気持ちを伝える!)
そう心に思いながら走ると不思議と体が軽くなっていく。そしてしばらく走ると和也を見つけた。
「和也!」
そう声をかけると和也はこちらを向いた。
「おぉ、明じゃないか。どうしうむっ!?」
和也が喋っていたが、明は気にせず和也の唇を奪った。そして、唇を離してこう言う
「好きだ!和也!」
これにはさすがの和也も反応した。
「明・・・・・・・。」
「だが、まだお前の答えは聞きたくない。あいつも私と同じだからな。」
「あいつ?」
明が視線を向けたほうに目を向けるとそこには陽子がいた。
「もう、何よ!あんたばっかり!あ、あたしだって!」
そういったかと思うと陽子も同じように和也の唇を奪った。
「和也のファーストキスを奪えなかったのは残念だけど、これで一緒よ!あんたには絶対負けないんだから。」
「フ、望むところだ。」
一方和也は何がなにやらわからなかった。
「えぇと・・・・・・・。」
「これからもよろしくね。」
「よろしく頼む。」
「お・・おう。」
このことは3人の心に一生残るであろう出来事だった。
その後の劇の練習はうまくいった。剣劇のアクションはもとから2人の身体能力が高かっただけに思いのほかスムーズに進行した。そして本番・・・・・・・・・。
クライマックスシーンで会場はおおいにもえたそうな。
「あ~つかれたぁ~。」
和也は湯船につかりながら叫んだ。そのとき、どこからともなく声がした。
「フム。最後のキスシーンは最高の出来だったぞ。」
「おわぁっ!びっくりした!驚かさないでくれよ。」
その声の主はなんとあのバルキリーであった。
「私はそんなことをしたつもりはないのだがな。」
ちなみに幽体といっても透けてはいない。バルキリーいわくそんなのはとうの昔に終わっているらしい。
「てゆうか、お前よく他の連中にばれなかったな。俺も気づかなかったが。」
「心配ない。何せ、今のところ君にしか見えないのだからな。」
「へぇ~。」
そりゃ便利なものだ。
「それとひとつ話しておきたいことがある。」
「何だ?」
「前に話したアレがついに動き出した。」
「そうか。覚悟を決めなきゃならないかもな。」
その場所の空気はとても重いものだった。この世の何よりも。
ここは、犯罪者を入れておく牢。その静かな牢の中の1つの前にカイザーは立っていた。
「お前がついに役立つときが来た。」
そういって牢から出した人物は獣のようだった。
「へへへ、どんなやつか楽しみだぜ。」
その声は、暗く、だが好奇心に満ち溢れていた。その人物の名は・・・・・・。
「頼むぞ。カグラ。」
どうも、お久しぶりです。最近日々を無駄に過ごしていることがわかりました。皆さんご存知でしょうか。人間は寝ている間に必要な記憶といらない記憶に分けて、いらないほうを切り捨てているそうです。私はここ最近1週間前のことが8割ぐらい頭から消えていることがありました。多分そうゆうことなのでしょう。さて、なんだか最後に怪しいキャラが出てきましたが、詳細はまだふせておきます。次回は今の季節に追いつけるようにクリスマスのお話をしたいと思います。でもそういえば前回主人公が新たに少女を落とすといった気がしましたがスイマセン。やはり無駄に人生過ごしてました。つぎの話で作者が覚えていれば出します。多分。ではでは、また次回にお会いしましょう!