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メサイア  作者: 木内マサヤ
5/10

最初の覚醒

 ざざぁざざぁ、と波の音がする。眼前には白い砂浜と透き通った水、そして夏の太陽がいつもにまして輝いて見える果てしなく広い青空がある。そう、ここはつまり・・・・・

「海だー!」

 そう叫んだのは陽子だった。

 

 時はさかのぼること数日前・・・・・・・

 ここは、ヘリオスブリッジ。

「今年の特訓は軍の作った人工島で約1ヶ月の特訓を行うわよ。まぁ軍が作ったとはいってもちゃんとビーチなどはあるから、初日は自由時間でいいわ。それと、今回はスコーピオン小隊も合流するわ。ま、仲良くやってちょうだい。」

「カリブさんたちも一緒にやるんですか?」

「今回、スコーピオン小隊はサポートよ。まぁ時間があったら手合わせをしてみるのもいいかもしれないわね。以上でミーティングは終了よ。明日にはこの艦で向かうから、忘れ物のチェックをしといてね。」

ミーティングが終了すると、周囲はにぎやかになった。が、その中で最もテンションが高く、かつもっとも燃え上がっている人物が若干2名ほどいた。明と陽子であった。

「2人ともそんなテンションあげてどうしたんだ?」という声がのどの半ばまできていたが、2人の目を見て身の危険を察知し言うのをやめた。和也はわからないが2人の思っていることは簡単である。この特訓を機会に和也を落とすである。だが、互いに目的が同じなのはわかっているようで、殺気をむき出しにしていた。

「モテる子って大変ね。」

とシトー。

 そんなこんなで出発前日の夜は更けていくのであった。


翌日。時間は現在に戻る。

「あんまりはしゃぎすぎるなよ。明日からにひびくからな。」

「わかってるって。」

そういって陽子は海へダッシュして行った。陽子を見送っていると背後で聞き覚えのある太い声がした。

「久しぶりだな。天児和也君。いや、天児少尉と呼ぶべきかな。」

「どうもお久しぶりです、カリブさん。いえ、カリブ中尉。」

久しぶりの対面であり、思わず笑みがこぼれる。

「しかし、入隊そうそうすごいじゃないか。聞いたぞ、敵エース級を1人で倒したそうじゃないか。」

「いえ、たまたまですよ。」

ちなみにカリブも当然のように水着である。

「ところで、君の特訓の目標を聞きたいんだが、教えてもらえないかな。」

そう、今回の特訓はそれぞれが目標を決めて取り組んでいる。ちなみに陽子は近接戦闘能力の向上。明もそれは同じ。香奈枝は狙撃の精密度の向上を目標としている。

「あぁ・・・・・・。」

「その顔を見ると、まだ決まってないようだな。ちょうどいい。明日俺とひとつ手合わせをしてみないか。そうすれば何か目標が見つかるかもしれないだろ。」

「はぁ。でも、どちらでやるんですか?」

「手合わせといったらあっちでしかないだろう。」

そういって顔を向けた先にあったのはエクスカリバーの整備工場のようなところだった。

「わかりました。よろしくお願いします!」

「ああ。」


 そして翌日

 どこで噂を聞いたのか、会場はギャラリーで溢れかえっていた。にしても・・・・

「ここ広いな~。何キロぐらいあんだろ?」

「エクスカリバーが自由に動き回れるように、10キロ四方ぐらいの広さがあると聞いたな。」

そう答えてくれたのは明だった。

「へぇ~。にしても何でこんなにギャラリー集まってんだ?あれは俺とカリブ中尉しか知らないはずだが?」

そういってここにいる明、陽子、香奈枝さんの顔を見渡してみると、誰が犯人か一発でわかった。

「おい、陽子。」

「ギクッ!!」

「やっぱりお前か。」

「いやぁだってぇ~・・・・。」

そういいながら誤魔化し笑いをする陽子。

「はぁ~。もういいよ。にしても、なんでここまで集まるんだ?会場ほぼ満員だぞ。」

ちなみにあとから聞いた話だが、会場の客席はちゃんとバリアで守られているらしい。

「それはぁそうだよぉ~和君。」

今度の回答者は香奈枝さんだ。

「だってぇ~、入隊初日で隊長になった新人くんとぉ、軍の中でもぉ、トップクラスの人が戦うなんてめったにないことだからだよぉ。」

なるほど。確かに納得はいった。あと、軍上層部とヘリオスの一部の乗組員しか知らない書物のことはちゃんと伏せられてるのか。

「まぁ、始まってしまったものはしょうがないか。いってくるぜ!」

「負けたらただじゃおかんぞ。」

「和也、勝ちなさいよ。」

「がんばってぇ~。」

3人の声援を背にうけ、俺はメサイアで飛び出した。出た先にはカリブのエクスカリバーが待ち構えていた。

「では、早速はじめるとしよう。」

カリブの声は昨日とは違って、戦闘中のときのような緊張感に満ちた声だった。

「はい。」

試合開始!


 「はぁ・・・・・・。」

「まぁ、そうきを落とすことはない。」

シャワールームで和也のため息と、それを慰めるかのようなカリブの声が聞こえた。

 結果は、最初こそ和也が優勢かと思われたが、いつの間にか角に追い詰められて鉄の壁でプレスされて終わった。つまりは惨敗である。

「しかし私も驚いたぞ。まさか残像ができるほどスピードとは、君の超能力なら日本の忍者の使う分身の術というのを使えるな。」

なるほどそれは名案!と思ったが今はそれよりも深刻なものがあった。

「ところで、私が見た限りでの君の弱点を言おう。ズバリ、君の超能力は、2つ同時には使えないということだな。」

ものすごく心にグサッときた。

「いえ、正確には、メサイアに乗った状態では使えないんです。生身なら普通に使えますよ。ほら。」

そういって和也は、結界を出してそのままカリブの真横へ瞬間移動した。それはカリブも驚いたようだった。

「フム。なるほど。ということなら簡単だ。おそらくそれは、君ではなく、機体のほうの問題だろう。メカニカル的な問題か、それとも・・・・。」

「それとも・・・・・?」

「いや、なんでもない。」

そういってカリブはシャワー室をあとにした。


 「これが地球人どもの基地か?」

その声は、男の声であったが、野太い声ではなく、若い青年のような声だった。

「はっ!地球人の基地のひとつと思われます。」

「よし、わかった。エッジ部隊を出撃させろ。出撃編成はパターンAだ。私も出る!」

「し、しかしっ!」

「あの猛将レガードを倒したやつに興味があるのでな。これぐらい好きにさせろ。」

「わかりました。ご健闘をお祈りします。シーマ様。」


 基地の中はどこもかしこも警報が鳴り響いてた。

「また敵襲か。夏ぐらい休ませてくれったらありゃしないよ。」

そんなのんきな和也のセリフにもちゃんとつっこんでくれる人はいた。

「ほら、ぶつくさいってないで出撃するわよ。」

「そうだぞ、この基地がつぶされればそれだけで甚大な被害が出るのだからな。」

「まぁ~とにかくがんばりましょぉ。」

この状況では反論は無理そうだ。だが、それは和也にもわかっていた。

「へーいへい。んじゃまぁ、セレネ小隊出撃!」


 「こちら、セレネ1、出撃完了しました。」

「了解しました。敵は隊長機らしき機体以外はすべて他部隊が交戦中なのでセレネ小隊は隊長機の撃破に当たってください。ただ、敵隊長機は超長距離からの射撃をおこなっています。注意してください。」

「敵機の距離までは?」

「ジャミングがかけられて詳しい距離はわかりませんが、少なくとも500kmは離れていると思います。」

「わかった。」

「どうするの?」

「私でもそんな距離は無理だわ。」

「まずは俺の能力で接近してみる。」

超加速で接近してみる。カリブさんとの時出した残像が見える(つまり光速を超える)速度で接近を仕掛けてみる。いくら射撃が正確でもこれには反応できないだろう。そう誰もが思っていた。しかし、

「ぐあっ!」

「和也!」

なんと、相手はその速度にすら反応して見せたのだ。幸い機体にはダメージがなかったが、恐ろしい反応速度である。

「あの速度にも反応するなんて・・・・。」

「なんてやつなの。」

「一体どうすりゃいいんだ。」

3人が頭を悩ませている間にも、砲撃は続いている。いよいよピンチかと思ったとき、通信が入った。

「こちら、スコーピオン1、カリブだ。」

「どうかしましたか?カリブ中尉。」

「天児少尉、これを使ってくれ。」

気づいたときにすぐ近くにいたカリブの機体は何かを投げてきた。キャッチするとそのものの正体がわかった。

「これは・・・・・。」

「俺の超能力で生成した、鉄の壁だ。最大強度にしてあるから、盾代わりに使ってくれ。ただし、さすがに光速を超える軌道には耐えられないから注意してくれ。」

「わかりました。ありがとうございます。」

「健闘を祈る!」

これならいけるかもしれない。

「よし、いってくる!」

敵の砲撃をかわし、あるいは鉄の壁ではじき返して進んでいく。しかし、敵に近づけば近づくほど、敵の砲撃は強くなっていき、次第に鉄の壁も攻撃を防ぎきれなくなってきていた。

 そして、ついに、あと1kmというところで鉄の壁に限界が来た。

「くそっ、もう少しなのにっ!ぐあっ!がっ!ぐぁぁぁぁぁぁ!」

機体に弾丸が直撃し、和也は気を失った。コントロールを失った機体は、ただただ落ちていくいくだけであった。


 気を失ってからどれくらいがたっただろうか。和也は夢の中の声で目覚めた。

「どうした。ここで終わるのか」

その声はバルキリーの声であった。

(終わりたくない。終わらせたくないんだ。だけど、力が足りないんだ。今の力じゃ・・・・・・。)

「では聞く。お前は何のために力をほっする。」

(俺の仲間や友人、なにより、この地球を守るためだ。)

「では、お前に新たな力を与えよう。天児和也。この新たなる力を以て、絶望を希望に変え、新たなる道を切り開くのだ!」

バルキリーがそういうと、機体が輝き、新たな力が開放されていった。


 「ふん。レガードを倒したと聞いたがこの程度のものだったか。いや、この私が強すぎるのだ。ワッハッハッハッハ・・・・!?」

シーマが高笑いをした瞬間、敵を撃墜したところから、光が湧き出してきた。

「な、何なんだこの光は!?」

こちらはセレネ2とセレネ3。ついさっきセレネ1の撃墜が確認された直後だった。それは、バルゴ1からでも確認できた。

「か・・・ずや・・・・・!?」

「そ・・・そんな・・・・。」

和也が撃墜された。それは2人にとってはとても大きすぎることだった。しかし、そこへ香奈枝の言葉が入った。

「待って。この反応は!」

レーダーには、メサイアの反応があった。その方向へカメラを超望遠にして見てみると、そこには黄金に輝いている和也の機体の姿があった。

 そして、何もしていないのに和也の声が入る。

「俺は守る。友人を、仲間を、人間を、この地球の未来を。だから、こんなところで終わるわけにはいかない!」

その声は、とてつもなく強く、そしてやさしさのある声だった。

「この世の悪を廃し、正義とやさしさの力となる。メサイア!Mk-2!!」

メサイアの立ち姿は、威勢良く、そして、みたものに勇気と力を与えるようだった。

「おのれぇ!まだあがくか。くらえくらえ!」

シーマはメサイアを攻撃した。だが、

「それはもう、きかない!」

結界防御と超加速が同時に使えるようになったメサイアに、今勝てるものはなかった。

「くらえ!」

和也がそういうと、結界が敵を包み込んだ。

「な・・・なんだこれは?」

敵の動きを封じると、メサイアの手に刀剣が握られ、それが巨大化していた。

「超速!大切断!。」

敵を斬る直前に、結界を解除し、巨大な刀剣がそのまま敵を切り裂いた。だが、敵は前回のカスタムエッジ同様脱出されたようだった。だが、今はそれで十分だった。

「ありがとうな。バルキリー。」

「礼には及ばない。これから私はこの機体の操縦援助装置としての役目を担うことになってる。」

バルキリーはメサイアMk-2の一部となっていた。

「つまらなくないのか?」

「上からの命令ではしょうがない。それに普段は幽体でいるしな。あと、君といたほうが何かと面白そうだからな。」

その声は嘘をついているとは思えない声だった。

「そっか。」

「それよりも、仲間が待っているぞ。」

「ああ!」

見た先には仲間が自分の事を呼んでいた。

 少年の地球の未来をかけた戦いはまだまだ続く。


 「申し訳ございません。いかなる罰もお受けします。」

その声の主はシーマであった。場所はカイザーの前である。

「今回はあの機体のデータに免じて許してやる。だが、つぎはないと思え。」

「はっ!」

シーマは退室した。

(やはり・・・・か。これではうちのものでは太刀打ちできん。仕方がない。あいつを使うしかないか。)

カイザーは電話をかけた。

「私だ。今すぐあいつを出してくれ。急いでくれ。」

ガチャンと受話器を置き、部屋を立ち去る。その顔は、とても無表情だった。

第5話までようやく書くことができました。主人公の機体のバージョンアップは、まだ早いと思いつつも、ネタがないのでやりました。さて、次回では主人公がまた一人少女を落とす予定です。新キャラにこうご期待してほしいところです。ではまた次回会いましょう。今後ともよろしくお願いします。

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