第8話 朝海のヒミツ
「つーかさぁ?お前いつから豪とメールしてたの?」
俺はちょっと興味があって、聞いてみた。
「……え」
朝海はとたんにぼぉっと顔を赤くした。明らかに様子が変だ。
ちょうど、俺がいきなり中島の名前を出された時みたいに。
「あ、えっと…こないだ、日曜にたまたま会って…」
――ふーん…。
俺はニヤリと笑った。
「で?豪が好きだから何とか口実をつけてアドレスを聞き出したと」
俺は確信した。
こいつも、同じなんだな。
俺に似てたから、わかった。
「…はいはい。確かにそのとーり」
朝海は以外と諦めがよかった。
「へ〜それは面白いなぁ」
これで俺も朝海の弱みを握ることになる。
「もう、真似しないでよ〜!絶対言わないでね!」
「それはお前次第だな」
俺もわざとふふんとしてみせる。
俺は面白くて仕方なかった。
ちょっと豪と朝海の気持ち、分かるな。
「言わなきゃいいんでしょ、言わなきゃ!」
朝海はぷぅっと膨れて見せた。
「そうそう」
俺は不気味なほどにこっと笑った。
その時、ちょうどチャイムが鳴った。
「じゃあまたね」
そう言う朝海の顔はいつも通り。
(気持ちの切替えはやいとこがあいつのいいとこだな)
頭冷やすのは成功。
大収穫だった。
俺はくるっと教室の方に向いた。
――ドンッ!!!!
「…う…わ!!」
「あ…わっ!!ごめんなさいっ!!」
いきなり誰かがぶつかってきた。
とりあえず俺は相手の女の人にケガがないか確かめる。
「あ…えっと…大丈夫っすか?」
「は…はい、ごめんなさい…急いでて」
その時、ブレザーの衿の学年章が目に入った。
(赤い学年章…2年生か)
キーンコーンカーンコーン…
朝礼の始まりのチャイムが鳴った。
もうすぐ先生が来る。
「あ…あの、すみませんでしたっ!」
女の人はぴょこんと立ち上がると、頭を下げてバタバタと去って行った。
「なんか…ウケる」
俺はぶつかられたことも忘れて笑っていた。
「川岸?朝礼始めるぞ、早く教室入れ!」
担任の大浦先生がちょうど来て、ぶっとい声で言った。
「あ、はい」
俺は返事をすると、教室に入った。
(なんかあの人、見たことあるんだよな…)
俺は一瞬だけ見えたあの人の顔を思い出していた。
――そしてこの日が、君との最初の出会いだった。