第7話 冴えない日
(ダメだ……今日の俺、いつも以上に冴えねぇ…)
朝っぱらから中島と豪と朝海のトリプルパンチ。
正直体がもたない…。
(特に豪と朝海!絶対俺で遊んでるし…)
豪をちらっとみると、相変わらず面白いものを見るように笑っている。
俺は不機嫌というか動揺というか安心というか…とにかく複雑な気持ちだった。そんなぐるぐるした頭で人口密度の高い教室にいると、息が詰まりそうになる。
「ちょっと俺…頭冷やして来る」
豪にそう告げてから、席を立った。
「…お?そうかそうか。あと10分だけど冷やして来い」
豪は黒板の上にかけてある時計をみてそう言った。
滑りの悪いドアをガラガラと開けて、廊下に出る。
ちょうど今の時間に来る生徒が多いようで、あいさつや笑い声が飛び交い、生徒が行ったり来たりしている。
なんだか教室とあまり変わらない。
(…戻ろうかな)
俺は出て来たばかりのドアに手をかけた。
その時。
「健太〜!」
――はぁ。この声は……
俺を呼ぶ声が聞こえた。
誰か分かっていながらも振り返る。
そこには案の定、いつも遅刻ギリギリの朝海が息を切らして立っていた。
俺たちは1-C。
朝海は隣りのクラス1-Dなので、こうして会うことがよくある。
「今日も早いね!」
「誰かさんとは出来が違うからな」
昨日と今日のこともあって、ちょっと皮肉を込めて言ってみる。
「ふぅ〜ん…いいのかなぁ?梨帆にせっかく言わないであげたのに…言っちゃうよ?」
朝海はふふんと偉そうにしている。
(くそー!!ムカつくーー!!)
しかし俺は、バレるのが怖いので、ムカつく気持ちを抑え、それ以上は言わないことにした。