第6話 安心
「はぁ……」
――何で好きな人ってあんなに可愛く見えんのかなぁ…。
そんな論理的なことを考えながら、窓際の後ろから2番目の、自分の席についた。
「見てたぞ〜!あ〜朝からお熱いことで!」
「あーもー…うぜぇ……」
真っ先に話しかけて来たのはもちろん豪。
いつも以上に悩みがなさそうな顔に腹が立つ。
よりによってこいつの席は俺と同じ窓際。
しかも俺の目の前だ。
校門の様子を見てたんだろう。
「…てか何でお前今日に限って来るの早いの?いつも遅刻ギリギリじゃん」
俺は話を逸らそうと、仏頂面で質問した。
「あー…今日から一年さ、朝から自由に体育館使えるじゃん?」
そう言いながら、豪は椅子を不安定に浮かせて見せる。
そういえばそうだった。
1年生やレギュラー以外の2、3年は、あまりゲームなどに参加できない代わりに、朝からなら自由に体育館を使っていいことになっている。
「俺も誘えよ!ぬけがけなんて卑怯だぞ!」
俺はなぜか軽く逆ギレ状態だった。
「ごめんごめん。梨帆ちゃんのことでそれどころじゃないかなーと」
豪はそんな俺をほほ笑ましそうに見ながらさらっとかわしてみせる。
完全に俺の負けだ。
「…明日から一緒に行こうな」
「もちろん」
豪はそう答えると、俺が面白くて仕方がないようで、ずっとにこにこしていた。
「てかさー…豪…」
「ん?」
俺は朝の会話を思い出して、豪に相談を持ち掛けた。
「絶対俺の気持ちバレてるはずなのに、中島普段通りだったんだよ…どう思う?」
「何でバレてるってわかんの?」
豪は相変わらずにこにこしている。
「……え。だって朝海のことだろ…絶対中島に言ってるよ」
はぁーっと俺はまた溜め息をついた。
「朝海ちゃんは梨帆ちゃんに言ってないよ」
豪はさらっと言った。
「言ってな………は!?」
俺は豪に聞き返すようにつっかかる。
「何でお前が知ってんだよ!?」
「だってメールでそう言ってたもん」
「あぁ、メールで……っていつの間にお前らメールしてんの!?」
驚くべき事実がつぎつぎ出てきて、俺はノリツッコミ状態だ。
豪はくすくす笑いだした。
「……さぁな?」
俺は気が抜けて放心状態になっていた。
「………くっそ〜なんなんだよ〜!!昨日の俺は!」
「ドンマイ!」
豪はポンと肩を叩く。
――くそ…遊ばれてる…
俺はもう半泣きだった。