第4話 バレた
「…………おい…豪…」
長い沈黙を破る俺。
豪はバツが悪そうに黙っている。
梨帆と言うのは、同じバスケ部の中島 梨帆のことだ。
朝海とは対照的に、ショートカットでボーイッシュ。
面白くて、男子も女子も関係なく、言うことははっきり言うタイプだ。
身長も高めで、顔も結構男っぽいけど、笑顔がすごく可愛い。
俺はそんな飾らない所が、すごく魅力的だなぁって思ってた。
朝海と仲がいいので、話す機会も多く、この前俺の好きなバンドのCDを貸すことになったのだ。
俺のこの気持ちは、豪にしか言ってなかった…のに。
「ふ〜ん…イイこと聞いちゃった」
へへへとニヤけている朝海が、今はとても怖い小悪魔に見えて、思わずゾクッとした。
「お……おい!?絶対中島には言うなよ!!?」
「へへ〜どーしよっかなぁ〜」
「……頑張れ、健太」
豪は開き直ったと言う感じのすがすがしい表情で俺に言う。
――くそう。ムカつく、こいつら。
俺はめちゃくちゃ悔しくて、正直そう思った。
「……あ、ほらほら早くしないと体育館しまっちゃうよ?じゃああたし帰るねぇ〜」
朝海は話を無理やり終わらせて、手をひらひら振って見せる。
顔は新しいおもちゃを手に入れた悪ガキそのものだった。
「おい……朝海…」
俺の最後のすがるような小声を無視して本当に去っていってしまった。
ちらっと、豪を見たのは俺の気のせいかもしれないが。
それはそうと、俺はくるりと豪の方に向き直る。
「…どうしてくれるんだよ〜」
俺はムカつくを通り越して半泣きだった。
豪にすがりつくように近付く。
俺に関する話題に対する、朝海の口の軽さを知っているからだ。
心なしか涙目になっている気がする。
「え〜と……ごめんな?」
豪はぽりぽりと頭を掻くと、とりあえずといった感じで謝る。
「……はぁ〜……」
俺はそんな豪を見て、大きく溜め息をついた。
その後も、俺は溜め息をつくばかりで、帰りに豪と話したこともあんまり覚えてなかった。
――せっかく仲良くなったのに…気まずくなるなぁ
その日の夜は、なんだか眠れなかった。