第3話 好きな人
それからストレッチ、ランニング、フットワークと基礎練が続き、体がほぐれたところでボールを使う。
パス練、シュート練、応用などをしっかりやった後、ゲームに入った。
高総体が近いので、今日は俺たちは見ていることが多かった。
「解散!1年は片付けよろしくなー!」
あっという間に最後のゲームを終え、キャプテンの声で俺たちは片付けを始めた。
2時間半という時間は長いようで短かった。
特に好きなことをやっている間は、面白いように時間が過ぎて行く。
きっとゲームにたくさん出られるようになったらもっと早く過ぎて行くんだろう。
授業の時間も、こんな風に過ぎて行くといいのに。
「お疲れ、健太!」
そんな事を考えながらモップを動かしていると、豪が話しかけてきた。
「おー、お疲れ」
俺も豪に言葉を返す。
「今日はボール使えてマジ楽しかった!やっぱバスケはゴールとボールがあってバスケだよな!」
そう言う豪の顔は満足気だ。
モップを片付けに倉庫へ入ると人影が見えた。
「あっ、健太に豪くんじゃん!」
「なんだ、朝海か〜」
俺たちに気付き、話しかけて来た人影の正体は、同じ中学で同じバスケ部だった上田 朝海だった。
普段は肩まで降ろしている髪を、部活の時にはひとつに括っている。
明るい性格と高いテンションで、高校ではなかなかモテているらしい。
「なんだって何よぉ〜!ね〜?豪くん!」
「…え?あ、うん?」
豪はいきなり話を振られて戸惑っている様子だ。
慌てて返事を返している。
「ほら、豪くんもいってるじゃ〜ん」
「バカ、今どう見ても話わかってなかっただろ」
勝ち誇った顔をしている朝海にそうつっこむ。
朝海はそんな俺にふんっだ!と大袈裟に怒って見せた。
「あ、そーいえば健太、梨帆がCDありがとだって。今度渡すね」
ドキッ……――
いきなりその名前を出されて俺は真っ赤になってしまった。
「お〜、愛しの梨帆ちゃんかよ!」
豪がからかう。
「おい!豪……
「え!?健太って梨帆のことすきなの!?」
俺が慌てるのを遮って、朝海は驚いて顔でぽかーんとしている。
「…………」
しかし何より驚いているのは俺だった。