第12話 希望
――あの斉藤キャプテンがライバルなんて
俺は正直自信を無くしてしまった。
斉藤キャプテンと自分じゃ、レベルが違いすぎる。
あっちはルックスは抜群な上に、バスケ部のエースだ。
爽やかで性格もすごくいい。
いろんなところで斉藤キャプテンの話をしているのを耳にする。
「……健太、気にすんな」
豪が一生懸命励まそうとしてくれてはいるものの、俺の気持ちは沈んだままだった。
「失礼します……」
勢いもなく、ガラガラと部室のドアを開け、狭い部室の中へと入った。
「おっ、川岸、高橋お疲れ!」
満面の笑顔で俺たちを迎え入れてくれる、斉藤キャプテン。
いつもは素直にカッコいいなぁとか思えるのに、なんだか今はそうは思えず、ただただ落ち込むだけだった。
「お疲れさまです……」
「なんか元気ないなぁ〜疲れたのか?」
先輩たちが元気のない俺を心配そうに覗き込む。
「…あ!健太今なんかちょっと腹痛いみたいで!俺が見とくんで先輩たちは先に帰っていいっすよ!」
豪が気遣って先輩たちにそう告げた。
「そうか。無理すんなよ!じゃあな!」
先輩たちはちらちら心配そうにこっちを見ながら部室を出ていった。
途端に部室内にシンとした空気が広がった。
ヴヴヴ……ヴヴヴ……
ちょうどその時、沈黙を破るように、俺の携帯のバイブが鳴り響いた。
ディスプレイには『上田朝海』の文字が映し出されていた。
(朝海からメールなんて…めずらしい)
そう思いながら本文を読んだ。
FROM 上田朝海
件名 お疲れ様(^O^)☆
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梨帆がさぁ、健太のアド知
りたがってるんだ!!教えて
もいいよね?♪よかったね
(´▽`)☆
(……中島が……俺のアドを?)
「ん?健太、誰からだったの?」
「中島が……」
「え?」
「朝海から…中島が、俺のアド知りたいって」
なんだか、すこしだけ救われた気がした。