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君との再会  作者: 秋桜
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第10話 あの人

俺は教室のドアをしめると、カバンとエナメルバッグをぎゅっと強く握り直し、駆け出した。

一刻も早くボールが触りたかった。


(今何の練習中かな〜)


ぼーっとそんなことを考えながら、玄関のそばの曲がり角に差し掛かった。

俺は速度を落とし、荒くなった呼吸を整えつつ靴箱に手を伸ばした。


「…あ」


その時、微かに後ろで声がした。


「……?」


俺は不思議に思い振り返る。

そこに立っていたのは、朝ぶつかった先輩だった。


「朝大丈夫でしたか?」


何となく気まずくなって、とりあえず沈黙を破ったのは俺。


「い…いえ、私は全然!ほんとにごめんね!」


そういって先輩はぴょこぴょこ頭を下げた。


ふと、その手にしっかりと握られているバスケットボールに目が止まった。


(あ…この人!)



そう。

どこかで見たことあると思っていたら、この先輩は女子バスケ部の部員だったのだ。


「川岸君だよね?」


「…あ、はい」

いきなり自分の名前を呼ばれて声が少し裏返った。


「知らないかもしれないけど、私も一応バスケ部なんだ。よろしくね」


そう言って先輩は照れくさそうに笑った。「よろしくお願いします」


「あ!私名前言ってないじゃんね!中里薫(ナカザトカオル)です!」


先輩は慌てて付け加えた。

そんな姿がおかしくて、俺もついつい笑顔になった。


先輩と俺は靴を履き替えて、玄関を同時に出た。

ふと、先輩が体育館とは違う方向に歩き出すのを見て俺は不思議に思った。


「…あれ?今日は部活行かないんですか?」


「え、なんで?」


「いや、ボール持ってきてるじゃないっすか」


「あ…うん、今日ちょっと足が……」


先輩はそう言って視線を下に落とした。


(……あ)


俺はそこで初めて、先輩の足首に包帯が巻かれているのに気付いた。

肌に白く映えている包帯が、なんだかとても痛々しそうだ。

「もしかして、朝捻ったんですか…?」


「あ、でもこれそんなに大したことないの!保健の先生が大袈裟にまいちゃって!」


罪悪感に駆られる俺を見て、慌てて先輩は元気そうに装った。


「ならいいけど…お大事にして下さいね」


「うん!ありがと!」


悪かったなぁと思いつつ、俺は少しずつ離れて行く先輩を見送った。



――君はいつも…そんな風に優しかった。

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