第9話 プリント
今日もなんとか長い長い授業を乗り越えて、放課後がやってきた。
HRの終わりを告げるチャイムがとても心地良い。
いつもの様にカバンとエナメルバッグに適当に荷物を突っ込んで席を立った。
「健太〜助けてくれ〜」
そんな時、すがりつく様に俺によって来たのは友達の高比良 亮だった。
今にも泣きそうな顔をしている。
「どうしたんだよ?」
「俺さぁ、授業中寝てたじゃん?それで数学の伊藤に呼び出されて…みてくれよこれ」
そう言う亮の手には、3枚のプリントがあった。
伊藤と言うのは数学の先生だ。
あまり怒らないが、不真面目な生徒はちゃんと見ている。
確かに数学の授業中に寝ている亮を丸めた教科書でパコンと軽く叩いていた。
「明日提出だって…」
「まじで!?ヤバイじゃん…」
亮ははっきり言って頭が悪い。
クラスでも下から数えた方が早いくらいだ。
「わかった……手伝うよ」
俺は黙って俺を見つめる亮の言いたいことを察し、また椅子に座った。
「「終わったーあ!!」」
2時間が経ち、ようやくプリントが終わった。
俺と亮は同時に立ち上がり、ぐーっと背伸びをした。
「健太、ありがとな〜!」
亮は本当に申し訳なさそうに謝る。
「いいよ。だけど今度から数学の授業は寝るなよ」
「うん。目にガムテープでも貼っとく」
真剣に言う亮が面白くて、ついつい笑ってしまった。
「そうしとけ〜!……あっ、ごめん、俺部活行っていい?」
見上げた時計の針は6:00を指していた。
「あっ、ほんとごめんな!頑張れよ!」
そう言って亮は俺の背中を軽く叩いた。
「うん、じゃあな!」
俺は手を振って教室を出た。