第5話:噂の姫巫女
いよいよ、この町を出ることにした聡史とヘスカ。
ヘスカ「モノルス、何かあれば連絡する」
モノルス「了解っす。いつだっていかなる時も、姉さん達の力になるっすよ」
聡史「それじゃ行ってきます」
モノルスと館の魔物に見送られ、町の外へ足を踏み出した聡史達。
出発してまもなく・・・。
ヘスカ「聡史に二つほど言っておくことがある」
聡史「は、はい」
歩きながらヘスカの方を向く聡史。
ヘスカ「一つは、聡史の仲間を簡単には見つけられない・・・かもしれない事」
聡史「・・・大体はわかってます。この世界に来てからもう一ヶ月経ってるから・・・ですよね」
確信をもってそう言う聡史。
ヘスカ「モノルスの仲間が示したのはあくまで聡史達が現れた場所・・・この一ヶ月でどう行動したかはわからない」
きっぱり告げるヘスカ。
聡史「あと、もう一つって・・・」
ヘスカ「姫巫女・・・聡史達をこの世界に導いた人物。仲間との合流を前に行かなければならない」
そう言いながら、あの地図を広げるヘスカ。
ヘスカ「姫巫女がおられる場所もここから一番近い聡史の仲間の位置も、この先の海を越えた先にあるんだ」
地図上を指で示して見せるヘスカ。
聡史「じゃあ、僕達は」
ヘスカ同様に地図を見ていく聡史。
ヘスカ「あぁ、この先の港から船に乗る。そして、目的の大陸へ・・・というわけだな」
また地図を示しながら、説明していくヘスカ。
とはいえ、特に話すことなどない両者は無言のまま歩き続けていた。
聡史「これはあまり聞かない方がいいかもしれないんですけど・・・」
と、先に口を開いた聡史。
ヘスカ「何だ?」
聡史「前にも同じことがあったのかなって・・・」
そう聞いてみた聡史。
ヘスカ「・・・」
しかし、何も答えないヘスカ。
聡史「ごめんなさいヘスカさん。僕・・・」
ヘスカ「私は私の意思でお前と同行している。いつまで一緒にいるかはわからないが、隠し事をしたままで旅を続けるのはな・・・まだ、港までは距離がある・・・だが・・・」
ヘスカがそう言うと
聡史「どんな事実でも受け入れます。僕も選ばれた者として・・・」
ヘスカは聡史の瞳を見てそこに強い想いがあることを感じた。
ヘスカ「時が許す限り・・・私が知ることを聡史に話そう」
港到着までの間、ヘスカは語っていくのであった。
ヘスカ「三年前、まだ私は弱かった。特に戦う必要がなかったからだ。その理由は・・・姉がいたから」
聡史「ヘスカさんのお姉さん・・・」
ヘスカ「あぁ、まだ今の私よりも強く凛々しく・・・私の憧れでもあった」
どこか懐かしい表情で話をしていくヘスカ。
ヘスカ「そんな頃、あの一件が起きた。聡史のようにリアル世界からネメシス世界へ・・・そして、それと同時に魔物達が世界中に現れ出したのだ」
聡史「モノルスさん達とは違う感じの魔物なんですね」
ヘスカ「そうだな。ちょうどその時姉は世界を巡る旅をしていた。その道中でリアル世界の彼等と出会った」
聡史「それもお姫様が呼び出したんですか?」
そう聞く聡史。
ヘスカ「姉はそう判断したらしい。ちなみに私も・・・姉はリアル世界の住人のうち一人のパートナーとなった。戦いの区切りがついたら彼と一緒に故郷に帰ってきて・・・その時に私も彼に出会ったんだ」
何かの思いを込めながら語っていくヘスカ。
だが、次第にその表情は曇っていった。
聡史「ヘスカさん?」
ヘスカ「全て話すと言ったのに、流石に自分の辛い部分を話すのはきついものだな」
無理矢理気味に笑顔を見せるヘスカ。
ヘスカ「あの日の事は今でも忘れない・・・」
空を見上げ再び話し始めるヘスカ。
ヘスカ「故郷にいた時だった・・・私も彼も姉も楽しく過ごしていた。だが、そこに魔物達が奇襲を仕掛けてきたんだ」
聡史「町に魔物が・・・」
ヘスカ「今の時代と違い町には手練れの大人達もいた。彼も姉も強いから・・・だから私は戦えない町の人達と一緒に安心して避難していたんだ。だが」
ここで真剣な表情になるヘスカ。
ヘスカ「戦いが終わり、私が次に見たのは大怪我をした姉の姿だった。彼や戦っていた人達から話を聞いたら、彼に対して不意を突いてきた魔物の攻撃を姉がその身体で防いだそうだ・・・」
聡史「でもそこまでして彼を守ったのって・・・」
ヘスカ「姉が彼に言ったそうだがこの世界を救えるのは彼等だけだから・・・だと。だからこそ姉は命を懸けて彼を守ったんだ」
そう告げるとふと、歩みを止めたヘスカ。
聡史「僕も、その人みたいに・・・出来ればそれ以上になってみせます。だから・・・」
ヘスカは聡史が何を言いたいのかすぐに理解した。
ヘスカ「私がいる限りお前は強くなる。無論私もな」
自信を持ちそう告げたヘスカであった。
ヘスカの過去を知った聡史。
聡史(あの強そうなヘスカさんにも・・・)
ヘスカ「あと一つ・・・」
と、また話し始めたヘスカ。
聡史「何ですか?」
ヘスカ「姫巫女の事も知っておいた方がいいと思ってな」
聡史「お姫様・・・三年前の人達も僕達と同じで・・・」
聡史がそう聞くと
ヘスカ「彼等をネメシス世界に呼んだのは、【前の姫巫女】だ」
聡史「前のって・・・」
ヘスカ「先代・・・といえばいいのか、かつての姫巫女は彼等を呼び・・・そして彼らもそれに応え世界を支配しようとした魔物達のボスを撃破した」
聡史(ゲームで言うラスボスだよね・・・紗江がいつもラスボス戦では張り切ってたっけかな・・・)
ふと、日常の事を思い出してしまう聡史。
聡史が思い出に浸っている間にも、ヘスカの話しは続いていった。
ヘスカ「勝利した彼等であったが、長い戦いはこのネメシス世界に大きなダメージを残してしまっていた。本来なら三年経った今でも復興できないくらいに・・・」
聡史「でも・・・今のこの世界は・・・」
ヘスカ「全て救ったのは・・・姫巫女だったんだ。自分の全ての力を使ってな・・・もちろん彼等も止めようとした。『姫巫女が犠牲にならずとも、時間をかければ世界は復興する』とな」
聡史「でもお姫様は・・・」
聡史はこの続きを何となくわかっていた。
ヘスカ「そう・・・姫巫女は少しでも早くみんなに幸せな生活をと・・・自分の生命を糧として、世界全体に力を放った。その光は私も見た・・・暖かな光だったよ」
聡史「それで今は新しいお姫様がいるんですね」
そんな話をしている間に、二人は港の近くまで来ていた。
ヘスカ「昔の事だが、忘れてはならない事だ」
ヘスカがそう告げると
聡史「先代のお姫様が取り戻した、この世界・・・」
ヘスカ「聡史達が役目を終えたら・・・今度は聡史達の話を聞きたいものだな」
ヘスカがそう言うと、聡史は笑顔を見せた。
ヘスカ「さて、ここからだ。手続きを済ませて次の大陸に向かうぞ、聡史」
聡史「はいっ」
複雑な気持ちを持つことになったが、この世界の過去を知った聡史。
そんな中、リアル世界でも次の動きが行われようとしていたのだった。




