第28話:第三の帝・ミューズ急襲
快調に進んでいく船。
しかしながら、聡史は前の航海の事を思い出していた。
紗江「二人とそのウォルさんって人と一緒にそのイカタコ倒したんだ」
感心している紗江。
聡史「イカタコじゃなくてクラトパスだけど・・・でもウォルさんがいなかったら僕達はやられてたと思う」
そう語る聡史。
美那「そう言えばヘスカさんはどちらに?」
聡史「表にいるよ。前のクラトパスの件もあるからって・・・」
どうやらヘスカは外を警戒しているようである。
紗江「でもそう何度も大変な事態が起きるなんて事は・・・」
紗江が不意にそう言った時、聡史の持つ通信機に連絡が入った。
ヘスカ「モノルスの言う通りに登録していて正解だったな・・・とりあえず外に出るんだ」
ヘスカの言葉に驚く聡史。
紗江「どしたの?」
聡史「何かあったみたい、行ってみよう」
聡史は紗江・美那を引き連れて表へと出た。
美那「グルグルですね」
素直にそう言う美那。
ヘスカの話によると、少し前に船の進行方向に大きな渦が発生したとのことだった。
紗江「このまま行くと・・・」
ヘスカ「あの渦の大きさだと微妙だが・・・最悪転覆だな」
大変な事をあっさりと告げるヘスカ。
聡史「でも今からなら避けられますよね・・・それなら・・・」
ヘスカ「・・・嫌な空気を感じる。それも・・・今まで戦った魔物達よりも鋭い嫌な空気・・・」
と、その時突然渦の中心から水柱が吹き上がった。
美那「すごい現象だね」
その光景に目を輝かせている美那。
ヘスカ「違う!これは・・・」
『これまでの旅路ご苦労じゃったぞ、若人達よ』
そんな声が聞こえると共に、水柱の中から現れた人型の魔物。
聡史「敵!?」
ヘスカ「くっ・・・」
『そちらの女は中々鋭いの。妾の気配を感じておる』
ヘスカ「何者だ・・・いや、聞くまでもないのだろうな・・・お前は恐らく陸帝・ガイラスと同格の魔物・・・」
ミューズ「あのようなバカと同格などと言われたくはないが、例え人間相手だろうとも礼儀を持つのが妾の流儀じゃ。妾はミューズ。察しの通り海を統べる帝・・・海帝ミューズじゃ」
そう言い放つミューズ。
美那「海の魔物・・・」
ミューズ「バカ達のようなやり方はせぬ。だが手短に済ませたい・・・お前達の持つエンブレムを・・・渡してもらいたいの」
静かに冷静にそう告げたミューズなのであった。
紗江「エンブレムは大事なものなの。渡せるわけないじゃん」
少しプンスカしながら話す紗江。
ミューズ「渡せば人間には危害を加えぬと約束しよう・・・」
ヘスカ「魔物が約束を守る奴等だとは思わんが・・・どういうつもりだ?」
そう聞いたヘスカ。
ミューズ「妾達としても無駄には戦いたくはないのじゃ。お互い戦力を減らし合うのもバカじゃろう」
美那「荒井先輩・・・」
いつもならもっと強気にいく紗江だが、紗江にもミューズの鋭い力を感じ始めたのかおとなしくなっていた。
聡史「それは出来ません!」
そんな中で、キッパリとそう告げたのは聡史だった。
ミューズ「お主、エンブレム持ちなら妾の力に気付いておらぬわけはあるまい。それでも妾に刃を向けると・・・」
聡史「海帝だけじゃない。僕達はこの世界を支配しようとする敵を倒さなきゃいけないんだ。お姫様がそう望んで僕達を呼んだから」
ミューズ「妾の言葉・・・理解できぬか・・・」
ミューズが両手を振り上げると、ミューズの両隣から水柱が上がった。
ヘスカ「まるでというより、確実に私達の選択が多くの命を握っていると言わんばかりだな・・・ミューズ」
紗江「それって・・・この船の」
ミューズ「そういうことじゃ、今ならまだ許されるぞ・・・」
選択を迫るミューズ。
紗江「どうするのよ・・・」
ヘスカ「・・・聡史・・・お前の素直な気持ちをぶつけろ・・・恐らくそれが私達全員の本音だ」
聡史「ヘスカさん・・・」
しばらく考えていた聡史だったが、ヘスカの言葉に後押しされ一歩前に出た。
聡史「僕達は敵に屈しない。そして、命は守りきる」
そう言い放った聡史。
ミューズ「残念じゃ・・・ならば沈んでもらうしかないの・・・その後にエンブレムを回収すればよし・・・」
そして、ミューズが二つの水柱をこちらに向けて放とうとした時水中から大きく長い足が出現し水柱を粉砕した。
聡史・ミューズ「!?」
ヘスカ「あれは・・・」
ミューズ「汚れたものが・・・」
ミューズは水をカッターのようにしてその足を切断した。
と、水面に姿を見せたそれを見て聡史とヘスカは驚くことになるのであった。
聡史「クラトパス!?」
紗江「これがイカタコ」
ミューズ「まさかと思うたがお前とはな・・・」
そう告げるミューズに対し、クラトパスの瞳はミューズを睨み付けていた。
聡史「そう言えば・・・」
クラトパスとの戦いの中で、あの事を思い出す聡史。
ミューズ「暗き海で暮らすお前を表の世界に出してやった恩を忘れたか」
ヘスカ「ミューズ・・・クラトパスにあの装置を・・・」
ミューズ「妾は海の帝じゃ。水は妾が生命。そこに住まう者をどうしようと妾の自由じゃ」
そんなミューズの言葉を聞き、突然剣に炎を灯す聡史。
紗江「ちょっと聡史!」
聡史「クラトパスは大人しい魔物って聞いた。なのに、お前が・・・」
ヘスカ(前みたいに感情的になってはいるが熱さは感じない・・・少しはオリジナルエンブレムが馴染んできているのか・・・)
そう考えるヘスカ。
美那「ダメです、結城先輩!」
叫ぶ美那。
だがそんな聡史の特攻的な行動を止めたのは、クラトパスの足だった。
突如、聡史の前に伸ばし行く手を塞いだのだ。
聡史「クラトパス・・・」
ヘスカ「誰か船長に伝えるんだ。今のうちにこの場を離れるように!」
クラトパスの意図を瞬時に理解したらしいヘスカは、周りに向かって叫んだ。
美那「じゃあ、ボクが行きます。ここにいても何も出来ないから」
ダッシュで船長の元に向かう美那。
聡史「ヘスカさん・・・」
ヘスカ「クラトパスは私達を先に行かせてくれるつもりだ・・・その行為を無駄にはできない」
ミューズ「妾から離れよ!」
力はミューズが上なのだが、体格差が災いしてクラトパスを退けれずにいた。
しばらくして船がゆっくりと進路を変え動き出した。
聡史「クラトパス!」
聡史が名を呼ぶと、応えるかのように足の一本を使い振った。
ミューズ「異世界の若人・・・今回は見逃しておくぞ・・・次は必ず・・・」
クラトパスの相手をしながら離れていく船を見つめるミューズ。
紗江「いい魔物だよね、あいつ」
聡史「モノルス達と同じに・・・」
複雑な心境の聡史達。
美那「先輩!」
そんな中、戻ってきた美那からの報告に聡史達は驚くことになるのであった。




