第18話:ネメシスボランティア
二日後の朝、宿から話ながら出ていく紗江とヘスカ。
そして、それをちゃんと聞いていた聡史。
まだ眠り続けていると思われていた聡史は、昨日の朝に意識は取り戻していたのだった。
しかし、昨日の朝・・・紗江が独り言的な聡史に向けた報告で紗江が特訓を始めたことを知り眠った状態を今朝まで演出していた。
聡史(僕がやったみたいに一ヶ月は無理だけど、せめて数日ぐらいは・・・紗江のために)
そう思っていた聡史。
とはいえ目覚めた以上やはりお腹は空くわけだが、そこは我慢していた聡史。
そして、この日のお昼。
また、紗江が近況報告をしにきた。
紗江「聡史ってすごいよね、ヘスカさんと一ヶ月も特訓してたなんて・・・でもね・・・」
と、ポケットに入れていたパンを一個枕元に置いた。
紗江「私の事、気を使わなくていいから・・・だ・か・ら」
すると紗江は、辺りにあった雑誌を丸めて聡史の頭にスパーンっと一撃を与えた。
聡史「!?」
紗江「幼馴染みを甘く見ないでよね」
と、身体を起こした聡史。
聡史「・・・ゴメン」
紗江「謝るな。別に責めてないし、本当に身体辛いなら休んでほしいしね」
聡史「僕なら大丈夫だけど、紗江の特訓の期間を少しでも長く・・・」
と、その時
ヘスカ「だが、今度はお腹を空かせて倒れては元も子もないだろうが」
そう言いながら部屋に入ってきたヘスカ。
聡史「ヘスカさん・・・」
ヘスカ「しっかり食べておけ。その間に出発の準備をやっておく」
そんなこんなで、聡史の昼食後町を出た三人。
聡史「ところで特訓はどうなの?」
紗江「八割ぐらいかな・・・」
そう答える紗江。
ヘスカ「私とは戦い方が違い、聡史の時のように私があまり相手を出来なかったが後は実践だな」
そう説明するヘスカ。
そんな時、倒れている少女に魔物が数体集まっている場面に遭遇した。
紗江「これって・・・私の出番?」
ヘスカ「いや、ここは聡史に任せる。
町を出る前に話したが・・・」
聡史「大丈夫です・・・」
そう言うと二日前までヘスカが使っていた剣を構える聡史。
と、魔物が聡史に気付き攻撃態勢に入った。
しかし、数分後魔物達は全て地に倒れていた。
ヘスカ「剣の扱いに問題はないな・・・」
聡史「はい、後はエンブレムの方ですね」
二人がそんな話をしている間に、紗江は少女を治癒し話を聞いていたのだった。
紗江「えっと、エリスちゃんです」
助けた女の子の紹介をする紗江。
ヘスカ「外には魔物がいる。まわりに大人の姿もないようだが・・・」
エリス「私の住んでる町・・・とても生活大変で、ママが怪我しちゃったから・・・それで薬草とか探しに・・・」
状況を説明するエリス。
聡史「とりあえず外は危ないから町に向かいましょう、ヘスカさん」
ヘスカ「そうだな・・・」
と、言うことでやって来たのはエリスの住んでいる町。
だったのだが、到着して聡史達は唖然となっていた。
紗江「これって・・・」
所々に壊れた家があり、自然も少なく全体的に暗い町となっていた。
と、何処からか男が駆け出してきた。
男「娘から離れろ!裏切り者達がっ!」
と男は懐から銃を取り出し聡史達に放った。
ヘスカ「・・・」
しかし、その銃弾は突然現れた氷の壁によって防がれた。
エリス「凄い・・・です」
そう呟いたエリス。
男「この・・・」
と、氷の壁が消えると前に出ていったエリス。
エリス「待って、パパ」
そして・・・。
男「申し訳ありませんでした」
膝をつき謝る男。
聡史「あの別にもういいですから」
困った表情でそう言う聡史。
その後、エリスから父・ライド、母・メルシィを紹介された。
聡史「傷の治療なら・・・」
紗江「私にお任せっ」
水のエンブレムの力でメルシィの傷を治していく紗江。
と、それを見ていた町の人達が何人か集まり始めた。
紗江「もしかして治療希望者・・・なの?」
ヘスカ「聡史、紗江についていてやれ。私はエリス達から話を聞いてみる」
そんな訳で別行動を取るヘスカ。
それからしばらくして・・・。
貸してもらった空き家にエリスを含めた四人がいた。
紗江「何でエリスちゃんがここに」
エリス「パパもママもお仕事だから」
そう答えるエリス。
ヘスカ「エリスの両親と町の人から得た情報を伝える」
それからヘスカは語った。
この町の状況が、三年前の一件によるものだと言うこと・・・。
町の人口が減っていく中でも、厳しい環境を知りながら今日まで生きてきたこと・・・。
その話は聡史と紗江を無言のまま聞き入らせるのには十分だった。
聡史「ヘスカさん、少しお願いがあるんですけど・・・」
何かを決めた聡史は、ヘスカに提案を申し入れるのであった。
それから・・・。
聡史の提案により、この町の復興を手伝うことになった。
この現状のままで生活していた町人だったが、聡史達の動きを見て復興を一緒にやり始めた。
エリス親子もこれに参加していた。
聡史「すみません、先を急がないといけないのに」
ヘスカ「お前の優しさがいつか強さに変わる・・・その心を忘れるな」
作業をしながらそう話す聡史。
紗江「私の水の力で・・・」
町の人達が耕した畑に水をまく紗江。
聡史「色々便利だね、紗江のエンブレム」
そう言う聡史。
そんな風に活動していた聡史達。
だがそんな彼等を離れた場所から観察している人物がいた。
『落ちるところまで落ちたわね・・・別に興味はないけど・・・ちょっかいは出してみようかしら』
その後、そこからその人物はいなくなっていた。
その頃、聡史達は活動を一段落させ休憩していた。
エリス「はい、ジュース」
エリスが聡史達にジュースを差し入れした。
紗江「ありがとっ」
ライド「皆さんのおかげでこの町は元に戻るかもしれません」
そう告げたライド。
ヘスカ「そろそろ大丈夫そうだな、聡史」
聡史「はい、僕達も目的に向けて・・・」
聡史がそう言った時、町の人達が何やら騒ぎ出していた。
紗江「あれって・・・エリスちゃんを襲ってた奴の仲間?」
ヘスカ「町の人達を念のため、奥に避難を・・・そして・・・」
紗江「今度は私の出番だよね」
ヘスカを見ながらそう告げる紗江。
ヘスカ「特訓の成果を見せてみろ」
町に近付いてくる魔物達。
迎え撃つために周囲に拳より一回り大きな水玉を多数出現させた。
聡史「紗江って、もうエンブレムをコントロールしてる」
紗江「私や聡史とはまた違うタイプだ。容量の大きな力の使い方はまだ上手く出来ないみたいだが、細かな力の使い方は私達より上のようだ」
特訓を受け持ったヘスカは、紗江の力をそう分析していた。
紗江「じゃっ、いっくよーっ!」
そう告げると駆け出していった紗江。
そして、紗江を追いかけていく水玉達。
紗江「第一撃!打閃水弾」
紗江は拳で水玉を殴り飛ばした。
そして、その勢いと紗江のエンブレムコントロールにて更に力が加わりその速度で魔物に直撃し一撃で地に伏せさせたのであった。
紗江「大成功」
喜びの表情を見せる紗江。
と、これを見た魔物達は幾つかに分断して向かい始めた。
聡史「これって・・・」
ヘスカ「大技で全滅の危機を感じたか・・・さて、どうする紗江」
紗江「まだまだいけるよっ」
紗江は水玉を巧みに移動させながら、打閃水弾を放ち魔物を撃退していく。
するとまたしても中型の魔物が奥から姿を見せた。
ヘスカ「この群れのボスか・・・」
紗江「じゃっ、こっちも少し強いのいくよ!」
そう言いながら、先程より少し大きな水玉を作り上げる紗江。
しっかりと相手に狙いを定める紗江。
紗江「打閃蹴水弾!!」
紗江は水玉をまるでサッカーボールのように蹴り放った。
その後、打閃水弾を連続で放ち中型の魔物と周辺の魔物を撃沈させていった。
聡史「凄い・・・」
ヘスカ「紗江は実践に強いタイプだな・・・特訓した甲斐はあったようだな」
やって来ていた魔物を一掃させた紗江。
そして、聡史達の元に戻ってくるとピースサインを見せたのであった。
戦いの日の翌日の朝。
早起きの聡史は外で剣の素振りをしていた。
紗江「私のせいで張り切ってる?」
と、いきなり現れた紗江。
聡史「そうじゃないって言ったら嘘になるし、紗江に嘘ついてもすぐにバレちゃうしね」
紗江「でもこれで同じだよ。ヘスカさんの特訓受けて・・・何だか不思議だけどね」
最後にそう呟いた紗江。
聡史「この世界での出来事?」
紗江「それもあるけど・・・エンブレムとか・・・自分がゲームの魔法みたいな力使ってるのが・・・」
聡史「僕も同じだけど・・・やらなくちゃいけない・・・助けなくちゃいけないから」
紗江「私は説明してもらった姫巫女って人は見たことないけど・・・」
聡史「この世界にとって必要な人だから」
そう言い力強く剣を振るう聡史。
紗江「じゃあ私も聡史と同じ目標に向けて頑張る・・・いいよね、聡史」
聡史「うん」
そう言い微笑む聡史。
エリス「もう行っちゃうの?」
ヘスカ「すまないな。この世界のため・・・みんなの為にな」
ライド「どうか旅が無事終わりますように・・・」
ヘスカ「旅の終わり・・・その時が来たらきっと」
聡史と紗江を見ながらそう呟いたヘスカ。
そして朝食後、この町を旅立った聡史達。
彼等の旅はまだ終わることなく続いていくのである。




