第17話:覚悟の豪炎
アスト「なにっ」
聡史「紅炎剣」
だがとっさに剣の軌道を変え、聡史の剣を受け止めたアスト。
聡史「止められた・・・」
アスト「見事な一撃だった・・・届きはしなかったが」
狙いを聡史に変更するアスト。
しかし、その一瞬の好機をヘスカは見逃さなかった。
ヘスカ「まだ・・・私は戦えるぞ」
と、右手を向けまるで吹雪のような冷気をアストに放ち吹き飛ばしたヘスカ。
アスト「貴方はそういう使い方の方が得意なようですね」
そう告げるアスト。
紗江「私もやるからね」
と、何故か剣を持って現れた紗江。
ヘスカ「さっきアストに弾き飛ばされた・・・」
アスト「次はそのお二人ですか」
ヘスカ「紗江、剣を・・・まだ私は・・・」
そう言うヘスカであったが
紗江「怪我は後で治すから・・・ここは私と聡史でやるの」
強く言い放つ紗江。
聡史「それはいいけど・・・紗江ってまともに戦うのは初めてなんじゃ」
何やら心配そうに告げる聡史。
紗江「さっきの戦いで何となくね・・・それに格闘ゲームなら私強いし」
自慢げに話す紗江。
アスト「予定にはなかったが・・・では、軽く相手をさせてもらおう」
剣を構え聡史達を見つめるアスト。
紗江「私が先攻!」
と、水のエンブレムの力を剣に宿していく紗江。
聡史「紗江・・・出来てる」
意外そうに驚いている聡史。
紗江「そしてこれを放つ!」
そう言い剣を振るった紗江。
しかし、その剣撃はアストから外れて斜め上方向に飛んでいってしまった。
紗江「あれ?」
アスト「いくらオリジナルエンブレムを持っていても使えていなければ意味がない」
聡史「下がって、紗江」
と、前へ出ていった聡史。
アスト「さっきの一撃は不意打ちでありながら通じなかったが・・・」
聡史「・・・」
アストに言われるまでもなく、聡史自身理解していた。
聡史「それでも僕は男の子だから」
剣を構える姿勢を崩さない聡史。
アスト「だが気持ちだけではその刃は俺には届かない」
会話の間にも、必死に策を巡らせていた聡史。
聡史(もっと大きな炎の力・・・)
そんな時ふと聡史は、剣に埋め込まれているレプリカエンブレムを見た。
聡史「・・・この手しかない」
そう呟いた聡史は、炎のオリジナルエンブレムを発動させ剣に纏わせるのであった。
アスト(何か考え付いたか・・・予定外の戦いだからな・・・ここは力を押さえて様子見するか・・・)
そう考えていたアスト。
聡史「オリジナル+レプリカ・・・」
ヘスカ「まさか・・・無茶な事はやめろ聡史」
紗江「えっ、何々?」
と、剣に纏っていた炎が更に燃え上がると聡史の身体の周囲を漂い始めた。
聡史「あ、熱い・・・」
突然片膝をつく聡史。
紗江「聡史!どうし・・・」
聡史に近付こうとした紗江だったが、それは途中で止まっていた。
紗江「今まで聡史の炎は熱くなかったのに・・・」
ヘスカ「オリジナルエンブレムでさえ完全には扱えていなかったんだ・・・そこに無理矢理レプリカエンブレムの力を加えたせいで制御の範囲内を越えたんだ」
そう説明したヘスカ。
アスト「さて・・・彼がこの様子では戦うのは君か」
アストはそう言うと紗江の方を見た。
紗江「そーいうことなら・・・」
やる気を見せる紗江。
聡史「待って・・・僕なら・・・やれる・・・」
そう告げると立ち上がった聡史。
だが今現在も炎は聡史の意思を無視し、辺りを漂っていた。
ヘスカ「危険だ。この状態では何もしなくてもエネルギーを消耗しているんだぞ」
聡史「一撃だけでいい・・・相手を追い払うだけの力・・・」
鋭い眼差しでアストを見ている聡史。
アスト「いいだろう・・・お前の魂のこもった一撃、この剣で受けてやる」
アストのその言葉を待っていたかのように駆け出していった聡史。
紗江「聡史・・・」
心配そうに見守る紗江。
しかし、この場にいる聡史を含めた全員これから起きる出来事に驚くこととなる。
アストが受け止めるように構えた剣に向かい、まっすぐ自身の剣を振るった聡史。
そして両者の剣がぶつかり合う瞬間、聡史の炎が変化していった。
聡史の強い思いにエンブレムが応えたのか、はたまた偶然か・・・。
剣は回りの炎を集約させ、剣を覆うように赤い刃を形成させた。
アスト「!?」
最初にそれに反応したのはアストであったが、全力の聡史の攻撃は速く対処できずにそのまま剣で受け止めた。
刃と化した炎。
それはアストの剣に食い込み、確実に斬っていた。
そして本来なら届くはずのない聡史の剣。
だが、炎の刃が付加され通常より剣の先は長くなっていた。
次の瞬間、アストの剣は切り裂かれ付加された炎の刃がアストの腕に到達したのだった。
アスト「ぐぅっ・・・」
まさかの一撃を受け、聡史から離れたアスト。
紗江「聡史、やったの?」
アスト「信じられないな・・・あの一瞬・・・自身の力を引き出したのか」
アストは聡史の一撃を受けた右腕を押さえながらそう告げた。
紗江「よしっ、とどめは私が」
俄然張り切っている紗江。
アスト「ここまでにしようか・・・お前らの力、見事だった」
紗江「なんでよっ」
ヘスカ「あいつの言う通りにしておけ、紗江」
紗江「むーっ・・・」
アスト「確かヘスカに聡史に紗江だったか・・・覚えておく。敵でありライバルとしてな」
そう告げると静かにこの場から立ち去っていったアスト。
紗江「倒すチャンスだったのに」
ヘスカ「あいつはまだ本気じゃなかったし・・・それに今は早く・・・」
と、その時地面に剣が落ちる音と共に聡史がその場に倒れたのであった。
その日の夜、近場のとある小さな町。
紗江「聡史・・・」
あの状況から紗江が慌てて治癒するも聡史は目覚めなかった。
そしてヘスカによりこの町の宿に運んだのであるが・・・。
ヘスカ「まだか・・・しかし聡史があんな戦いをするとはな・・・今後のためにも」
ヘスカは部屋の隅に立て掛けてあった聡史の剣を手に取った。
紗江「ヘスカさん?」
ヘスカ「同じ無茶はさせられない。しばらく聡史には私の剣を使ってもらう。一回り大きいサイズだが聡史なら使えるだろう・・・そして」
そう言って紗江を見たヘスカ。
紗江「私?」
ヘスカ「恐らくだが紗江に剣は合っていない。聡史が目覚めるまでの短い間になるが、私の特訓についてくるか?」
紗江「やる!聡史やヘスカさんにばっかり負担かけさせたくないし」
そんな訳でヘスカとの特訓で、自身の強化と戦い方を学ぶことにした紗江。
そんな中、アジトヘと戻ったアストは今日の戦いを思い返していた。
魔物「アスト様が手傷を負われるとは・・・」
そう言いながら手当てをする魔物。
アスト「この傷はライバルの・・・倒すべき者がいると言う証だ・・・」
手当てもほどほどに立ち上がるアスト。
魔物「アスト様、まだ手当てが・・・」
アスト「もういい、俺はガイラス様の所に報告にいってくる」
そう言い部屋を出ていったアスト。
聡史が目覚めぬ間にも、動いていく時間。
そして、時は二日後を迎えるのであった。




