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転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした  作者: リリーブルー


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推しの笑顔を引き出す方法

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https://www.alphapolis.co.jp/novel/780153521/689943168

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

 シリル(転生主人公)が転生してしばらく経ったころ。レオナルトの側近としての業務にも慣れ、彼の傍にいることが当たり前になりつつあった。

 しかし、ずっと気になっていることがある。それは、レオナルト公爵が一度も「まともな笑顔」を見せたことがない ということだ。戦場で敵を追い詰めるとき、嘲笑のような冷たい笑みを浮かべることはある。部下に命令を下すときも、皮肉げに口元を歪めることはある。だが、心の底から楽しそうに笑っている姿を、シリルは一度も見たことがなかった。

(……原作でも、そんな描写はなかったな。)

 原作小説の中で、レオナルトは常に「冷酷な将軍」として描かれていた。感情を押し殺し、ただ合理的に戦いを進める男。

(でも、それって本当の「レオナルト公爵自身の姿」だったのか?)

 彼が笑ったことがないのではなく、「笑う自由」を知らなかっただけなのでは?そもそも、彼は「楽しい」とか「嬉しい」という感情を抱いてもいい、表現してもいい、ということを自分に許せる機会があったのだろうか?

 シリルは、ふと考える。

「閣下って、いつもそんな仏頂面ですよね」

 レオナルトの書斎で、資料を整理しながらシリルはぼやいた。レオナルトはちらりとこちらを見る。

「……仏頂面?」

「たまには笑ったらどうです?」

「俺が笑って何になる」

 レオナルトは眉をひそめ、書類に視線を戻した。

「別に、笑わなければいけない理由などないだろう」

「それはそうですけど……でも、ほら、楽しいこととか、嬉しいこととか、そういうときって自然に笑うものじゃないですか」

「楽しいこと、嬉しいこと……?」

 レオナルトは怪訝そうな顔をした。シリルは思わず言葉を失った。

(えっ……この人、本気でわかってないのか……?)

 いや、きっとわかるはずだ。子どものころは、無邪気に笑ったこともあっただろう。だが、戦場に立ち、剣を振るい、冷酷な将軍として生きるうちに、「笑う」という感情そのものをどこかに置き忘れてしまったのではないか。

 ふと、シリルは「過去の自分」を思い出す。転生前の自分も、ずっと働き詰めだった。会社では評価されるために必死で、周囲の期待に応えようとし続けていた。気がつけば、心から笑うことなんてほとんどなかった。「楽しい」や「嬉しい」なんて気持ちを感じる余裕すらなくなっていた。そんな自分が、もし死なずにそのまま生き続けていたら? きっと、レオナルトと同じように、笑うことを忘れていたのではないか。

(……やっぱり、俺とこの人は似ているところがあるように思えてしまうんだよな)

 シリルは心の中で小さくため息をついた。見た目は、こんなに美男子だけど、冷酷だと原作では言われていたけれど、それでも、原作を読みながら、自分と重ねてしまっていた。レオナルトに感情移入してしまっていた。

「……じゃあ、笑わせてみてください」

 突然、レオナルトが言った。シリルは思わず目を瞬かせる。

「えっ?」

「お前がそこまで言うのなら、俺を笑わせてみろ」

 レオナルトは、興味深そうにこちらを見つめている。

(え、えええ!? 無理だろ!?)

「そ、そんなの、簡単にできるわけないじゃないですか!」

「自分で言い出したのだろう」

「いや、でも俺、お笑い芸人じゃないんですよ!? 人を笑わせるのって、すごく難しいことなんですよ!?」

「ならば、なぜ『笑ったらどうです?』などと軽々しく言った?」

(ぐっ……!)

 思わず言葉に詰まる。確かに、自分で言い出したことだ。でも、まさか本気で「笑わせろ」と言われるとは思っていなかった。

(くそっ、どうする……!? どうやったら、この人を笑わせられる!?)

 ここで「無理です」と言うのは悔しい。だって、シリルは「レオナルトの新しい表情が見たい」と思ってしまったのだから。

 何気ないことでいい。例えば、冗談にクスリと笑うとか、ほんの少し表情を緩めるとか。そういう「人間らしい笑顔」を、この男が見せる瞬間を見たい。

 シリルはしばらく考え込んだあと、ぽつりと言った。

「……じゃあ、こうしましょう」

「何だ?」

「俺が、閣下を笑わせることができたら……そのときは、俺のお願いを一つ聞いてもらいます」

「……ほう?」

 レオナルトは興味深そうに眉を上げた。

「だが、逆に笑わせることができなかったら、お前はどうする?」

「俺の負けってことで、閣下の命令を一つ聞きますよ」

「ほう……」

 レオナルトは少し考え込んだあと、静かに口を開いた。

「いいだろう。受けてやる」

 そうして、「レオナルト公爵を笑わせるための戦い」 が始まった。

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転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

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