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転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした  作者: リリーブルー


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裏切りの香り、推しのために立ち上がる

2025年 11/1~11/30 投票期間 BL大賞 参加中↓

https://www.alphapolis.co.jp/novel/780153521/689943168

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

「――なぜ、俺の“側近”が、夜中に襲われるような事態になった」


 静かな怒りだった。


 執務室。重厚な机を挟んで、レオナルト公爵の声が低く響く。

 まるで冷たい刃を押し当てられているような、緊迫した空気。


「警備の手薄な時間に書庫に行くなど、なぜ止めなかった」


「いえ、我々も事前には把握できておらず……」


 レオナルトの視線が、報告役の将校たちを切り裂くように突き刺す。

 彼らが思わず目をそらしたそのとき、シリルが小さく咳払いした。


「――レオナルト。もうそのへんにしてくれ。大事にはならなかったんだ」


 と、俺は、取りなそうとする。


「大事に“なる前”に止めるのが、お前の言葉で言う“健康的”な判断力だろう」


 と、危機管理に厳しいレオナルトは反論する。


「……皮肉のレベルが高いよ、お前……」

 

 俺は苦笑する。


「当然だ。お前は俺の“命よりも大事な駒”だからな」


 えっ、俺、駒!? 駒なの!? ん? でも、俺の命よりも大事って言った? えっ? え?


「ちょ、今の、今のもうちょっと説明して!?」


「意味がわからないなら黙ってろ」


「うわあああ! デレがわかりにくい!」


 ……その場の空気が、一瞬だけやわらぐ。


 だが――レオナルトは、すぐに真面目な顔に戻って言う。


「……お前、何者かに“助けられた”と言っていたな」


「ああ。何者というか、正確に言うと……黒猫、だった。例の」


「……猫?」


「うん。俺の足元にいた、あの猫。魔法を使って、襲撃者を封じてくれた」


「猫が……魔法を?」


「信じられないよな。俺も、意味わからなかった。でも――あれは、間違いなく魔法だった。魔法陣、結界のパターンも……“原作”に出てくる王太子の専用術式だった」


「……げんさく? 王太子?」


「あっ……いや、なんでもない。いやいやいや、なにか言った!? 俺、なんか言った!?」


「……フン」


 レオナルトは深く椅子に腰を沈めた。


「猫が魔法を使う……妙だな。魔法の国の使い魔か? それとも、変化した者か」


「変化……?」


「つまり、“人間が猫に化けている”という可能性もある」


 レオナルトは眉間に皺をよせて考えこんでいる。


(まさか……)


 まさか、あれが本当に――“ラセル王太子”本人だという可能性まで考え始めているのか?


 そのとき――執務室の扉が、ノックされた。


「失礼いたします。客人がお見えです」


「……客?」


「魔法の国より、使節団の一員として到着されたとのことです。若き貴族のご子息。“レセル・ノウル”と名乗っております」


 シリルとレオナルトは、同時に眉をひそめた。


 レセル――ラセル? 敵国、魔法の国の王太子の名前は、ラセルだった。

 その名前、偶然にしては、できすぎている。レオナルトは何と思ったか知らないが、シリルはピンときた。なぜなら、原作小説では、ラセルは、レオナルトの敵……いや、主人公の宿敵がレオナルトなんだけどね……。だから、ラセルという名には、敏感だ。


「……通せ」



   ◆



 数分後。


 扉が開かれたその瞬間、シリルの心臓は、跳ね上がった。


 金の瞳。銀の髪。貴族然とした整った顔立ち――それでいて、どこか人間離れした気配。

 そして――猫と同じ、目。


(あの猫だ……!)


「はじめまして。魔法の国より参りました、レセル・ノウルと申します」


 優雅な所作で礼を取るその姿は、どこをどう見ても“只者ではない”。気品がありすぎる。そして、その柔らかな物腰は、猫のようにしなやかで……。


 シリルには確信した。

 声は違えど(さすがに、猫の声ではない)、気配が同じだった。


 ――これは、絶対に。

 黒猫で、かつ、敵国、魔法の国の王太子、原作の主人公である、ラセルだ。レオナルトの宿敵。いや、レオナルトが原作主人公の宿敵なんだけど。あやしい。危険だ。危険すぎる。何をたくらんでいるかわからない。しかも、絶大な魔力の使い手だ。


 レオナルトはじっとその男を見つめたまま、立ち上がった。


「……何の用だ?」


「剣の国に対し、非公式ながら友好の証を――と、王より命を受けております。今回は、視察と顔見せのために。お目汚し、失礼いたします」


「……非公式、ね」


 レオナルトの視線が鋭くなる。


「お前の魔力が、今朝この城に残された痕跡と一致するのは、偶然か?」


「……ほう」


 レセル――ラセルは、唇の端をわずかに上げた。


「流石ですね、公爵閣下。そういうところが――“私の憧れ”でもある」


「……」


「そう、貴方には“昔から興味がありました”。戦鬼と呼ばれるその剣、その瞳、その沈黙……どれもが、“理想”でしたから」


 その言葉に、シリルは息を呑んだ。


(……ああ、そういうことか)


 レオナルトに憧れて、この国に来て、猫の姿で近づいて――でもそれを、レオナルトはまだ気づいていない。


 そして俺だけが、知ってしまっている。


 ――この“第三者”の視線が、レオナルトを見つめるその熱を。


 “あて馬”という言葉が、現実味を帯びて胸に突き刺さった。


 物語が改変された今の世界では、この二人が正式に結ばれて、俺の方があて馬なのかもしれない……。なぜなら、絶大な魔力を誇る、ラセルが噛んでいるとしたら……自分の思い通りになるように、魔力を駆使するのではないか?

 俺の胸に、不安が広がった。


2025年 11/1~11/30 投票期間 BL大賞 参加中↓

https://www.alphapolis.co.jp/novel/780153521/689943168

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