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転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした  作者: リリーブルー


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14/27

推しの寝室に踏み込みました

2025年 11/1~11/30 投票期間 BL大賞 参加中↓

https://www.alphapolis.co.jp/novel/780153521/689943168

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

 それは、意外にも――すぐ、だった。

「……なあ、シリル」

 その晩、執務を終えたレオナルトは、俺をじっと見つめたまま言った。

「少し、来い」

「……は? どこに」

「俺の部屋だ」

「……はぁ!?」

 大声を出しそうになった俺を、レオナルトは眉ひとつ動かさずに見下ろした。

「なぜ、そこまで驚く」

「いやいやいや、だってお前、いきなり『部屋に来い』って……それってもう、え? 何かイベント発生するやつだろ!?」

 推しの寝室に踏み込めるだなんて! いや、推し自らに、寝室に誘われるだなんて! しかし、レオナルトは、

「意味がわからん」

 と、全く表情を変えない。「寝室に誘う」という重大イベントが発生しているというのに、何か、もう、ちょっと、こういう、顔を赤らめるとか、誘惑的なまなざし、目が潤んでいるとか、何か、そういうの、期待しすぎ?

「いや、わかってるだろ!? 絶対わかって言ってるだろ!? お前、天然系クーデレ攻めか!?」

「クーデター?」

「違う。クーデレ。普段はクールだけど、慣れるとデレデレ……」

「……黙れ。来い」

 有無を言わせぬ口調で言われ、俺は観念してレオナルトの部屋へ向かうことになった。いや、それはそれで、強引な攻め様、いい……に、なるのか?


   ◆


 豪華すぎるベッド、整然とした調度品、そしてどこか冷たい空気。まさに“氷の公爵”の寝室だった。

「……で、何の用だよ?」

 緊張を誤魔化すように言う俺に、レオナルトは静かに振り返る。そして、ベッドの脇にある椅子を指差した。

「座れ」

「……お前、やっぱり俺を口説くつもりじゃないよな?」

「……それは、今のお前の態度次第だな」

 クールな美形が、誘惑的にそんなセリフを吐くなんて……反則。俺の理性が、グラグラ揺れ出す。だめだ。冷静になれ、俺!

「やめろ、そういうの一番弱いからやめて」

 レオナルトはほんの僅かに眉をひそめて言った。

「今日は……話がある」

「……話?」

 勝手な期待に走っていた自分を殴りたい。そうか、話、ですか……。真面目ですね、公爵。

「俺が、お前に……“自分のこと”を話そう」

「……え?」

 原作小説でも、あまり語られていないレオナルトのこと。それをレオナルト自身が語り出すとは! レア! 尊死! 拝!


   ◆


 それは、レオナルト・ヴァイスという男の、決して語られなかった過去だった。母は政略結婚の駒。父は国を守る剣として彼を育て、“心を殺す方法”を幼い彼に教えた。家族に甘えることも、恋を知ることもなかった。心を隠して強く生きる――それが、彼の全てだった。

「……だが、最近になって……気づいた」

「何を?」

「お前のような、妙に図々しくて……騒がしくて……言葉に力のある奴が間近にいると、心が……動く」

「……」

 それは、明確な“告白”ではなかった。けれど、その言葉に込められたであろう、ほのかな感情が伝わった。

「……お前といると、俺は……」

「……なあ」

 俺は、そっと言葉を挟んだ。

「……俺も、お前といると、生きてるって感じがする」

「……」

「前の世界では、ただ働いて、死んだだけだった。評価されるためだけに生きて、気づいたら死んでた。何の感情も、思い出も残せなかった。でも……今は違う」

「……そうか」

 レオナルトの声は、低く優しく、どこか震えていた。

「だからさ」

 俺は、ゆっくりと手を伸ばした。

「お前が……誰にも言えなかったこと。俺だけには、話してもいいだろ?」

「……それは」

 彼の唇が、何かを言いかけて、止まる。俺の手が、そっと彼の手に重なる。氷のように冷たかったその肌は、ほんの少しだけ……温かくなっていた。


2025年 11/1~11/30 投票期間 BL大賞 参加中↓

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転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

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