推しの悪役の、側近に転生しました
アルファポリスのBL大賞にエントリー予定
——ブラック企業勤めの俺は、今日も終電を逃した。
納期に追われるプロジェクト、上司からの理不尽な叱責、気づけば一日中パソコンに張り付いていた。いつの間にか休憩すら取らなくなり、カフェインと根性だけで生きているような日々。
そして、意識が途切れたのは、駅のホームだった。
「あれ……?」
視界がぐらりと揺れる。重力が消えたように、足元がふわりと浮いた。次の瞬間、頭が真っ白になり——俺は、真っ暗な空間に沈んでいった。
——目を覚ますと、知らない天井が見えた。
「……どこだ、ここ?」
白い天蓋付きのベッド。豪華な調度品に囲まれた室内。まるで貴族の屋敷の一室のような……いや、待て。
「俺、生きてる……のか?」
いや、生きてるどころの話じゃない。体が、明らかに違う。
手を見下ろすと、すらりとした指が視界に入る。体も軽く、やけに調子がいい。鏡を探して立ち上がり、部屋の隅にあった姿見を覗き込む。
黒髪、金の瞳。端正な顔立ち。見覚えがある。
「……えっ、嘘だろ」
思わず声が漏れた。なぜなら、この顔には見覚えがあった。
小説の中で、悪役の忠実な側近として登場する男——シリル・フォード。小説内では言葉で描写されているわけだが、それが小説の挿絵で、リアルに美麗に再現されていた。だから見たことがあると感じることができた。
そう、よりによって、俺が転生したのは、物語のラスボス「レオナルト公爵」に仕える男だったのだ。
そして思い出す。この物語の結末を——レオナルト公爵は最終的に処刑され、シリルも巻き添えで死ぬ運命だということを。
「……俺、このままだと死ぬやつじゃん?」
絶望がじわじわと込み上げる。だが、その中で決意が生まれた。
この運命を変えなければ。俺も、公爵も、生き延びるために——!
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