タイムアウト六話
「おはよう武藤」
「おはよう内森」
「お願いがあるんだけどさ武藤」
「どうした?」
「昨日の宿題があるじゃん」
「うん」
「やってなくてさ」
「それで写させて欲しいと」
「うん」
「嫌だよ」
「なーんーでー」
「こういうのは自分でやるから意味があるんだよ」
「正論は嫌いだ」
といつも通りの日常を過ごしていた。
何故だか懐かしい感じがした、おかしいないつもとかわらないのに。
そうして朝の時間が終わり、ホームルームが始まった。朝の先生の話で
「2年3組の影山くんが昨日亡くなった」
『物騒だね』『ほんと?』『怖いね』
などなど各々が色んな反応をしていた。
私は何故だか知りもしない影森という人の死が異様に引っかかり、気持ちが落ち着かなかった。
そんなことがあったがいつもの学校生活を過ごし、家に帰ると私宛に荷物が届いていた。身に覚えがなさすぎて少し怖かった。
荷物を開けてみると、その中には宛名のない手紙と懐中時計が入っていた。
手紙には一言、『悪かった』とだけ書いてあった。
私は震えが止まらなかった。自分でも理由はわからない。
「なんでだ、何かが喉の奥に引っかかっているかのように違和感がある」
とりあえず、手紙は置いておき、懐中時計時計をみた。
「これなんだろう、ここが開きそうだな」
そう思い、数分苦戦していると懐中時計が開いた。
「あれ、なんでだろ?」
私は涙を流していた。
あるのは私と知らない誰かとのツーショットなのに。
「なんだろ、この気持ち?何か忘れちゃいけないことを忘れてしまった気がする」
そう考えるとなにか雲のようにふわふわとした記憶が形になった。
「全部思い出した。なんでそんなことすんだよ影森ー」
涙が溢れ出してきた。
「なんで取り返しがつかないときになって言うのよ」
そう呟いた。
「これが夢であって欲しいよ」
叶わぬ願いがいくつも口からこぼれた。
「わたしも影森みたいに時間を巻き戻せたらいいのに」
そういい一言
[タイムアウト]
と呟いた。
すると奇跡が起きた。
自分の体が光に包まれ、前まで少し嫌だった浮遊感も今となっては、安心感があった。
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今は事件が起きる十分前になっていた。
「急がないと」
現場に着くとちょうど影森が武藤に飛びかかる前だった。
「危ない!」
そう言って飛びかかる影森にさらに私は飛びかかった。
私は運良く、タイミングがずれナイフへ当たらなかった。
「内山、なんでここに」
私は小声で
「影森、後であのツリーハウス集合ね」
僕は鳥肌が立った。
「大丈夫?武藤」
「なんとか」
「よかった」
「そこのあなたは誰ですか?」
「僕は君を助けようとした、ただの一般人だよ。名乗るほどでもない」
「そうですか?」
「そうそう」
「じゃ、さよならー」
「後で覚えておいてよ」
「ひぃ」
「内山の知り合い?」
「まぁそんなところ」
「感謝も出来なかったから、会ったらありがとうと伝えといてくれるかい?」
「当たり前よ」
「じゃあね武藤」
「じゃあな内山」
「さぁーて、行こうかしら」
そうして、ツリーハウスに向かうと影森が座っていた
「内山ー許してくれー」
僕は開口一番に言ったが内山の答えは予想外だった。
内山は涙ぐみながら僕に抱きつきいた。
「影森のばかー、なんで最後の最後まではなさなかったのよ」
「ごめんて、おまえに心配かけたくなかったんだよ」
「あんたはいつもそうやって抱え込んで」
「ちょっと待って、内山今までのこと覚えてるの?」
「うん」
「ちなみどっからどこまで」
「私の人生の最初から今まで」
「全部じゃん」
「そうだよ」
「一つ聞きたいんだけどさ」
「なに?」
「何が起こったの?」
私は今さっき起こったことを話した
「本当に奇跡が起こったんだな」
「私の思いが時間の修正を破って、史実から外れたじゃん」
「うん」
「私、これが本当のタイムアウトだと思うの」
「その考え素敵すぎるじゃん」
「でしょ」
その後も影森と他愛のないことをたくさん話した。
私は本当の日常を取り戻せた気がした。