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第21話―交錯する思惑

「先に言っておく。お前さんらでは、アイツは倒せねえ」

「は?」「ほう?」


 血気盛んな二人が犬のように噛み付く。


「言ってくれるじゃないか。私達が勝てないと?」

「ちょっと、姉さん………」

「舐められたものだな。今から試してみるか?」

「おーい、ラグナさーん……?」


 アリオスとカレン様がやれやれと顔を振る。シュタリウス王の表情にも呆れが見て取れる。


「違ぇよ。戦闘面での話じゃねえ。スキルの相性的な話なんだ」

「と、言うと?」


 アリオスが腕を組みながら尋ねる。


「俺のスキルは、というかこの権能――〚勇星神剣エクスキャリヴァルド〛なんだが、『俺を敵と認識する者に対しての特攻性』っていう特性があるんだよ。俺達が既にアイツらを敵と認識してる以上、俺と同じスキルを使うアイツに勝つのは不可能と言ってもいい」


 シュタリウス王が“深奥の霊眼”を発動しながら、僕達を見回す。


「そんなに差が……」

「ああ。勘違いしてほしくないのは、決してお前さんらが弱いって言ってるんじゃないし、お前さんらを見下してるわけでもない。ここにいる全員、戦闘センスに関しては達人の域を越えてるしな。可能性もゼロとは言わん。だが、勝率なんて砂漠から真珠を見つけ出すようなモンさ。“深奥の霊眼(コレ)”がそう言ってんだ、全てを信じるわけじゃないが、勝率なんて期待するモンじゃあない」


“霊眼”を両眼に発動させ、自らに言い聞かせるように言う。


「………アイツ()れんのは、俺しかいねえんだ」

「…………」


 そう言うシュタリウス王の眼は、覚悟を滲ませながらも、どこか哀しげだった。

 ――――――――――――――――――――――


 同時刻。某所。


「ったく……俺ぁまだ出ねえはずだったんだが。な~にやらかしてくれてんだテメェは」

「アッハァ………。すいません、ちっと調子に乗っちゃったッス」

「お前が調子乗ってんのはいつものことだろ」


 毒づきながら、複製体コピーのシュタリウスは系統外属性魔法【光】高等魔法、〚再生治癒リムーブ・レストレイション〛にてイールの両腕を再生させていく。


「イヤァ、まさかまさかでまさかまさかの神剣は予想外でしたッスよぉ。アレは流石に食らっちゃったッスねぇ……」


 しみじみといった様子で言うイールに、シュタリウスは間髪入れずにツッコむ。


「考え無しに飛び込むからだバカタレ。たしかにテメェの身体は頑丈だが神剣の極致に耐えられるわけがねえだろうが。……ほら、治ったぞ」

「あざまッス。この身体じゃ一般的な魔法は一切使えないッスからねぇ。逆によく“禁術インデックス”に順応できたッスよ、ホントに」


 イールが再生した両腕を見ながら言う。


「〝半人半魔テメェ〟は特異体質すぎんだよ。俺も人魔共存してた頃を知らねえから何がダメで何が大丈夫なのか解んねえ。そもそもテメェ自身が解んねえんだ、俺に解る道理はねえわな」

「アッハ、それもそッスね。んまあでも、さすが“禁術”ってなだけあるッス。軽く使うだけで臓器潰すんッスから。文字通り禁忌、ッスねぇ」


 右腕に漆黒を纏いながら言うイール。だがシュタリウスはそんなイールを、少し睨むように見る。


「たしかにそれは強力だ。だが、それじゃあ本物《俺》は倒せねえし、そもそも手ぇ出すんじゃねえぞ」


 シュタリウスのその言葉に、イールが面白いとばかりに笑みを浮かべる。


「へえ?【壊魔法コレ】でも無理なんッスか?」

「無理だな」


 即答するシュタリウス。


「俺のスキルには〚勇星神剣エクスキャリヴァルド〛ってのがあってな。この剣の特性に、『自らを敵と認識してる者に対する絶対的特攻性』ってのがあんだ。“禁術インデックス”なんかでどうにかできるもんじゃねえ」

「な、る、ほ、どぉ。まあ大丈夫ッスよ、安心してくださいッス。これでも人の獲物は横取りはしないんで」

「………どーだかな」


 飄々と言うイールに疑いの眼差しを向けるシュタリウス。やがて視線を前に戻し、呟く。


原製体オリジナルアイツ()と、複製体コピージブン()。本物となり得るのは、一体どっちの『俺』だろうな?」


 腹の底から出る笑いを堪えながら、続ける。


「俺をれんのは、俺しかいねえ。そうだろ、シュタリウス?」


 その顔には、空恐ろしいほどの笑みを浮かべていた。

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