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第13話―翔ける蒼天、絶つは黎明

「お前ら既に楽しんでるな?まあいいや。じゃあ――始めッ!!」


 声と同時に、ラグナ殿が地を蹴り、瞬時にクライアの下へ到達すると、真っ向から斬り下ろす。対するクライアは彼女の斬り下ろしに合わせ、下から弾き、そのまま元の軌道を辿るように袈裟懸けに斬る。ラグナ殿は手に持つ刀をくるりと逆手に持ち替えて受けると、そのまま一度距離を取り、再度順手に持ち替えて突進する。その瞬間、僕は彼女の魔力が消えていることに気づく。


「さあ、貴殿はどこまで行ける!?絶龍刀、極致其の壱、“雷龍閃斬らいりゅうせんざん”ッッ!!」

「なっ……!?くおッ……!」


 ラグナ殿の神速の中段斬りを何とか受けきるクライア。だが衝撃を殺しきれず、少し下がりながらたたらを踏む。そのまま逆中段斬りを追撃しようとする。その瞬間――


「――『勇光ノ王(バルドル)』、〚光焔万丈こうえんばんじょう〛ッ!!」

「ッ!?」


 クライアのもとからとてつもない光が放たれ、正面で喰らったラグナ殿はもちろん、僕達も光に目を覆う。同時に、彼の――クライアの魔力が消えた、気がした。


「青龍刀、相伝そうでん・壱ノやいば、“激流穿げきりゅうせん”ッ!!」

「〚雷醒らいせい〛ッ!」


 彼は激流渦巻く刃を突き出す。さすがに視覚情報を潰された状態ではリスクがあると思ったのか、彼女の権能で無効化し、瞬時に距離を取る。彼自身も体勢が悪いと解っているからか、追撃をしようとはしなかった。


「……まさか、貴殿が“相伝”を扱えるとは思っていませんでしたよ」


 クライアが放った言葉に、ラグナ殿は首を傾げる。


「“相伝”……?ああ、“極致”のことか?」

「ふむ……。“魔界そちら”では“極致”というのですね。まさか剣の高みに至っているのは予想外でした」

「そうか?そこのヴァイにレイティア、アリオスとカレン陛下も皆“至って”いるぞ?」

「………本当に?」


 その瞬間、場内がざわつく。「嘘だろ……」「バケモンだらけじゃねえか……」と、そんな声がそこかしこから聞こえてくる。


「さて……、まだいけるな?」

「ええ、無論です」


 周りの声を気にすることなく、二人はまた戦いに神経をフル投入する。緊張がマックスになったと感じた、その瞬間、二人は同時に動き出す。

 突き。袈裟。上段斬り。足払いからの斬り下ろしのコンボ。様々な攻防が飛び交う。二人は光の如き速さで剣戟を繰り広げる。僕はなんとか目で追う。


「青龍刀、相伝・参ノ刃、“青嵐せいらん”ッ!!」


 クライアの放った極致は、青い龍を彷彿とさせる嵐となってラグナに襲いかかる。だが、ラグナ殿は落ち着いた様子で、同じように極致を放つ。


「絶龍刀、極致其のよん、“絶龍”ッ!」

「何っ……!?」


 ラグナ殿が刀を袈裟懸けに振るったその瞬間、眼前に迫っていた嵐が霧散する。まるで、荒れ狂う龍を絶つが如く。クライアはその眼を驚愕に染めるが、しかし止まらない。上級者同士での戦いになると、一瞬の硬直が命取りとなる。ここまでのクラスになると尚更だ。それを解っているからか、彼は攻撃の手を緩めない。だがここで、防戦的だったラグナ殿が攻撃に転じる。


「さて。このままでもいいが……今度は私の番だ。“神醒しんせい鮮雷せんらい”ッ!!」

「ッッ!?」


 ラグナ殿が色鮮やかな雷と化す。赤、紫、緑、白。その他様々な色の雷が交錯する。四方八方から次々と迫るとてつもなく速い攻撃に、今度はクライアが防戦一方になる。ラグナ殿の渾身の中段斬りに、ついにクライアは体勢を崩して下がる。だが、そこでラグナ殿は追撃をしない。恐らく、次の一撃で決まる。


「ッ……凄まじい力ですね……。ですが………ここで決めます――青龍刀、相伝・奥義ノ刃ッ!!」


 クライアは右脚を引き、半身になって左肩を前にして構える。


「ああ!受けて立つ!!絶龍刀、極致其のろくれい】――」


 対するラグナ殿はニヤリと笑い、その刀を天に掲げる。すると、その右眼が、刀が、漆黒の炎のようなモノに包まれる。


「“ 蒼天龍翔そうてんりゅうしょう”ッッッ!!!!」


 クライアは目にも止まらぬ速さでラグナ殿へと駆ける。その様子は、さながら天を翔ける龍のように。しかし、ラグナ殿はまだ動かない。口元に笑みを象ったまま眼を閉じ、漆黒に染まる刀を自身の頭上に構え、ひたすらにその時を待つ。まだだ。まだ動かない。彼の龍の如き刀が彼女の首を目掛けて振るわれる、その瞬間。


「――“轟龍絶天ごうりゅうぜつてん滅刻メッコク”ッ!!」


 龍と龍を彷彿とさせる黒雷がぶつかる。ズガアアアアァァァーーーンッッッ!!!!と、轟音とともに衝撃波がこちらまで届き、僕達はたまらず顔を腕で覆う。

 ……やがて、衝撃波が止み、煙が晴れ、僕達の眼に映った光景は――。



 お互いの技が交錯した瞬間と同じ姿勢のまま。

 刀が砕かれ、その首にもう一方の刀が添えられ。

 お互いに微動だにしない、二人の姿があった。









「そこまでッッ!!勝者――ラグナッ!!」

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