表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/157

第12話―蒼天に凪ぐ龍

 翌日。

 朝食後、僕達は部屋でくつろいでいた。そこにコンコンコン、と扉を叩く音がした。


「どうぞ」

「失礼致します。皆様、シュタリウス陛下がお呼びですので、執務室へご案内致します」

「……?解りました」


 僕達は一度顔を見合わせる。シュタリウス王が呼んでいる。一体何だろうか。

 給仕の人について行くと、そこにはカレン様達もいた。

 僕達を見るなり、シュタリウス王は椅子から立ち上がる。


「おう。全員揃ったな」

「どうしたのじゃ、急に呼び出して」

「まあまあ、そう焦んなって。今から説明するからよ」


 そう言ってシュタリウス王は、僕達の前に出る。


「さて。今からお前さんらを、訓練場に案内しようと思う。そん時に何人か模擬戦することになるだろうから、まあ軽く準備しといてくれや」

「また急ですね……」


 僕の呟きに、シュタリウス王はニカッと笑いながら答える。


「剣を交えることによって見えてくるモンもあるもんさ。じゃ、行くぞ」


 シュタリウス王に続いて僕達も執務室を後にする。それから少し歩き、連れられてきたのは外にある、かなり大きい、天井のない建物だった。


「着いたぜ。――おうお前ら、やってるか!」


 彼の声が聞こえた瞬間、訓練中の者達が皆一斉に跪く。


「「「応ッッ!!!!」」」

「……鍛えられてますね」

「ガッハッハ、そうだろう?俺の直属の配下、まあつまり近衛騎士団だ」


 先ほど跪く時のあの動き、そしてその素早さ。かなり鍛えていることが見て取れる。その数千といる団員見ながら、シュタリウス王が名前を呼ぶ。


「リーデン、クライア、いるか?」

「「は、ここに」」

「……ふむ」

「ほう?」

「……なるほどな」


 シュタリウス王が呼ぶと、その瞬間に彼の前に現れる。その様子や身体の状態、魔力などを観察すると、中々手強い相手だと言うことが判る。現に、姉さんやラグナ殿も少し驚いているようだ。


「こいつらは俺の両腕、左からリーデンとクライアだ。せっかくだし、この二人と……そうだな、〝紫〟の弟、それとそこの珍しい服を着てる嬢ちゃん、一丁仕合ってみてくんねえか?」

「いいのか!では私はクライアと言ったか、彼との模擬戦を希望する!」


 さすがラグナ殿、食いつきが早い。彼女の言葉に、シュタリウス王がピクリと右眉を持ち上げる。


「ほう?まさか〝剣聖〟を選ぶか。これは面白そうな戦いになりそうだなあ、クライア?」


 くつくつと喉を鳴らして笑いながら、シュタリウス王は右の青年に問いかける。


「ええ。中々手強そうですし、ね」

「よーしじゃあお前ら、外周に寄れ!いいモンが見れるぞ!」


 パンパン、と手を叩きながら中央を空けるよう促すと、皆瞬時に散らばって行く。その様子に少し感嘆しつつ、空いた真ん中へと歩く二人を見つめる。


「じゃ、立会人は俺が務めよう。ルールは真剣で、寸止めか降参で決着だ。異議のある者はいるか?」

「問題ない!」「問題ありません」


 二人の返答を確認し、シュタリウス王は頷くと、右手を二人の間に下ろす。


「うっし、じゃ――両者、抜剣!!」

「目醒めろ、我が内に眠りし龍よ!狂い咲け、今こそ覚醒の刻ッ!絶龍刀ぜつりゅうとう、ミコトサキッ!!」


 周りの騎士から、おお……という感嘆が漏れる。やはり、誰が見ても一目で解る業物故だろう。対するクライアは。


「吼えろ、青龍。我を守護せし蒼光は、時に猛り、時に凪ぐ。それは美しく、それは荒々しく。聖なる海に響く咆哮は、汝に裁きを下さん!轟け――青龍刀せいりゅうとう、ソウテンノナギッ!!」


 クライアによって召喚された得物は、息を呑むほどに美しかった。青く輝く刀身。ゆるやかに入った反り。刃に映る刃文。ラグナ殿と太刀と違うのは、その刀身が、切っ先に向かって幅広になっている。全体的に華奢で美しい絶龍刀。幅広の刀身で荒々しくも見える青龍刀。剛と柔が対照的に可視化したような仕合いに、開始前だが既に僕は見入っていた。


「……ほう?貴殿も刀使いか。これは面白い」


 クライアの刀を見たラグナ殿が、ニヤリと笑う。


「お前ら既に楽しんでるな?まあいいや。じゃあ――始めッ!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ