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第11話―“聖界”の晩餐

 僕は与えられた部屋へ戻り、ベッドに腰掛ける。


「あ!おかえりー!」

「おかえり、どうだった?」

「簡潔にまとめると、新たな敵の登場、ってところですね」


 僕はため息を吐きながら言うと、アリオスはやはりか、といった表情になる。


「だろうね。あの感じ、〝半人半魔〟かな?」

「……もう魔力探知まで覚えたのですか」

「暇だからねぇ。暇つぶしに魔力を薄く伸ばすように広げていったら何かできてさ」


 アリオスの言葉に驚く。まだ何も教えてないのに、自力で魔力探知を完成させるとは。

 彼のそのセンスに驚きつつも、予想の答えを返す。


「……なるほど。それと先ほどの質問ですが、答えはYESです」

「だろうね。魔力がどっちつかずで微妙だったからさ。察するに、〝魔女狩り〟だろ?」

「そこまで解っているとは。元同業者ならば知っているのでは?」


 僕の言葉に、アリオスは苦虫を噛み潰したような顔で答える。


「……あまり過去の話はしたくないんだけどなぁ。まあ、それは置いといて。その質問だけど、答えはNOだ」


 先ほどの僕の鸚鵡返しのように答えるアリオス。僕とジャック殿は当然首を傾げる。


「何でさ?同じ〝魔女狩りの一族〟なんでしょ?」

「大前提さ、俺たち各々のすることにあんまり干渉してないんだよね。復讐するなら勝手にどうぞ、って感じ。〝魔女狩りの一族〟とは言うけど、勝手に名乗ってるだけだから誰がどんな過去を持ってるのかとかも知らない。だから〝一族〟なんて名ばかりで、自己中の集まりなんだよ」


 アリオスは僕達から眼を逸らし、首を傾げながら説明する。


「では、〝一族〟と言いながらも、誰が仲間なのか解ってないのですか?」

「そういうことだね。まあ知ってるやつも数人いないこともないけど……俺の知ってる中に〝半人半魔〟はいなかったと思う」

「なるほど……」


 その時、僕達の部屋のドアが叩かれる。


「どうぞ」


 僕が返事をすると、一人の給仕が入ってくる。


「失礼いたします。間もなく夕食ですので、食卓へご案内いたします」

「ありがとうございます」

「“聖界”でのご飯……!楽しみ!!」

「では、こちらへどうぞ」


 僕達は立ち、彼女の後を歩く。ジャック殿は相当楽しみなのか、歩くというよりもスキップに近い。

 少し歩くと、給仕が立ち止まり、目の前の扉を開く。そこには既にカレン様達やシュタリウス王、ウルも食卓についていた。


「おう、さっきはすまんかったな。お詫びじゃないが、せっかくの飯だ、しっかり楽しんでってくれ」

「ありがとうございます。お言葉に甘えて」


 シュタリウス王の言葉に礼を言い、六角形のテーブルの、ちょうどシュタリウス王と向かい合う位置に座る。

 僕達が席に着くと、それが合図とばかりに次々と料理が運ばれてくる。サラダ、スープ、ステーキ。他にも色とりどりな料理が食卓に並ぶ。


「美味しそー!」「うっまそうだなー!」


 ジャック殿と姉さんが同時に唸る。その様子に、シュタリウス王が豪快に笑う。


「ガッハッハ、そうだろ?全部一級品モンだ、味は保証するぜ?じゃ、食うか」

「「「いただきます!!!」」」


 皆で食事の挨拶を済ますと、姉さんとジャック殿は我慢できないとばかりに食らいついていく。


「美味しーい!!」「うんめぇー!!」

「ガッハッハ!」


 二人の食べっぷりに、シュタリウス王は嬉しそうに笑う。僕もサラダから手をつける。


「……美味しい」


 何と言うか、味が上品なのだ。素材自体がとても甘い。野菜にはどうしても独特なエグ味や苦味といったものがあるのだが、それらがしっかりと処理されており、そういった悪い味が一切しない。そして、素材本来の味がしっかりと活かされているドレッシング。野菜との相性が抜群で、野菜との相乗効果を生み出している。

 次にステーキを口に運ぶ。


「ッッ!!」


 ――柔らかい!


 柔らかすぎるのだ。歯が必要無く、口に入れた瞬間、まるでバターのようにスゥッ……と溶けていく。僕は一度食べるのを止め、シュタリウス王に質問をする。


「このステーキ……、とても柔らかい。普段作る時も柔らかくなるように工夫はしていますが、ここまでのクオリティはできたことがない。一体、何をしたらここまで柔らかくなるのです?」

「お、俺に訊かれてもなあ……。……説明してくれ」


 シュタリウス王が促すと、後ろに立っていた給仕が説明を始める。


「酵素の力ですね。今日はタマネギをすり下ろし、肉と一緒に袋に入れ、【空間魔法】:〚真空エンプティ〛にて真空状態を作り出し、数時間漬け込みました」

「なるほど、勉強になります。それにこのソースのコクは……ワインですか?」

「そのとおりです。お酒は熱することで特有のエグ味のようなモノが、アルコールと一緒に飛んでいきます。他にも色々な料理にも使えますよ」

「ワインにそんな使い道があったとは……。もっと料理の幅が広がりそうですね」

「そりゃ楽しみだな!これからどんな料理が出てくるのか……“魔界むこう”に帰ってからの新たな楽しみができた!!」

「ボク達にも振る舞ってよねー!」

「そうじゃぞ、ヴァイよ。せっかなのじゃ、楽しみにしておるぞ」

「解ってますよ、大丈夫ですから」


 僕は苦笑しながら言う。

 その後も色々な料理に舌鼓を打ち、堪能した後、またそれぞれの部屋へ戻る。外の景色が見えるお風呂――露天風呂と言っていた――も味わい、ベッドに身を預けると、旅の疲れがグッと来たのか、数分もしないうちに眠りにつくのだった。

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